組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「審査工数の削減(設計責任)」について。
◆審査工数を削減できる“設計責任”とは何か◆
ISOマネジメントシステム認証機関に要求される認定基準として、「IAF 基準文書」があります。
品質、環境、労働安全衛生に関する審査工数の基準文書として「IAF MD5:2019」があります。(以下、MD5を記載します)
このMD5では、例えば、
◆すべてのマネジメントシステム審査工数を増やす場合
・要員が複数の言語で会話をする組織
・従業員数に対して、非常に広いサイト など
◆QMSのみマネジメントシステム審査工数を増やす場合
・高リスクと見なされる活動(附属書A、表QMS 2参照)
・外部委託した機能又はプロセス など
◆EMSのみマネジメントシステム審査工数を増やす場合
・当該産業分野の典型的な場所と比べて受け止める環境の感度がより高い
・利害関係者の見解
・審査工数の増加を必要とする間接的側面 など
◆OH&SMSのみマネジメントシステム審査工数を増やす場合
・利害関係者の見解。
・事業セクターで平均よりも高い事故及び職業病の発生率
・組織のサイトに一般市民が存在する場合(例えば、病院、学校、空港など) など
◆すべてのマネジメントシステム審査工数を減らす場合
・依頼者が設計に対する責任をもたない(QMSのみ)
・要員数に対して、非常に小さいサイト(例えば、事務所棟のみ)
・マネジメントシステムの成熟度 など
・・・・・
といったことが規定されています。
今回、話題として取り上げるものは、
「マネジメントシステム審査工数を減らす場合」の「依頼者が設計に対する責任をもたない」ケースです。
このケースの代表例は、製造業で言えば、「OEM製品(相手先ブランドによる製造)の委託工場」の場合です。
例えば、自動車や食品、薬品製造などは、ブランド元組織が、協力工場に製造委託しているケースが多いですが、この場合、製造される製品の設計責任は、ブランド元にあり、製造委託先は「ブランド元の設計に基づき製造する責任」のみで、「設計責任」はありません。
したがって、仮に、設計に起因する製品不良があった場合、製造委託された工場には、責任が及びません。
このケースの場合、マネジメントシステム的には、「設計・開発の適用は不可能」、その理由は「製品設計の責任はブランド元組織が有しており、当社は設計責任を有していないため設計・開発の適用不可能は妥当である」というような評価を認証機関はするでしょう。
ただし、ややこしいのは、いわゆる「プロセス設計」をどのように取り扱うか、です。
例えば、薬品の委託製造の場合、「スケールアップ」というプロセスがあります。
これは、簡単に言えば、「研究部門(ブランド元、発注組織)で開発したビーカーレベルの製品をスケールアップして工場での大量生産に結びつけるための技術開発」です。
例えば、「薬品を容器に充填する」というプロセスでも、バルク生産した製品の粘度や容器の形状により、充填量や生産速度をコントロールしなければ、発注者が要求する製品は安定供給できません。
つまり、こうした生産技術は、製造委託工場の「コア技術」で、「まさに(工程)設計」です。
私の感覚では、多くの組織において、「当社のコア技術は、製品設計も重要であるが、工程設計が顧客に選ばれる源泉であり、工程設計プロセスをマネジメントすることは極めて重要」と考えている組織が多いです。
つまり、「設計・開発」を工程設計に適用しているケースが多いのです。
ただ、「できるだけ認証費用を抑えたい組織」はもちろん、認証機関も、他の認証機関との価格競争に勝つために「工程設計は設計としない」という運用をしているケースが案外、あるように感じます。
つまり、MD5で規定されている「設計に責任を持たない場合」の「設計」は、あくまでも「製品設計である」という理屈です。
私見ですが、少なくとも、製造業における組織の競争力の源泉のひとつである「コア技術」が「工程設計」である場合、工程設計を「設計・開発」プロセスでマネジメントするか、あるいは「製造管理」プロセスでマネジメントするかは、組織の任意でいいと思いますが、「マネジメントシステム審査工数削減の要素」とするのは、望ましくないと思います。
認証機関によっては「設計責任がない」組織のQMSのマネジメントシステム審査工数を通常の工数から20%程度引く認証機関がありますが、このケースは、「製品設計に基づき、殆ど工程に工夫を加えること無く製造するのみ」の単純なケースです。
したがって、あくまでも私見ですが、上記のように「正真正銘の工程設計がある場合」は、MD5の趣旨からしても、マネジメントシステム審査工数の削減理由には、殆どならないと考えるべきではないかと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ744号より)
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