一般的な営利組織の場合、経営戦略を立てるセオリーは、
戦略ステップ1 目標を立てる
戦略ステップ2 課題を挙げる(現状分析)
戦略ステップ3 解決策を考える
戦略ステップ4 リスクを管理する
戦略ステップ5 戦略を共有する
といった流れを踏むのが定石でしょう。
マネジメントシステム認証機関の認定、製品認証機関の認定、試験所・校正機関の認定など「適合性評価」の世界は、国内の場合、「公益財団法人日本適合性認定協会」(JAB)がその役割を担っています。
業界専門誌「月刊アイソス2020年9月号」によれば、この6月にJABの新専務理事として就任された森内譲氏(三井物産出身)は、以下のような経営戦略があるようです。
(※JABの代表理事は、理事長、専務理事がいるが、実質的な経営の舵取りは専務理事が行っている)
【現状分析】
・QMS、EMSの認証数は減少傾向
・特に建設業、金属、電気関係の認証数減少が大きい
・地域的には九州地区の減少幅が大きい
・JAB認定を辞退する機関が2019年は4機関あった
・2020年度も辞退を予定する機関がある
・JAB非認定の認証機関が認証する組織数が国内では多くなった
【成長分野(伸びしろがある分野)】
・農産物・水産物の輸出対応に関わる認証分野
(農水省が2030年に5兆円を目指すプロジェクトを立ち上げている)
・インフラ輸出(洋上風力発電)に関する製品認証の認定事業
【現状分析に基づく課題の解決策とリスク管理】
・海外認定機関の認定審査の請負
・ISO45001(労働安全衛生マネジメント)認定受注の拡大
・海外認定機関との協力
・IAFなど国際機関のスキーム作りに積極的に参加
・JABの内部統制強化
・・・といったことを今後の展開として考えているようです。
一般的な営利団体のビジネスでは、森内専務理事がアイソス誌に語った、上記に整理した各ポイントは「定石」です。
ただ、気になるのは「JABの目的」との関連です。
JABの定款には、法人の目的やその方策として、
「産業経済の健全な発展と公正な経済活動を支えるとともに、安心・安全な社会基盤構築に寄与する」
「目的を達成するための普及、啓発」
といったことが謳われています。
つまり、現状認識として
「QMS、EMSマネジメントシステム認証組織数は減少傾向」
「マネジメントシステム機関の認定辞退が増えている」
「九州地区の認証数が落ち込んでいる」
という分析は、全くその通りなのですが、その「原因」と「対策」は取らずに、つまり「現状を時代の流れ」と諦めて手をつけずに、「成長分野に経営資源を集中」というのは、「公益財団法人」の経営戦略として、少し違うように感じます。
私なりの分析では、
「QMS、EMS認証組織数の減少」
は、政府を含め、発注者に真の意味で活用されていないからです。
活用されていない理由の一つに、発注側が既存の利権を維持し、かつ、マネジメントシステム認証制度をよく知らない、ということがあります。
政府や自治体、あるいは、コンプライアンスが問われる証券市場へ「マネジメントシステム認証の制度の啓発と売り込み」もJABの重要な仕事だと私は考えます。
また、「認定辞退の増加」は、「JAB独自の認定基準の解釈が増えたから」です。
これは、前専務理事に大きな責任があり、民間企業であれば、多大な経営責任を負うべき問題です。
認定基準には、国際認定フォーラムが定めたIAF基準がありますが、例えば、UKAS(英国)、ANAB(米国)など他の認定機関との調整をせず、独自の運用を決めたため、「JAB認定審査で指摘されることがUKAS認定審査では指摘されない」といったことが生じ、「それなら、UKAS認定審査のみにしてJABは辞退しよう」となったわけです。
これも、対応策は、いくらでも取りようがあったと思います。
「九州地区の認証数減少」は、「おらが地区の認証機関がない」からです。
私の印象ですが、JABが認定するMS認証機関は、かつては50以上あり、九州に本社を置く認証機関もありました。
しかし、基本的に、JABは小規模認証機関を育てる活動はせず(まともな機関運営ができるはずがない、と決めつけている節もあった)、淘汰され、規模の大きい機関への経営統合を暗に推し進めていた(確証はありませんが)ように思います。
私の調査では、九州を拠点とするJAB非認定の認証機関が、認証組織数を堅調に伸ばしています。
こうした観点を理解し、踏まえた上で「経営戦略」なら、公益法人といっても「慈善事業」ではないので、収益向上は、専務理事に課せられた課題です。
しかし、本来JABがやるべきことをやらずして、「それは時代の流れだから」と手をつけないのは「公益財団法人」として決して正しい展開ではないと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ716号より)
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