組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「認証審査における不適合検出」について。
ISOマネジメントシステム認証制度が始まった1990年頃は、認証審査における不適合件数は、結構、多かった気がします。
要求事項に、文書化や記録の作成・保管の要求が多かったので、当然かもしれません。
また、元々存在する会社の社内規則に加えて、新たに「ISO審査用の文書体系」を構築する企業が殆どでしたので、例えば、社内規則として存在する文書管理規則とISO導入後に作成した文書管理規定を読み比べると、文書の承認者など不整合箇所がたくさん検出できたのです。
当時の審査は、今思えば、組織の業務実態をインタビューしながら、要求事項への適合性を確認するというプロセスアプローチというよりは、文書、教育、設備、検査・・・といった条項ごとに文書化された手順書とISO要求事項の適合性、文書間の整合性を中心に確認する審査だったなぁ、と思います。
近年の認証審査では、仕事の流れをインタビューや実際の現場を確認しながら、重要な手順や監視・測定基準が手順書に盛り込まれているか確認するスタイルなので、ISOマネジメントシステムを導入して10年以上経過するような組織であれば、不適合指摘が、バンバン検出されるようなことは、あまりありません。
指摘として多いのは、機関によって名称は若干違いますが、不適合が今後懸念される「観察事項」やプロセスやパフォーマンスの改善につながる可能性がある「改善の機会」です。
ただ、認証機関によっては、所属審査員の審査件数当たりの不適合件数や観察事項の件数を監視していて、あまりにも不適合検出が少ない審査員は、審査が適切に実施されているのか(不適合検出能力がない、組織に忖度して検出しない等)、同行審査等でモニタリングしているようです。
認証審査における不適合指摘が少ない理由を思いつくまま挙げてみます。
1)組織のマネジメントシステムが確立し、自浄作用が働いているため不適合自体がない
(日頃、自ら改善し、内部監査等で指摘が出ている組織は問題がそもそも少ない)
2)不適合を検出したことで組織との折衝における摩擦を避けたい
(受審組織とのトラブルや審査終了時刻が遅くなることを懸念)
3)不適合指摘により受審組織からアンケートにネガティブな評価を書かれたくない
(認証機関から審査依頼が減る)
4)友人や知人が受審組織を指導(コンサル)しており、指摘することを躊躇する
(友人知人が業界の重鎮や元上司などであるほど忖度が働く)
5)不適合検出後の是正処置回答を評価するのが面倒
(受審組織の是正能力が低いと、やり取りが何度も往復する)
6)不適合検出後の是正回答の評価に関しての対価が安い
(または基本審査報酬に含まれないのでモチベーションが上がらない)
・・・・・
などが考えられます。
上記1)の場合は、組織のマネジメントシステムが有効に機能している状態なので、このような組織に対して認証審査を実施すれば、不適合指摘が殆どないのは当然です。
しかし、2)~6)のケースは、「審査員としての倫理や矜持」、「審査員報酬の仕組み」、「審査に対する公平性管理」の観点から問題点があるといえるでしょう。
特に、5)、6)は担当審査員が契約審査員であれば、「不適合検出が少ない理由」として「よくあり得るシチュエーション」です。
多くの認証機関の審査員報酬は、考慮されている部分が現地審査主体です。したがって、「不適合があった場合のイレギュラー」な是正処置については、組織に対する審査料や契約審査員への報酬が考慮されていない機関もあるので、組織は「指摘が出れば審査料が高くなるので反発しやすい」ですし、審査員も「業務報酬がもらえないのに余計な仕事を増やしたくない」と考えるのは、ある意味自然です。
精神論的に「それでも審査員か」、「審査員としてプライドや倫理はないのか」ということも簡単ですが、これは「仕組みの問題」ですし、「審査に関する公平性担保の脅威」に繋がる問題です。
本来、認証機関は、こうした問題を「利害や公平性に関する問題」として捉え、対処するべきと思いますが、感覚的には、「あまり考慮していない」ように思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ709号より)
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