組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「アセットマネジメントシステムの対象組織」について。

 

アセットマネジメントシステム(AMS:Asset Management System)の国際規格として

ISO55001:2014(JIS Q 55001:2017)があります。

この規格は、「組織がもつアセット」を、コストとリスクとパフォーマンスの3つのバランスを考慮し、そのライフサイクル期間で最大の資産価値を生み出すことを目的として制定されました。

 

アセットマネジメントシステムが誕生した経緯は、

・昨今、先進国において、社会インフラの老朽化とその維持管理が大きな課題である

・例として、道路、橋梁、空港、港湾、上下水道施設、学校、病院、プラントなど施設

・これらは、損傷や劣化が軽微な段階で適切な維持・補修を行うことで長寿命化できる

・AMSにより、ライフサイクルコストの低減も期待できる

といったことが背景にあります。

つまり逆にいえば、目先のコスト低減のため維持補修を実施しなければ、長期的に捉えれば、無駄な維持コストを社会的に負担することになりるのです。

 

組織を認証する認証機関の認定を実施しているJABでは、「認定分野のカテゴリ」を以下の「10分野」に分けています。

(※サブカテゴリの記載は省略します)

 

1:一次産業

2:製造業

3:鉱業、採石業(例;製錬・精錬、石油・ガスの掘削)

4:原子力産業

5:運輸(例:空港、航空機、線路、駅施設、列車、港湾施設、船舶、有料道路、バス)

6:一般公共インフラ(例:一般道、橋梁、トンネル、ダム、公演)

7:ユーティリティ(例:廃棄物処理、電力供給、ガス供給、上下水道)

8:施設(例:医療施設、学校施設、研究所、商業施設、倉庫、ホテル)

9:情報技術、金融、電気通信

10:防衛

 

また、JABでは、AMS 認証の対象となる組織について

a) アセットを所有する組織

b) アセットを所有しない場合でも、アセットを所有する組織からアセットの

維持管理の計画策定及び維持管理業務を受託し、AMS の有効性及び成果に

責任を有する組織

◆アセットの維持管理の計画策定や、AMS 構築等における支援のみを提供している

場合は、当該アセットをAMS 認定下の認証の対象にはできない

◆AMS 認証の対象となるアセットが無形の場合、「情報技術、金融、電気通信分野」以外

の分野については現時点で活動が定義されておらず、AMS 認定下で認証を行う

ことはできない

と規定しています。

 

つまり、国や自治体が自ら所有する研究所や医療施設、上下水道、一般道、鉄道会社が自ら所有する線路や駅施設、列車などをアセットマネジメントの対象としてAMSを構築し、認証を受けることは、なんの問題もありません。

(筆者注:おそらく、AMSが想定していた組織はこのようなケース)

問題は、上記b)のケースです。

日本の場合、例えば上水道は、自治体や公営企業がアセットの計画管理及び維持管理をほぼ自ら実施しています。

しかし、下水処理施設やゴミ処理プラントなどは、建設コンサルにアセットの維持管理計画策定や施設の維持管理そのものを委託しているケースが多いのです。

つまり、建設コンサルがAMSを構築すると「アセットを所有しない組織」となります。

 

自ら所有しないアセットの計画管理を請け負う建設コンサルの例で話を進めると、次のポイントは「AMSの対象となるか、否か」です。

この分かれ道は、「AMSの計画策定のみ」や「施設の維持管理のみ」の組織は「AMS対象外」、AMSの有効性及び成果に責任を有する組織」は「対象」となります。

 

けれども「AMSの有効性及び成果に責任を有する組織」とは「何をもってそう言えるのか」・・・、これは認証機関によって見解が分かれると思います。

例えば、発注者(自治体等)と建設コンサルの間で交わされる契約書の中に「AMSの有効性及び成果に責任」に関して「計画策定とその有効性について甲(組織)は乙(自治体)に報告する」と明記されていたとした場合、それを「責任とあるとするかどうか」は微妙です。

一般市民目線でいえば、インフラに対する自治体の責任を外部に転嫁することはおかしな話で、あくまでも「AMSの有効性や成果責任は自治体でしょ」と考えるのが普通でしょう。

 

また、自治体等と建設コンサルの案件ごとの契約によっては、「この案件はAMSの計画のみ」、「この案件は施設の維持管理のみ」という案件は当然あり、認証機関が、建設コンサルの審査を通じて、「この案件はAMS対象」、「この契約はAMSの対象にはならず単にQMS対象」と切り分けができた上で認証審査を実施できるかどうか、微妙な気がします。

 

ただ、あまり厳密なことを言い出すと、AMS認証が普及しない、という問題もあります。

ちなみに、JABのウェブサイトで「ISO55001(AMS)適合組織検索」をすると、現在、62組織が登録されています。

https://www.jab.or.jp/system/iso/search/

今後、このAMSが普及するかどうか、見守っていきたいと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ705号より)

 

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