組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「運送業における緊急事態の想定」について。

環境マネジメントシステムの国際規格(ISO14001)では、次のような要求事項があります。

 

(規格より引用)

8.2 緊急事態への準備及び対応

組織は、6.1.1 で特定した潜在的な緊急事態への準備及び対応のために必要なプロセスを確立し、実施し、維持しなければならない。(以下省略)

(引用、ここまで)

 

この要求事項に規定されている「6.1.1」とは「リスク及び機会への取り組み(一般)」を指しています。

6.1.1では、次のような要求事項があります。

 

(規格より引用)

(省略)

a) 4.1 に規定する課題

b) 4.2 に規定する要求事項

c) 環境マネジメントシステムの適用範囲

次の事項のために取り組む必要がある、環境側面、順守義務、並びに4.1 及び4.2 で特定したその他の課題及び要求事項に関連する、リスク及び機会を決定しなければならない。

(以下省略)

(引用ここまで)

 

4.1とは「組織及びその状況の理解」、4.2とは「利害関係者のニーズ及び期待の理解」を指します。

つまり、組織は緊急事態について、

「潜在的な緊急事態への準備及び対応のために必要なプロセス」

を「確立、実施、維持」が求められていますので、その際には、

・組織を取り巻く環境(内部、外部の課題を含めて)

・利害関係者のニーズ及び期待

・環境マネジメントシステムの適用範囲

を考慮して、「緊急事態を想定し、想定した緊急事態に対応する手順を確立してください」ということになります。

 

私の経験では、一般的に、運送会社では、緊急事態として、

・事務所など常設サイトにおける火災

・事務所など常設サイトにおける油漏れ

は想定されていますが、運送プロセスについての緊急事態は、「車両事故」や「車両事故に伴う車両火災」程度しか想定していないことが多いです。

 

「これだけしか想定しなくてもいいの?」と思っても、「リスク及び機会の特定」や「潜在的な緊急事態の想定」は、組織の判断に委ねられています。

したがって「潜在的な緊急事態を想定する仕組み」が組織にあれば、なかなか第三者が「○○の緊急事態が想定されていないのはおかしい」と指摘するのは、難しく、せいぜい、「貴社の業務内容を考慮すれば、○○の緊急事態を想定することを検討してもよいのではないですか?」と観察事項や改善の機会として示唆するしかありません。

 

話題は少し逸れますが、2021年6月24日付けの茨城新聞が、「トレーラーから食用油が流出し、国道6号線が10時間通行止めになったニュース」を報じていました。

記事によれば、

◆24日、かすみがうら市内の国道6号でトレーラーから、食用油が流出した

◆トレーラーには、菜種油が積載されていた

◆国道6号と国道355号の一部区間が、最大約10時間にわたり通行止めになった

◆ワゴン車がスリップして土留めに衝突し数人が軽傷を負った事故があり関連を調査中

・・・とのことです。

 

記事からの想像ですが、トレーラーは、ひたちなか港か大洗港に到着した船便のコンテナを積載(ヘッド車に連結)し、荷主の要求で食品工場に運搬中だったのでしょう。

この食用油が流出したトレーラーの運送会社としては、コンテナを受け取る際に、「コンテナに異常が発生していないか」を外観で確認する程度のことしかできません。

要は、「コンテナは封印されており、荷受先まで開けられない」のです。

したがって、運送会社は、「緊急事態の想定」として、今回のような「食用油の流出」を想定した手順を構築しておくことが必要です。

また、荷受先(仮に食品工場とします)も、こうしたリスクを想定して、対応手順を決めておくことが大事ですが、そこまで想定している食品工場は、殆どないでしょうね。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ756号より)
 

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