2021年9月20日付の読売新聞(オンライン)が、

「コンサル元社長、顧問先50社に所得隠し指南…「節税手伝う」と計20億円」

という見出しの記事を報じていました。

 

記事によれば(※筆者が一部編集)

◆経営コンサルティング会社が2020年までの7年間に約20億円の所得隠しをしていた

◆この会社は「トーマスコンサルティング」

◆東京都や千葉県の建築関係の中小企業を中心に経営の改善指導を行っていた

◆手口は、70歳代の元社長の男性が、顧問先に「節税の手伝いができる」と持ちかけていた

◆主に、年度の収支がマイナスで、法人税の納税額がゼロになる赤字法人を使って行われた

◆利益の大半を架空の外注費名目などで赤字法人に送金するよう指示

◆赤字法人は手数料として数%~十数%を抜いた上で、大半の金を元社長に現金でバック

◆元社長は一部を謝礼として受け取り、残りの現金を送金元の顧問先に戻していた

◆東京国税局は、法人所得を不当に圧縮したとして顧問先の所得隠しを認定した

◆国税は、元社長が受け取った謝礼についてはトーマス社の所得に当たるとし認定した

◆トーマス社に謝礼分を含めて約2億円の所得隠しを指摘した

ということだそうです。

 

記事に書かれていること以上のことは、わかりませんが、法律的に所得隠しの時効が「7年」なので、「トーマスコンサルティングが所得隠しを指南したのは、7年間で総額20億円」となっていますが、実際には、もっと長い期間に亘って、指南していたのかもしれません。

 

他の報道では、トーマスコンサルティングは、1989年1月に設立され、個人の相続対策や企業の経営改善指導を行い、グループの「トーマス税理士法人」と連携して、会計業務を通じたコンサルティングを手がけていたそうです。

また、トーマスコンサルティングは、経営不振に陥っていた千葉県松戸市内のホテルの経営立て直しや、2007年12月に松戸市内にホテルを設立し、ホテル経営に参入していたそうです。

 

想像ですが、会計業務の顧問先に対して、本来は「会計業務を通じた経営コンサルティング」が、本来の会社の目的だったはずですが、いつしか、利益を出している会社には「節税という名目で所得圧縮(隠し)」を持ちかけ、赤字の会社には、「架空業務の発注先として協力してくれれば、手数料を支払うよ」と持ちかけ、元社長は、この仕組みの「斡旋手数料」を手にしていたのでしょう。

 

単純計算ですが、所得隠しが、7年間で約20億円ですから、1年あたりにすると、約3億円弱。

7年間で、この所得隠しに関わった会社は50社ということですが、仮に、1年あたり、利益が出ていた会社が10社あったとして、平均1社3000万円。

赤字会社と元社長に併せて、20%が手数料として引かれると、「2400万円」が「真水」として利益の出た会社に「還流」されるので、利益が出て、元社長が持ちかけたこの「所得隠しスキーム」に乗った会社が、同族企業だとしたら「おいしい話」だと思います。

これを真っ当に利益として申告すれば、仮に、3割法人税として支払ったとして、2100万円は、会社に「内部留保」されますが、帳簿上の正当なお金なので、経営陣が、自由に使える現金ではありません。

 

この還流された「真水」は、「帳簿には出せないお金」です。

社員に、「闇ボーナス」として還元しているなら、ともかく、「経営陣」や「一部の経営層」でこの「真水」を分け合って私腹を肥やしていたなら、「架空の外注費」が帳簿上発生しているので、会社に損害を与えたことになり、社員から経営陣に対する信頼関係もだだ下がりになるでしょう。

 

それにしても、このスキームに関わった関係者は、これから大変です。

赤字会社は、会社名が公表されなければ、取引先から責められることはなく、「手数料」として「経費の掛からない売上」があったので、会社的には、「道義的にはよくないことだが、経営的には悪くない話」で終わりかもしれません。

しかし、利益が出ていた会社は、「所得隠し」で、重加算税や追徴課税がある上に、先にも述べたように社員からの信頼が落ちるでしょう。

また、名前が世間に出てしまえば、今後の取引にも影響が出るかもしれません。

 

コンサルティング会社の関連法人である「トーマス税理士法人」の税理士は、「税理士廃業届」を提出しており、そのため、税理士法違反などの調査には、応じなくてよいそうです。

しかし、おそらく、多くの顧問先を抱えており、これらの顧問税理士業務はできないので、トータル的には、大損ではないかと思います。

 

そう考えると、コンサルティング会社の元社長が、「一番いい思いをした」のかもしれません。

元社長が7年間で得た謝礼金「約2億円」は、コンサルティング会社の所得隠しとして東京国税局には認定されたそうですが、この会社は、2021年2月に、千葉地裁で破産手続きの開始決定を受けています。

しかし、元社長は、東京国税局の税務調査が開始された年の2020年11月に亡くなったそうです。

元々ご病気で、死期が迫っていたのであれば、表現は悪いですが、「顧問先にやりたい放題の指南をして、顧問先からは感謝され、自分自身も楽しく過ごせ、逮捕される前に亡くなった」のであれば、ある意味、本人にとっては幸せな人生だったのかもしれません。
 

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