2020年11月9日付けの共同通信が、

「89歳元社員による詐取で謝罪 第一生命、顧客から19億円」

という見出しの記事を掲載していました。

 

記事によれば、

・第一生命保険は9日、元社員が約19億円をだまし取った経過報告書を発表した

・この89才の元社員は、山口県周南市の第一生命に勤務していた

・第一生命は、管理体制の不備を認めた上で、改めて謝罪した

・第一生命は、11月9日に、金融庁にも報告した

とのことです。

 

第一生命のウェブサイトを確認すると、「第一生命からのお知らせ」というコーナーに、

「弊社社員による不適切な金銭取扱事案が発生しました」

というPDFファイルの文書が掲載されていました。

https://www.dai-ichi-life.co.jp/information/pdf/kinyuhanzai.pdf

 

この掲載文によれば、(抜粋)

・お客さまならびに関係者の皆さまに深くお詫び申しあげます

・不正行為の再発防止等を講じ、コンプライアンスの強化に努める

・弊社社員がお客さまから現金や小切手をお預かりすることはない

・弊社社員が振り込み手続きを代行することはない

・弊社社員が通帳と印鑑をお預かりすることはない

・弊社社員の口座など第一生命名義以外の口座を振込先として案内することはない

といった「注意事項」が明記されています。

 

89才の元社員の大型詐欺事件をきっかけに、顧客に対して「注意喚起」をあらためて実施したという点では評価できますが、個人的には、金融庁にも提出した経過報告書に記載された「再発防止の概要」は、「顧客の資産を預かる金融サービス業」として、この場で公表するべきではないかと思います。

 

それにしても、この事件は、「なぜ?」が多いです。

メディアなどの報道では、

・元社員が不正搾取を始めたのは2002年ぐらいから

・2017年に社外から問い合わせがあり社内調査を実施した不正が確認できなかった

・2020年7月に第一生命が顧客と面談し不正を認定(約24人から約19億)した

ということです。

つまり「なぜ?」として、

・なぜ、こんなにも長い間、不正が発覚しなかったのか

・なぜ、2017年の社外からの問い合わせで問題が認定できなかったのか

・なぜ、内部監査は、機能しなかったのか

といった疑問が浮かびます。

 

一般的に想像すれば、

・89才で社員として勤務しているぐらいだから、伝説的社員だった

・伝説的社員であるゆえに、誰もが指導・監督をしづらかった

・顧客も元社員を信用しきっていたため、発覚しづらかった

といったことが、長期にわたって不正が発覚しなかった原因でしょう。

 

仮に、元社員(生保レディ)が「高金利の特別枠があり、これは、他人には内緒にしてください」と言われれば、第一生命から「受け取った保険金をうちの社員に預けるようなことはしていないですよね?」との問い合わせがあっても、生保レディとの関係を悪くしたくないとの思いから、「黙っておく」という思考が働いたのかもしれません。

 

おそらく、第一生命側としては「契約者が死亡して受取人への支払い済みの生命保険」については、「終わった仕事」で「内部監査の項目がない、あるいは、不正の有無を確認できる内部監査が実施できていなかった」のではないかと思います。

私見ですが、「内部監査の方法」を見直さない限り、この手の不正は、内部監査であぶり出すことは難しいと思います。

 

メディア情報だと、第一生命側は「被害額の3割程度を弁済」する方針だそうです。

私は「えっ?!たったの3割?」、「大企業として不誠実すぎる顧客対応」という感覚です。

顧客側にも「高金利をうたった口約束で、元社員の口座に振り込んでしまった」という落ち度はありますが、第一生命が不正を検出する能力がなく、長年にわたって放置してきた責任を考えれば、(感覚論ですが)少なくとも8~9割は弁済すべきではないかと思います。

それにしても、89才の元社員は、搾取した19億円を現在、どの程度、保有しているのでしょう。

100メートルの移動にもタクシーを使っていたと言うから、ぜいたくな生活を送っていたことは間違いありませんが、先物取引などに「投機」しないかぎり、使い切れる額ではありません。

人間はいずれ死ぬのですから、どんなに大金があっても墓場までは持って行けないのですが、元社員にとってこの「搾取欲」の源泉は何だったんだろう、と思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ725号より)

 

【好評発売中!】
『ISOの復権 マネジメントシステム認証制度が社会的価値を持つために必要なこと

(ブイツーソリューション刊)

http://www.v2-solution.com/booklist/978-4-434-26285-2.html

 

“できるビジネスマンのマネジメント本”(玄武書房)

https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/

 

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)

http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001