2021年7月5日付けの時事通信社が、

「日軽金、子会社のJIS認証取り消し 品質管理不備で処分3件目」

という見出し記事を報じていました。

 

記事によれば、(※筆者が記事を要約編集)

◆日本軽金属ホールディングスは子会社のJIS認証が取り消されたと発表した

◆取り消された子会社は、アルミニウム製品の製造を手掛ける日軽新潟

◆不適切な方法により試験が実施され、2007年のJIS認証取得後から続いていた

◆日本軽金属グループでは2021年5月以降、JIS認証の処分が続き、今回が3件目

◆今回問題となったのは、主に住宅建材向けアルミ製品

◆JIS規格と異なる試験を実施し、JISマークを表示する等の不正が4例あった

◆不適切行為の件数は合計で1万件を超え、年間250トン前後出荷していた

ということのようです。

 

日本軽金属ホールディングスのウェブサイト(以下、親会社)には、「取消しに至った経緯」がさらに詳細に掲載されており、それによれば、

・日軽新潟は、親会社よりJISマーク表示製品に対する総点検を指示された

・その結果、JISマークを表示してはならない製品の現品票にJISマークを表示していた

・押出棒製品の引張試験において、JISと異なる試験片を作製して実施し出荷していた

・しかも、JIS更新審査時のみJISの規定に沿った試験片で審査を受けていた

・これら一連の経緯を認証機関のJQAに報告した

・JQA による臨時認証維持審査において誤り等が指摘された

(例:引張試験の試験片の作製法。再試験における試験片採取のサンプル数が不足)

・これらの不適切行為により、JQAよりJIS認証の取消しを受けた

ということです。

 

つまり、日軽新潟は、

・JIS認証製品以外の製品(現品票)にJISマークを表示していた

・JIS基準と異なる試験片を作成して検査を実施していた

・JIS更新審査時のみ、JIS基準に則った検査を実施していた

ということです。

 

これは、非常に悪質です。

不正な試験片作成方法などが代々引き継がれ、現担当者には、「罪の意識は殆どなかった」ということであれば、同情の余地は少しあります。

しかし、「JIS基準と異なることを組織は知っていて更新審査時のみJIS基準通り実施する」とは、悪質すぎます。

認証審査は、「捜査型」ではありませんので、組織が提示した記録や回答によりJIS基準に従っているかどうかの判断を実施します。

つまり、「外部審査の時だけちゃんと検査を実施」していたなら、制度上、審査で不正を見つけることは極めて難しいでしょう。

 

それにしても、JQAも、臨時審査において、試験片の作成方法や再試験時のサンプル数の不備をよく検出したものだ、と思います。

逆にいえば、「疑いを持って本気で審査をすれば不正を見つけられる」と言うことでしょう。

 

先般、三菱電機長崎製作所での「35年以上にわたる検査不正」が発覚しました。

組織ぐるみの検査不正は、一般論として、

・JIS規格をはじめ、品質基準が過剰である

・商品が一般化した市場でコスト競争になると途上国に勝てないこと

が遠因にあります。

特に、組織の中で検査部門は、強い立場ではないので、競争により「コストや納期要求」が組織内で強くなれば、「ごまかすしかない」という判断に陥るのは、ある意味当然でしょう。

 

話は少し逸れますが、子どもの頃に社会科の授業で習ったように「工業資源のない日本」は、高付加価値な製品(ハイテク製品)を生み出し、産業転換を徐々に図るべきですが、その産業構造の転換が進んでいないのが、日本のこの30年ではないかと思います。

 

日本軽金属ホールディングスのJIS基準違反発覚が、2021年5月以降、3件発生していますが、こうなると、他の工場にも世間の疑惑の目は向けられるでしょう。

それにしても、今回の日軽新潟の不正は、日軽新潟における内部監査では見つかりそうにありません。

日本軽金属ホールディングス内の他の組織でJIS基準に詳しい人が内部監査員として監査をしなければ、あぶり出せない問題だったように思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ758号より)
 

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