組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「アセットマネジメントの対象組織」について。
ISO認証に関する知識がある方でも、あまり馴染みがない規格としてISO55001(アセットマネジメントシステム)があります。
この規格の目的と意図は、
「アセットマネジメントシステムは、組織の資産(アセット)を、ライフサイクルを通じて、コスト、リスク、パフォーマンスのバランスを保ちながら、最大の可用性と収益性を確保するためのものです。ISO 55001は、組織の資産管理体制の構築、実施、維持、改善のための要求事項を規定しています。」
(JABウェブサイトより引用)
というものです。
アセットマネジメントシステムの認証対象となる組織については、JAB(公益財団法人日本適合性認定協会)が、マネジメントシステム認証機関向けに通達した文書の中で、以下のように規定されています。
(JABの通知文書(18-認シス第0207 号参照)から引用)
AMS 認証の対象となる組織については、次のいずれかとする。
a) アセットを所有する組織。
b) アセットを所有しない場合でも、アセットを所有する組織からアセットの維持管理の計
画策定及び維持管理業務を受託し、AMS の有効性及び成果に責任を有する組織。
アセットの維持管理の計画策定や、AMS 構築等における支援のみを提供している場合は、
当該アセットをAMS 認定下の認証の対象にはできない。
(引用ここまで)
上記a)アセットを所有する組織 の場合は、国や自治体が所有する公共施設、道路や上下水道、鉄道会社が所有する線路、鉄橋、トンネル、電力会社が所有する水力発電所、火力発電所など、私たち一般人が「アセットマネジメントの対象とすべき」アセットを所有する組織が目に浮かびます。
問題は、b)の「アセットを所有しない組織」です。
JABの規定の文面を分解すると、
「アセットを所有する組織から」
「アセットの維持管理の計画策定及び維持管理業務を受託」
「AMS の有効性及び成果に責任を有する組織」
が「ISO55001対象組織」となります。
そして、
「アセットの維持管理の計画策定」
「AMS 構築等における支援のみを提供」
の場合は、「当該アセットを認証の対象にはできない」となります。
公共行政に精通している人なら、常識的なことですが、建設コンサルタント業は、「自治体などが所有するアセットの維持管理計画や維持管理業務」を委託されています。
また、例えば、下水処理場を見学したことがある方ならわかると思いますが、多くの自治体で、下水道施設の実質的な管理は、民間の水処理会社が実施して、自治体の職員は、監督官など数人です。
ポイントは「AMS の有効性及び成果に責任を有する組織」です。
認証機関が、「この組織はアセットマネジメントが適用できるか否か」は、組織が受注した案件について、「契約書や注文書、議事録などで、顧客要求事項としてアセットマネジメントの有効性及び成果の責任を有する組織かどうか」を審査することです。
考え方としては、これでOKですが、実際問題として、アセット所有者である自治体や大規模商業施設などから元請として「アセットの維持管理計画や維持管理業務」を請け負う組織の場合は、アセット所有者の契約書を認証機関は確認できます。
しかし、「アセットの維持管理計画や維持管理業務の一部を請け負う1次下請け、2次下請け」の組織がアセットマネジメントシステムに取り組もうとすれば、認証機関は「直接の発注者の契約書や注文書」しか確認できません。
おそらく、そこには「暗黙の要求」はあっても「AMSの有効性及び成果の責任」に関する明確な文言はないでしょう。
JABの通知文書に従えば、「組織が受託した業務についてAMSの有効性及び成果の責任があること」が確認できなければ、ISO55001は適用できません。
要は、組織が実質的に、アセット(資産)やアセットマネジメント(資産価値を最大化する活動)のパフォーマンス向上につながる技術提案をしても、アセット所有者、または発注者の要求でなければ、適用できないのです。
それでも、組織が「マネジメントシステム認証を取得したい」とすれば、ISO9001を適用して、ISO55001のアセットマネジメント部分は、唯一「業務完了報告書等に記載される技術提案」程度の位置づけとなるのかもしれません。
日本の場合は、アセット所有者ではなく、こうしたサービスプロバイダーの、ISO55001取得ニーズが高いようです。
今後の動向を注目したいと思います。
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