2021年5月20日付けの読売新聞オンラインが、

「宝酒造、缶チューハイ9600万缶を自主回収…缶に鋭利な突起」

という見出しの記事を報じていました。

 

記事によれば、(※筆者が一部編集)

◆宝酒造は20日、缶チューハイ製品117品目を自主回収すると発表した

◆アルミ缶に鋭利な突起のある製品が見つかり、購入客1人が指を切る軽いけがをした

◆2020年6月以降に製造された計約9600万缶が対象で、多くは既に消費された

◆中身は飲んでも問題ない

◆缶の不具合は、小売店やけがをした購入客から連絡があった

◆宝酒造によれば、缶の製造設備の不具合が原因と判明した

◆回収するのは缶底の製造記号の末尾が「E」、賞味期限が21年5月~22年4月の製品

ということです。

 

読売新聞オンラインの記事では「缶チューハイ」としか報じられていませんでしたが、対象製品は、他のメディアの報道では、

・「タカラ焼酎ハイボールドライ500ミリリットル」

・「タカラ焼酎ハイボールレモン500ミリリットル」 など

のようです。

 

また、「製造記号E」が、どこで製造されたのか、製造所記号から検索すると、

「宝酒造 楠工場(三重県四日市市)」

で製造されたことが分かりました。

 

宝酒造のウェブサイトを確認すると、2021年5月20日付けで、

「製品の自主回収に関するお詫びとお知らせ」

と題したお知らせが掲載されていました。

https://www.takarashuzo.co.jp/pdf/TS21-014.pdf

 

このお知らせによると、缶上部の外周部分からアルミがはみ出す不具合の原因と再発防止は、以下の通りです。

 

(以下、ウェブサイトより引用)

3.原因

製造工程中に生じた変形した缶蓋の使用により、巻締めの際、缶胴の一部が突起状にはみだしたものであります。

4.再発防止策

・楠工場の該当装置の不具合(部品のゆるみ)を解消いたしました。

・他工場の同一装置について不具合がないことを確認いたしました。

・同様の不具合が発生しないように点検を強化いたします。

(引用ここまで)

 

このお知らせからは「なぜ製造工程中に缶蓋の変形が生じたのか」(原因)が不明ですが、製造装置の部品のゆがみを解消することで、アルミがはみ出す不具合が生じないのであれば、製造技術上の再発は、これで防げるのでしょう。

 

私見ですが、

・缶のアルミがはみ出す不具合の包装(梱包)プロセスでの不具合品の検出

・中身に影響がない製品の自主回収以外の対応措置

については、今後、検討が必要ではないかと思います。

 

食品安全マネジメントシステム的には、缶チューハイの場合、おそらく、CCP(重要管理点)やOPRP(オペレーションPRP)は、「加熱温度」、「殺菌時間」、「除菌フィルターの差圧確認」などではないかと想像します。

したがって、食品安全的には、例えば、「アルミ缶の不具合によって、飲料を飲む際に口や手を切る」といった食品ハザードは、想定していないのではないかと思います。

 

つまり、今回のようなアルミ缶の不具合は、品質として管理することしているのではないかと想像されるので、「出荷検査」(包装や梱包プロセス)のプロセスの改善が必要ではないかと思います。

 

また、宝酒造では、全社で環境マネジメントシステム(ISO14001)、各工場単位で、品質マネジメントシステム(ISO9001)、食品安全マネジメントシステム(FSSC22000)を取得しています。

(※認証機関は、一般財団法人日本ガス機器検査協会(JIA-QA Center))

つまり、

 ・FSSC22000→食品ハザードの見直しの検討

 ・ISO9001→缶(容器)の不具合を流出させないための監視方法の見直し

・ISO14001→SDGs的に、このような不具合について、自主回収が妥当か否かの検討

などを少なくとも実施するべきでしょう。

 

さらに、認証機関(JIA-QA Center)は、これまでの審査が適切に実施されていたか、組織の取った修正、原因究明、再発防止等の対応は適切だったのか、の検証が必要になります。

宝酒造と認証機関の今後の発表に注目したいと思います。
 

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