2021年2月9日付の福井新聞が、
「小林化工に116日の業務停止命令 福井県、医薬品メーカーへの行政処分で過去最長 睡眠剤混入問題」
という見出し記事を報道していました。
小林化工が製造する爪水虫などの治療薬に睡眠導入剤成分が混入した問題では、現在(2月8日)までに、睡眠導入剤成分が混入した錠剤を服用した239人から意識障害などの健康被害の報告があり、また、70代女性と80代男性の2人が死亡しています。
記事によれば、
◆福井県は、医薬品医療機器法に基づき、116日間の業務停止処分と業務改善命令を出した
◆116日間の業務停止処分は、医薬品メーカーへの行政処分で過去最長
◆福井県によると、多数の関係法令違反が長年にわたって行われていたことが確認された
◆法令違反には、立入検査用の虚偽の記録「二重帳簿」の作成、品質試験結果のねつ造など
◆小林化工は1961年設立され、従業員は約800人、医薬品の売上高は370億円(2019年度)
だそうです。
小林化工の経口抗真菌剤イトラコナゾール錠50「MEEK」に関する「ルール違反」を挙げてみたいと思います。
・2人で行うべき原料取り出し作業を人員不足により1人で実施
・承認外手順書が存在
・国が承認していない原料のつぎ足し
・虚偽の記録作成
・一部試験の未実施と試験結果のねつ造 など
・不正は他の製品でも確認された
福井新聞の報道では、逸脱した製造や二重帳簿について、
・経営陣、製造管理者は黙認していた
・医薬品事業の責任者が社内の監督を適切に行わなかった
・品質管理部門が製造部門に対し適切な確認を行わなかった
・経営層がこれら法令違反を把握していながら改善策を講じなかった
そうなので、経営陣と製造管理者を一掃し、外部から医薬品製造経験のある経営のプロと薬剤師資格を有し、医薬品製造現場経験に長けている製造管理責任者を招聘しなければ、業務を再開してはならないと思います。
マネジメントシステムの世界では、認証審査で不適合指摘が検出されると、通常、90日以内の是正処置が要求されます。
軽微な不適合の場合は、たいていは、是正処置計画(不適合の封じ込めなど修正処置、原因の究明、原因に対する再発防止作の策定))まででOKで、是正処置確認は次回の認証審査です。
今回、小林化工に下された「116日の業務停止」は、これまでの医薬品メーカーに対する行政処分の最長だそうです。
しかし、私の感覚では「116日ではたいした組織改革を完了することはできないのではないか」と思います。(※業務改善命令が解かれるのがどのレベルまでの改善完了を指すのかわかりませんが)
仮に、経営陣を一掃し、製造管理責任者を外部招聘するにしても、適任者が、そうそう見つかるとは思えません。
また、小林化工の公表されているデータを見る限り、小林化工は、同族企業であり、経営陣を一掃したところで、会社のオーナーは、小林家です。
つまり、新たな経営陣は、小林家の息の掛かった人物が招聘されるとしたら、根本は、何も変わりません。
それにしても、不正のきっかけは、おそらく「人員不足による製造手順の勝手な変更」ですが、経営陣が知っていても、なぜ、長期に亘って「黙認」してきたのか、また、それをチェックし、組織内部からあぶり出す仕組み(役員会議、内部監査など)がなかったのか、疑問です。
このあたりに、メスを入れなければ、いつかまた問題は繰り返される組織風土なのだと思います。
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