組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「OHSMSの有効要員数」について。
OHSMS(ISO45001:労働安全衛生マネジメントシステム)の場合、審査工数の算出に必要な「有効要員数」のカウントの方法が、QMS(品質)やEMS(環境)と少し異なります。
具体的には、IAF文書(IAF MD5:2019)に、以下の規定があります。
(以下、MD5より引用)
1.9 有効要員数
有効要員数は、各シフトの要員を含む、認証範囲内に関係するすべての要員(常勤、臨時及び非常勤)からなる。認証範囲内に含まれる場合、これには非常傭の者(例:請負者)も含まなければならない。
OH&SMSについて、有効要員数には、組織の管理下又は影響下にあり、組織のOH&SMSパフォーマンスに影響を与え得る、労働又は労働に関わる活動を行う請負者及び下請負者の要員も含まなければならない。
(引用ここまで)
要は、OHSMSの場合、「請負者及び下請負者も要員数としてカウントしなさい」ということになります。
製造業(工場)において、請負者や下請負者(協力会社)が常駐しているケースはよくあるので、この場合は、カウントすべき有効要員数はわかりやすいです。
しかし、
・建設業における現場での下請負業者の要員数は、3次、4次下請けも入るのか?
・下請負業者の要員数は、全ての現場(期間は?)の総数となるのか?
という疑問が湧くでしょう。
まず、前者の「要員数には、3次、4次下請けも入るのか」ですが、これは、MD5の、
「組織の管理下又は影響下にあり、組織のOH&SMSパフォーマンスに影響を与え得る、労働又は労働に関わる活動を行う請負者/下請負者も含まなければならない」
という規定から、建設業の場合、元請の場合は、末端の下請けまで含める必要があるでしょう。
実際、少なくとも日本の場合、孫請けが現場で安全配慮義務違反が原因で引き起こした労働災害について、元請責任が問われます。
詳しい方がいたら教えて頂きたいのですが、認証組織の一時サイト(現場)が、1次下請や2次下請の場合、有効要員数は、どこまでカウントすべきか、法律的根拠を含めて、私は、よく分かりません。
感覚的には、1次下請だったら、2次下請以下末端の下請者まで有効要員数とすべきではないかと思います。
次に後者の「下請負業者の要員数は、全ての現場の総数となるのか」ですが、これは、その組織の各一時的サイト(建設現場)が「労働安全衛生リスクレベルの評価に基づいて、サイトサンプリングが許容されるか否か」をまず、検討した上で、「サンプリングできる」と判断した場合、「認証審査でサンプリングする一時的サイトに従事する要員数となる」と考えてよいと思います。
労働安全衛生の場合、注意が必要なのは、品質や環境の場合は、建設現場に建設工事期間、常駐する現場代理人や主任技術者・管理技術者、つまり、認証組織の要員数は、1~数人で、工事自体は、下請が担っているケースが多いです。
しかし、労働安全衛生の場合は、基本的に、下請者全てが要員数となります。
また、品質、環境の場合の一時的サイトの審査は、2時間程度が平均的で、半日以上滞在するケースは多くないと思いますが、労働安全衛生の場合は、審査対象となる有効要員数が多いので、論理的には、品質や環境の一時サイトの審査より長い時間を掛ける必要があると考えられます。(一時的サイトの審査工数根拠を明確にしておく必要がある)
労働安全衛生単独の審査は、有効要員数や審査工数の算出が複雑ではないですが、品質、環境との統合審査になると、かなり複雑になるのは間違いないでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ752号より)
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