2020年12月16日付けの読売オンラインが、

「MSJ量産化凍結の三菱航空機、来年度から従業員9割以上削減」

という見出しの記事を報道していました。

 

記事によれば、

◆三菱航空機が、2021年度から従業員を9割以上削減する

◆従来の2000人規模から200人以下に減らし、余剰人員は、三菱重工業内に配置転換

◆北米3か所の開発拠点は、米ワシントン州モーゼスレイク以外の2か所を閉鎖する

◆モーゼスレイクの飛行試験場も飛行試験は行わない

◆試験機4機の保守に必要な最小限の人員にとどめる

◆就航に必要になる国土交通省の「型式証明」の取得に必要な作業は継続する

◆量産化は早くても2024年度以降になりそう

◆国内外の航空会社から約300機を受注しているが、納入の見通しは立っていない

という状況のようです。

 

この記事だけをみれば、

・新型コロナで航空機需要が落ちているので、事業縮小は仕方がない

・新型コロナが落ち着くまで、最小限の人員で組織を維持する方策は賢明

・余剰人員を解雇せずにグループ内組織に配置転換するのは得策

・・・

と、「急激な社会的環境の変化に対応した最善策を経営陣は選択し決断した」ように映ります。

 

しかし、これまでの三菱航空機に関する報道と今回の報道から想像すると、

◆三菱重工は2020年10月末に、MSJ開発について「いったん立ち止まる」凍結を発表

◆過去3年間で3700億円を投じた開発費は、今後3年間で200億円まで圧縮

ということですから「凍結という事実上の撤退」ではないでしょうか。

 

一般論ですが、後発で旅客航空機開発に乗り出すと言うことは、「勝算」がなければ、ビジネスとしての成功はあり得ません。

つまり、例えば、

・航空機自体の性能

・燃費性能

・保守メンテナンス性能

・機体購入コストとランニングコスト

などが、既存メーカーより優位性がなければ、成功するはずがありません。

 

開発当初は、機体が軽く、燃費性能がよいという優位性があったように記憶していますが、試験飛行など負荷を加えていくうちに、技術的なトラブルが発生し、当初の開発スケジュールが大幅に遅れ、航空機の性能は標準的なものになってしまいました。

航空機にかかわらず、性能や価格が同レベルなら、実績がある、つまり、より安全安心な機体を顧客は求めるのは必然で、そうなると「型式承認がアメリカや国内で取得できても、ビジネスとしての勝算はない」ことになってしまいます。

 

「撤退」というとこれまで投じてきた開発費が全て無駄になり、投資家からの反発や経営陣の責任が問われることになるので、「凍結」という表現を使っているのではないかと思います。

月並みですが、旅客航空機開発に取組み時点で、「開発期間」、「開発費用」についての限界値、つまり「撤退基準」を決めておくべきだったのでしょう。

世界は違いますが、最近の話題で言えば、10数年ぶりに球界復帰を表明した新庄剛志選手が、「トライアウト後、1週間以内に連絡がなければ、球界復帰は諦める」と事前に表明したように、明確に撤退基準を決めておくことが重要なのです。

 

「ビジネス的な勝算」が崩れた時点で、多大な投資をしていたので、「ここで引くわけにはいかない」と資金を突っ込んでしまったのですが、もし、撤退せずに突き進むなら「大きく何かを変える必要があった」のでしょう。

シロウトが大三菱さまに申し上げるのは失礼ですが、突き詰めれば「技術力が不足していた」ので、エンジン、機体・・・など大幅に、「自前」を止めて、それでも、「他社メーカーより優位性が見込めるか」を検討することが必要だったのでしょう。

 

三菱的には、世間の人が「MSJのことを忘れる」日まで、細々と事業を継続し、しれっと店じまいする作戦なのかもしれないですね。

 

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