2021年5月25日付けの共同通信社が、

「ミツカン社長に中埜裕子氏 初の女性、創業家出身」

という見出し記事を掲載していました。

 

記事によれば、(※筆者が一部編集)

◆ミツカンHDは25日、社長に創業家一族の専務の裕子氏(45)が24日付で就いたと発表した

◆社長職は、前任の長谷川研治氏が2016年に退任以降、空席となっていた

◆裕子氏は、中埜和英会長(70)の長女で、和英氏は会長にとどまり、全体の指揮を執る

◆ミツカンHDで女性が社長になるのは初めて

◆ミツカンは原則として、代々中埜家からトップを輩出している

◆和英氏の次女聖子氏(42)も専務から副社長に昇格し、就任した

ということだそうです。

 

ミツカンといえば、週刊文春が2019年に報じた「お家騒動」が多くの人に衝撃を与えました。

週刊文春の報道当時のメモを頼りにうろ覚えですが、以下のような報道でした。

・中埜和英会長を中埜大輔氏が告発した

・中埜大輔氏は、次女、聖子氏の夫

・大輔氏は2013年、聖子氏と結婚し、中埜家に婿入りすると同時にミツカンに入社

・些細なことから会長夫妻に叱責され、結婚1年後、ミツカンを退職せよとの勧告を受けた

・2014年に、会長夫妻(義父母)との関係が改善しないまま大輔氏は、英国に居を移していた

・2014年に、大輔氏夫妻に男児が誕生し、男児は、会長の養子にさせられた

・その後、大輔氏は、大阪の物流センターへの異動が指示された

・大輔氏は、この配転命令を不当なものであるとして、名古屋地裁に仮処分を申し立てた

・2016年3月、名古屋地裁は、不当配転との主張を認め、異動を無効とする仮処分が下った

・大輔氏と中埜家・ミツカンとは4件の法的紛争を抱えている

 

真相は分かりませんし、名古屋地裁の判決云々は抜きにして、客観的に捉えれば、異動は、中埜会長の嫌がらせのように映ります。

また、中埜会長自身のこどもは、裕子氏と聖子氏の女子2人だったので、大輔氏と聖子氏の間に男子が生まれた途端、「大輔氏は用済み」だったのでしょう。

 

聖子氏が、この件について、どう考えているのか、分かりませんが、結婚には「打算」があります。

外野が勝手に想像すると、例えば、

・大輔氏は、婿に入ることで、将来、ミツカンの経営幹部になれるとの打算

・聖子氏は、婿入りしてくれる男性を探していたという打算

・聖子氏は、結婚して男子ができれば、我が子をミツカンの跡継ぎにできるとの打算

などが働いていたと思います。

 

大輔氏が「会長夫妻が求めるあるべき姿の婿」になるとしたら、

・会長夫妻が期待し、求めるまで、「角」(つの)を出さないおとなしい婿

・「仕事ができる男」を見せずに、ひたすら会長夫妻に従順な振る舞い

・ビジネス的な野心を隠し、ひたすら、会長の指示に従う社員になる

といった「覚悟」があったかどうかです。

 

大輔氏は、総合商社出身ですし、少なくとも本人は「優秀」と思っているし、プライドもあったと思うので、こうした「会長の期待する婿像」になるのは、そもそも難しく、会長夫妻の理想とズレが生じて、体よく立場を追われたのではないかと思います。

 

もちろん、男子の跡継ぎがいない同族企業の経営者の中には、「娘に優秀な婿を取らせて、経営を任せたい」という人もいると思いますが、ミツカンの和英会長は、「自分に従順で素直な婿」を求めていたのでしょう。

結果論ですし、お気の毒とは思いますが、大輔氏が聖子氏との結婚生活を波風立てずに過ごすためには、「会長にしたがっておとなしくしている」しか道はなかったのだと思います。

 

話題は、少し変わりますが、ミツカンは、グループ全体で、約2400億円規模の売上がある大企業ですが、非上場の同族経営なので、株式のほぼ全てを創業家が持っているでしょう。

したがって、前任社長のように、創業家以外の人間が、ワンポイント起用の社長就任はあっても、実質的な経営トップになることはありません。

 

同族企業に、一般採用の社員が入社して、やる気をそがれるのは「能力の無い創業家親族が自分より上の役職にいること」です。

ただ、相当の無能者でないかぎり、創業家の息子ぐらいまでは、一般社員の多くは、経営幹部になることを許容し、むしろ、「腰巾着になってお坊ちゃまをもり立てよう」としています。

問題は、創業家筋の人間がたくさん組織におり、能力以上の役職に就いている状況です。

賢い同族企業経営者は、このあたりのバランス感覚がよく、親族であっても、ある人数以上は入社させません。

入社させてしまうと、親族から「うちの子もそろそろ」と能力以上の役職に就かせることを期待(強要)され、本人も「なんで俺が平社員なの?」と不満が出るのがわかっているので、入社させないわけです。

 

しかし、「婿として期待される役割」や「トップにはなれないけどうまく立ち回れば部長や平取(平の取締役)になれる」と割り切れば、同族企業も居心地がいいのかもしれません。
 

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