千葉県佐倉市と八街市の市境に大量の産業廃棄物が放置されている社会問題について、「噂の東京マガジン」(BS-TBS)が、特集していました。
この話題は、各メディアやワイドショーが取り上げ、「産業廃棄物が大量放置されている場所」(佐倉市上別所地区)が、私の実家から比較的近い場所なので、関心を持っていました。
ご存じない方もいると思うので、簡単に、経緯を振り返っておきます。
(以下、各メディアからの情報を筆者が編集)
◆千葉県廃棄物指導課によると、2020年6月頃から佐倉市上別所地区に産廃が搬入された
◆産廃保管場所は、約4千平方メートルの農地
◆搬入された廃棄物の多くは、廃プラスチックや建築廃材などが入ったフレコンバッグ
◆2020年11月頃までの約5ヶ月間で搬入された量は、約1万1300立方メートル
◆高さは約4メートルに達し、道路沿い約80メートルにわたっている
◆業者の経営者は、「燃料として販売目的で購入した廃プラを一時保管している」と説明
◆しかし、販売する様子はなく、堆積していったため、県は2020年12月に撤去を勧告
◆2021年1月に廃棄物処理法に基づき、保管上限まで減らすように措置命令を出した
◆期限とした3月3日までに経営者は従わず、3月30日に佐倉署に告発し、経営者は逮捕
・・・
という状況です。
「噂の東京マガジン」の「噂の現場」では、
・なぜ、業者が告発され、社長が逮捕されたのにそのままになっているか
・住民の声
・同様の事例が全国に広がる可能性
などについて、取材していました。
私は、以前は、年間10数社、最近でも、年に3~5社の産業廃棄物処理業者に仕事で訪問する機会があるので、いわゆる「不法投棄、放置、保管問題」について、産業廃棄物の収集運搬業者や処分業者の経営者と話をします。
この問題について、結論から言えば、
・ゴミ(違法に保管された産業廃棄物)は、そのまま放置される可能性が高い
でしょう。
また、注意点としては、
・休耕地などを「保管場所として使いたいので売却して欲しい」という話には慎重になるべき
・工場など排出事業者は、産廃委託業者が、実績のある業者か調べて契約すべき
・「廃プラを有価物として引き取る」(処分費ゼロ)と言われても、定期的に最終確認すべき
といったことがポイントです。
一般的には、「なぜ、ゴミは撤去されないんだろう」と考えますが、基本的に、問題が発生した時点で、多くの場合、業者に撤去費用はすでに残っていません。
したがって、業者が逮捕されても、撤去能力がありません。
また、廃プラは、以前は中国などが有価物として引き取っていました。
しかし、現在では、中国が輸入禁止措置をとっているので、有価として集めた廃プラは行き場がなくなっています。まともな産廃処理業者であれば、有価物として集めた廃プラを自らが「排出事業者」となって、最終処分場に埋め立て処分するなどして、適正に処理しています。
産業廃棄物処理法では、排出事業者が、産業廃棄物として、ゴミを業者に委託する場合は、許可業者であること、委託契約書を交わすこと、マニフェストで適切に処理がされたことなどを確認する仕組みです。
また、多くの自治体の条例では、定期的に処分場を確認することが定められています。
けれども、「有価物」として引き取りしてもらった場合は、マニフェストが発生しません。
つまり、排出者は、法律的には、「廃プラはゴミではない(有価物)」ので、引き取りしてもらった業者が、適切なリサイクルをしているかどうかは、確認する義務がありません。
私見ですが、「有価物」の場合も、どのように処理されているか、排出者は、確認する仕組みが必要だと思います。
ただ、中国が、廃プラの輸入を禁止したのは2017年ということもあり、今回のケースは、
・排出事業者:産廃業者は、排出事業者に他社より安い処分費用を提示して受注している
・地域住民等:産廃業者は、地域住民には、有価物の保管場所と偽りの説明をしている
・千葉県:産廃は、固形の廃プラで、喫緊に有害ではないとして、行政代執行はしていない
ということが現状でしょう。
したがって、状況としては、このまま放置され、迷惑を被るのは地域住民だけ、ということになって、問題は徐々に風化していくように思います。
それにしても、佐倉市の大量に放置されている廃棄物問題は、逮捕された業者をさらに仕切っている「黒幕」がいるようです。
要は、産業廃棄物処理法違反(不法投棄)の刑事罰は、「5年以下の懲役若しくは1,000万円の罰金またはこの併科」なので、逮捕までに排出者から得た処分費(売上は数億円)と「刑事罰」を天秤に掛ければ、「やり得」というそろばん勘定でしょう。
「これでいいのか?」と思いますが、これが現状なんでしょうね。
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