2021年6月29日付けの北海道文化放送(UHB)が、
「札幌市が国に虚偽の報告…約1億3000万円返還へ "国民健康保険”事業で2018年度から」
という見出しのニュースを報じていました。
このUHBのニュースによれば、(※筆者が一部編集)
◆札幌市は、国の交付金の一部で事務処理が不適切だったとして、謝罪した
◆不適切な事務処理による交付金の返還額は、約1億3000万円
◆この交付金は、国民健康保険の財政基盤を強化する「保険者努力支援制度」の取り組み
◆対象者に適正な服薬を促す通知を送っていなかったが、国に虚偽の報告をしていた
◆2021年5月に実施状況などを確認したところ、2018年度と2019年度に虚偽報告があった
◆受け取った交付金は、2022年度の交付金から差し引かれる予定
◆札幌市によると、財源は検討中で、保険料には影響しないようにするとしている
とのことです。
このニュースからは、
・札幌市が国の交付金申請で虚偽の申請をした
・虚偽の申請により約1億3000万円不正に交付されていた
・返還分の財源は検討中
ということしかわからないので、そもそも「保険者努力支援制度」とは、何なのか、少し調べてみました。
《保険者努力支援制度》
(※厚生労働省保険局国民健康保険課のサイトより抜粋(※筆者が一部加筆))
国民健康保険者による医療費適正化への取組など保険者機能の強化を促す観点から、適正かつ客観的な指標に基づき、都道府県や市町村ごとに保険者としての取組状況や実績を点数化し、それに応じて国から交付金を交付することで、国民健康保険の財政基盤を強化する制度で、平成30年度(2018年度)から本格実施されている制度。
[保険者努力支援制度主な指標]
・特定健診受診率及び特定保健指導実施率
・糖尿病等の重症化予防の取組
・後発医薬品の使用促進
・保険税収納率の向上
・第三者求償事務の取組 など
ちなみに、厚労省の資料によれば、公費による財政支援は、
・毎年約3,400億円の財政支援を実施する
・そのうち保険者努力支援制度による支援は、700~800億円
だそうです。
なお、「約3,400億円」は、現在の国保の保険料総額(約3兆円)の1割を超える規模で、この公費による財政支援により「被保険者一人当たり、約1万円の財政改善効果」があるそうです。
UHBのニュースでは、
「対象者に適正な服薬を促す通知を送っていなかった」
ということなので、札幌市が厚労省に報告する評価指標項目のうち、おそらく、
・個人への分かりやすい情報提供
・重複・多剤投与者に対する取組
・後発医薬品の促進の取組
などの項目の数値が「虚偽だった」と言うことでしょう。
この「保険者努力支援制度」は、平成30年度(2018年度)から始まっているので、これまでに3年分の報告を札幌市はしているはずですが、そのうち2年は虚偽だったわけです。
厚労省へ報告する「評価指標項目」には、
・特定健診受診率
・特定保健指導実施率
・メタボリックシンドローム該当者及び予備軍の減少率
・がん検診受診率
・後発医薬品の使用割合
など「虚偽報告しづらい項目」と札幌市が虚偽報告した「○○の取組」など、「数字をでっち上げやすい項目」があります。
したがって、私の想像ですが、札幌市の担当者は、「保険者努力支援制度」の存在を知らず、交付金を得るために報告をまとめるにあたって、「通知は出していない」ということに気づいて、「数字をでっち上げ」たのでしょう。
仮に、「保険者努力支援制度で評価指標となっている各取組は知っていたが、対象者に通知を出していなかった」というのであれば、「担当部署(担当者)の怠慢」です。
それにしても、「札幌市の謝罪会見」は、市民への説明責任を果たしていません。
・なぜ、対象者に通知を出していなかったのか
・再発防止として、どんな取り組みを計画しているのか
・担当部署や担当者の処分はどうなったのか
・返還する交付金の財源に対する見通し
などについて、一切説明されていません。
先日、経済産業省の職員2人が、家賃支援給付金制度に関する詐欺容疑で逮捕されましたが、この札幌市の虚偽報告も同罪です。
札幌市民は、札幌市に対して「ちゃんと説明せよ」ともっと声を上げるべきでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ757号より)
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