2021年5月29日に各メディアが、福岡県の病院で、新型コロナウイルスのワクチンを保管ミスで廃棄することになったことを報じていました。
メディアの報道をまとめると、
◆国立病院機構大牟田病院で、医療従事者等に接種予定だった1044回分が無駄になった
◆保管ミスがあったワクチンは、米ファイザー社製で、常温で約3時間放置した
◆福岡県が他の自治体などと調整し、接種スケジュールへの影響はない
◆ファイザー社製ワクチンはマイナス75度近い超低温冷凍庫で保存する
◆常温で解凍する場合は2時間以内に希釈する必要がある
◆大牟田病院の冷凍庫には28日朝の時点で1182回分のワクチンがあった
◆医療従事者138人に接種するため冷凍庫から取り出した際、残りを戻し忘れた
◆ワクチンを2人で冷凍庫から取り出すが、当時は1人だった
◆再発防止のため、今後は作業工程のチェック表を作って二重チェックを徹底する
・・・
ということです。
こうした人為ミスは、仕事をしていれば、発生してしまうものなので、担当者を責めるわけには行きません。
また、新型コロナワクチンという日常的には取り扱いがない薬剤なので、取り扱い方法が確立していなかったことも原因でしょう。
しかし、マネジメントシステム的に、少し厳しめの視点で捉えれば、国立病院機構大牟田病院は、国立病院機構の病院ですから、地方医療機関の中核体として、常に変化する医療体制に対応できる仕組みが必要です。
今回のミスについて、病院側は「再発防止策として作業工程のチェック表作成と二重チェック体制」を挙げていますが、日頃から、類似業務はあったはずで、「なぜ、今回の新型コロナワクチンについて、1人で仕事をしたのか」が「真の原因」で、そこを再発防止しなければ、意味がありません。
ちなみに、医療機関の世界には、医療の質と安全に関する国際学会 (International Society for Quality in Health Care: ISQua) が実施する国際第三者評価 (International Accreditation Programme: IAP) に認定された「公益財団法人日本医療評価機構」が実施する「病院機能評価制度」があります。
認証病院検索で調べると、国立病院機構大牟田病院は、取得していないようです。
この認証を取得すれば、ミスの発生が防げる、と直結するものではありませんが、第三者のチェックを定期的に受診することは、組織のいい意味での緊張感にも繋がるので、取得を検討するのも一考かと思います。
それにしても、今回の「ワクチンの保管ミスの廃棄」ですが、新型コロナワクチンでなければ、全国ニュースになることもなく、病院自体も、担当者に「次回は、気をつけなさいよ」と始末書を書かせて、一件落着だったかもしれません。つまり、「属人的反省」で終わり、組織の仕組みとして改善されなかったかも知れないですね。
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