組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「環境影響評価の見直し」について。
知人の紹介で、環境マネジメントシステム規格(ISO14001)の認証を取得している組織の内部監査を実施する機会がありました。
その組織は、長年、ISOマネジメントシステムのシステム構築や運用管理、改善などを担当していた事務職の方が居たそうです。
しかし、その方が定年退職してから、経営者曰く、「マネジメントシステムの見直し、改善が進んでいない」、「内部監査が形式的になっている」と感じていたそうです。
そこで、「一度、外部の専門家に内部監査をしてもらった方がいい」という話になったようです。
私が内部監査を通じて指摘したことは、いろいろあるのですが、今回は、「環境側面」について触れておきたいと思います。
【組織の活動、製品・サービスが抽出されていない】
まず、はじめに気づいたのは、「あれ?環境側面の特定が不十分では?」という疑問でした。
というのも、その組織の本社ビルは、自社ビルで、本社には自社の管理部門のほか、事務系オフィス、飲食店、クリニック、不動産会社などがテナントとして入っていました。
つまり、その組織には「不動産収入」があるわけです。
また、敷地には駐車場があり、「社員用駐車場としてはスペースが広いな」と思って質問すると、近隣にある会社に駐車場として貸し出しているとのことでした。
この不動産賃貸による売り上げを「不動産賃貸業」(製品・サービス)とするか「不動産賃貸のプロセスが組織にある」(活動)とするかは、組織の考え方次第ですが、少なくとも、不動産に関わる「直接、間接含めた環境側面と関連法規制」は、環境側面として特定し、環境影響を評価する必要がある点を指摘しました。
また、組織のウェブサイトを確認すると、「現在、認証範囲として登録されている以外」の業務や製品・サービスに関する記載があります。
この点を組織に確認すると、「年間を通じて問い合わせが数件あり、実施するケースがある」というのです。
私が「環境側面としては特定されていないようですが?」とお聞きすると、「実績が少ないので含めていなかった」とのことです。
しかし、環境側面影響評価表における「環境影響評価」では「発生頻度」と「影響の大きさ」を評価する項目があるので、「実績の多寡は、環境側面として特定した後の話」になるのです。
このように、環境側面の特定は、その組織の主たる業務活動や製品は、抽出されているのですが、組織としてメインのビジネスでないと、環境側面の特定漏れが生じやすいので注意が必要です。
【環境側面にイレギュラーな要素が含まれていない】
環境側面評価表には「定常」、「非定常」、「緊急時」と3区分の場面が設定されて、環境側面が抽出されていました。
しかし、「非定常」をよく見ていくと「機器の定期点検」はあるのですが、「不良品発生の伴う手直し」、「苦情発生によるトラブル対応」、「工程の進捗遅れ」、「原材料切れ」、「不良在庫の発生」・・・といった、いわゆる「ミス・ロス」系の環境側面が特定されていませんでした。
また、印象としては、「環境配慮型設計」、「地域貢献活動(美化活動)」など、わずかに「業務活動」が環境側面として抽出されていますが、「物質的なインプットとアウトプットが明確になりやすい」(例:ガソリンの使用、電気の使用、廃棄物の発生等)ものが主体の環境側面となっていました。
この方式だと、環境影響評価を通じて、「組織として取り組むべき課題」、「社会的に重要性が高い課題」という意味での「環境に関連する課題」は、拾いきれないことが多いです。
私のこれまでの経験では、今回、内部監査を依頼された組織にかかわらず、このような環境側面の特定と評価をしている組織は多いです。
もちろん、結果として、「著しい環境側面」(管理が必要な業務活動)は同じになるかもしれませんが、「新たな経営課題を見つける」という視点において、環境側面の特定と評価について再考することは有意義だと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ716号より)
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