組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「審査報告書について」について。
◆要求事項を満たそうとすると、審査報告書は画一的になる◆
ISO/IEC 17021-1:2015(適合性評価-マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項-第1部→以下、ISO17021-1と略して表記します)によれば、
“審査報告書”は、情報に基づく認証の決定ができるように、正確、簡潔、かつ、明確な審査の記録となるものでなければならず・・・“
と規定されています。
言わずもがなですが、認証機関の審査チームが組織を審査すると、認証機関による判定委員会などのレビューを経て組織の認証の可否が決定されます。
その判断材料は「審査報告書」になるので、ISO17021-1では、「審査報告書は、明確な審査の記録となるもの」と要求しているのでしょう。
具体的には、ISO17021-1では、「次の事項を含めるか、又は参照しなければならない」と規定されています。
(以下、ISO17021-1より引用)
◆9.4.8.2項
a) 認証機関の特定
b) 依頼者の名称、住所及び代表者
c) 審査の種類(例えば,初回審査,サーベイランス審査,再認証審査,特別審査など)
d) 審査基準
e) 審査目的
f) 審査範囲、特に審査した組織単位若しくは機能単位又はプロセスの特定,及びその審査の時間
g) 審査計画からの逸脱及びその理由
h) 審査プログラムに影響を与える重大な課題
i) 審査チームリーダー,審査チームメンバー及び同行者がいればその人の特定
j) 審査活動(現地又は現地以外,常設又は一時的サイト)を実施した日付及び場所
k) 審査の種類に求められる事項と一致する審査所見、審査証拠の参照及び審査結論
l) 最後の審査を行ってから、依頼者のマネジメントシステムに影響を与える重大な変更があった場合、その変更
m) 未解決として特定した全ての問題
n) 該当する場合、複合審査、合同審査又は統合審査であるかどうか。
o) 審査が入手可能な情報からのサンプリングに基づいたものであることを示す免責事項
p) 審査チームからの推薦
q) 該当する場合,審査される依頼者が、認証文書及びマークの使用を有効に管理しているかどうか。
r) 該当する場合、以前に特定された不適合に対して取られた是正処置の有効性の検証
◆9.4.8.3項
審査報告書には、次の事項に関する記述も含めなければならない。
a) 証拠の要約と併せて、マネジメントシステムの適合性及び有効性に関する記述で、次に関係する事項。
・該当する要求事項及び期待される結果を満たす、マネジメントシステムの能力
・内部監査及びマネジメントレビューのプロセス
b) 認証範囲の適切さに関する結論
c) 審査目的を満たしたことの確認
(引用ここまで)
規格の引用が長くなってしまいましたが、何を言いたいかと言えば、審査報告書に盛り込む内容項目は、数多くあります。
仮に、認証機関が、審査報告書の様式を決めずに、認証機関の担当審査チームに審査報告書をフリーフォーマット(様式自由)で作成させたら、ISO17021-1の要求事項を満たすことは不可能でしょう。
したがって、認証機関は、審査報告書をテンプレート化しています。
テンプレート化のメリットは、認証機関の判定委員会などで、組織の適合可否を判断する際に、ISO17021-1で要求されている事項を審査チームが、しっかりと記述しているか検証しやすい点です。
しかし、その一方、デメリットとしてテンプレート化は、「審査報告書が画一的になりやすい」という点があります。
組織名称、審査種類、審査基準、審査日程、審査チーム(審査員名)などは、誰が審査を担当しても記載する内容に優劣が出るわけではないので、記載漏れ防止のためにも、テンプレート化はよいでしょう。
しかし、例えば、
・マネジメントシステムに重大な変更があった場合の変更内容
・以前に特定された不適合に対して取られた是正処置の有効性の検証
・マネジメントシステムの能力
・認証範囲の適切さに関する結論
・審査目的を満たしたことの確認
といったところを極論、「Yes/No」形式の記載方法にするとISO17021-1の要求事項は満たしていても無味乾燥な報告書になって、味も素っ気もありません。
「例えば」で挙げた部分は、何十行も詳述な文章の記載を規格にも「簡潔な記録」とあるので求めていません。
しかし、いわゆる「レ点方式」での記載は、組織が要求事項を具体的にどのように満たしているかがわからないし、ひいては審査報告書の価値を低下させ、認証の信頼性低下に繋がるのではないかと思います。
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