組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「審査報告書における組織固有の状況」について。

認証機関の認定基準であるJIS Q 17021-1:2015「適合性評価-マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項-第1 部:要求事項」には、次のような規定があります。

 

(以下、規格より引用)

JIS Q 17021-1:2015 9.4.8 審査報告書

9.4.8.2審査チームリーダーは、報告書が作成されることを確実にし、その内容に責任をもたなければならない。審査報告書は、情報に基づく認証の決定ができるように、正確、簡潔、かつ、明確な審査の記録となるものでなければならず、次の事項を含めるか、又は参照しなければならない。(以下略)

(引用ここまで)

 

マネジメントシステム規格(例:ISO9001、14001、45001、22000など)の規定されている内容の変遷については、割愛しますが、現在の規格では、

『事業とマネジメントシステムとの「統合」及び「成果」の要求』

がされています。

つまり、

・事業目的達成のためのマネジメントシステムの活用が求められている

・事業実態とマネジメントシステムを統合し、システム運用の成果があることを重視

しています。

 

また、組織の事業活動全般全てにマネジメントシステム規格が適用され、認証範囲となっている場合は、気にすることはないですが、認証範囲が限定されている場合は、認証機関は、例えば、

・組織を取り巻く状況の確認

・組織全般の内部・外部の課題、利害関係者のニーズ期待の確認

・組織のリスク及び機会の確認

をすることで認証範囲が適切であると判断できるわけです。

 

要は、昔の、例えば、ISO9001であれば、品質保証システム時代の「ISOマネジメント認証」は、「組織が申請してきた範囲」が規格に適合していればOKでした。

しかし、それでは、「単純に規格要求事項に適合した文書や記録を作るだけ」、つまりマネジメントシステムが形骸化し、「事業目的達成のためのマネジメントシステム」になっていないことが横行してしまったのです。

 

そこで、現在のマネジメントシステム規格では、組織を取り巻く状況等をしっかり確認し、「認証範囲が適切か」、そして、その認証範囲について、「事業実態とシステム運用が乖離していないか」、といったことを認証機関は、審査で確認する必要があるのです。

 

ただ、どの程度のボリュームでそれを審査報告書等(※認証機関によっては、組織カルテや引継書等)に記載するべきか、はISO17021-1:2015には規定されていないので、その判断は、認証機関に委ねられます。

しかし、個人的には、審査報告書の総合所見や組織の状況について、汎用的な内容、例えば、

・組織の内部外部の課題が明確にされていた

・利害関係者の要求事項が適切に設定されていた

・リスク及び機会を考慮した事業計画が作成されていた

といった「規格要求のオウム返し的記載」は、「認証機関としての責務を果たしていない」のではないかと思います。

 

話題は少し逸れますが、品質や環境マネジメントの審査員で、かつ、食品安全マネジメントシステムの審査員は、特に「品質」が、現在は、ほぼ「経営マネジメントシステム規格」とも言えるものなので、経営者へのインタビューでは、経営面に関する質問をする習慣が身についています。

しかし、「食品安全マネジメントシステム専門の審査員」の方は、審査の出発点が「認証範囲に関する組織の状況」で、内部外部の課題は、あくまでも印象ですが、さらっと確認して、食品安全の技術上の検証に入っていく感じです。

 

「もうちょっと、組織固有の状況を審査報告書に記載してもいいのでは・・・」と話しても、なかなかピンと来ないようなので、「例えば、ISO 22000: 2018− 食品安全マネジメントシステム実用的ガイドに書いてあるようなことを確認すべきでは?」と常々感じています。

もちろん、このガイド自体は、審査基準ではないことは重々承知していますが、認証機関の審査員が審査報告書を記述する上での参考になると思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ755号より)
 

【好評発売中!】
事例で学ぶコンプライアンスⅠ』

(トータルEメディア出版)

事例で学ぶコンプライアンス Ⅰ | TEM出版書店 (total-e-media.jp)

事例で学ぶコンプライアンス | 有賀正彦 |本 | 通販 | Amazon

 

『できるビジネスマンのマネジメント本』

(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001