2021年7月21日付けの日刊自動車新聞が、

「トヨタモビリティ東京、レクサス高輪で不正車検 2年間で565台」

という見出しの記事を報じていました。

 

記事によれば、

◆トヨタは20日、直営販社のトヨタモビリティ東京で不正車検が発覚したと発表した

◆レクサス高輪で行った過去2年間の車検全体の3分の1(565台)で不正があった

◆不正は、基準値に満たすよう数値の書き換えや一部の検査を行わなかった

◆トヨタの系列販売店では、3月にネッツトヨタ愛知で車検不正が発生したばかり

ということです。

 

オンラインで開かれた記者会見で、トヨタモビリティ東京の関島社長は、不正が起こった背景について

・増加する仕事量に対して人員と設備が追い付いていなかった

・慢性的に時間内に作業を終わらせることを最優先にしてきた

ことの2点を挙げ、再発防止策について、

・人員の増強やサービス機器の更新を進める

・作業に必要な追加時間などをユーザーにしっかり説明する

・車検など店舗業務を見直していく

といったことを実施するそうです。

 

他のメディアの記事によれば、「そもそもトヨタが販売店で行っている短時間車検が生まれた背景」として、

・豊田章男社長が業務改善のメンバーだったときがきっかけ

・豊田社長が、販売店のサービス現場を見て改善すべき点を追求した

・コンセプトは「もっと楽に、もっと早くお客様に車検サービスを提供できないか」

・その結果、ある条件が整った場合に、「60分」で車検が実施できた

というのが、というのが始まりだったそうです。

 

その後、この「標準作業」について、トヨタの国内営業部や国内サービスの改善部隊が全国の販売店に、その思いとオペレーションを伝えていったそうです。

しかし、「標準時間」だけが結果として残ってしまったそうです。

 

もともと、レクサス高輪では「車検にかかる時間を通常2時間いただいていた」そうです。

しかし、3月に不正が発覚したネッツトヨタ愛知では「45分車検」が標準となっていたように、おそらく、「改善チームが作り上げた標準」は、「ある条件が揃ったときの最短時間の標準時間」だったのでしょう。

標準時間を作る目的は、一般論として、

・整備士による作業のバラツキがなくなり、サービスが安定する

・属人的作業ノウハウがシステム化されて、業務の無駄が省ける

・結果として、顧客サービスが向上する

といったメリットがあります。

 

したがって、豊田社長が、現場視察で気づいた

「もっと楽に、もっと早くお預かりしたクルマをユーザーのもとにお戻ししたい」

という発想は、至極当然で、素晴らしいのです。

しかし、「標準時間=絶対に遵守」となってしまい「ある条件をはずれた場合のオペレーション」が確立していなかったんでしょう。

 

おそらく、お預かりしたクルマの状態を確認した際に、整備士からクルマの状態について連絡を受けたフロントが、「問題がなさそうなので45分です」、「追加作業が発生するので90分かかります」といった「クルマの状態に応じたユーザーへの説明」と「その追加時間発生に伴う車検スケジュール管理」をする必要があったのだと思います。

しかし、下流工程(末端作業)の整備士からすれば、

・改善部隊から指導された標準時間を守ることがプレッシャーになった

・販売店フロントから指示された車検スケジュールを実施することがストレスになった

のは明らかで、そのため「検査の一部省略」などの不正を実施したのでしょう。

 

経営管理目標として、自動車メーカーは、「生産台数(販売台数)」、販売会社は、「入庫台数」が必達目標になっていて、現場の実態を知らなさすぎたのではないかと思います。

やや感覚的な考察ですが、

・豊田社長のカリスマ性が強すぎて、「標準時間」だけが一人歩きした

・改善部隊に、現場のイレギュラーな状況をしっかり理解する人がいなかった

・豊田社長に、現場の実態を正確に伝えられる改善チームスタッフがいなかった

ことも、私は、この問題の原因ではないかと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ760号より)
 

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