2020年8月31日付の朝日新聞デジタルが、

「関電元会長、現経営陣に圧力か 電話で弁護士解任を要求」

というタイトルの記事を報じていました。

 

記事によれば、

・関電関係者によると、電話をかけたのは、森詳介氏(80)

・森氏は、関電の社長や会長を歴任し、2020年3月に相談役を退任した

・関電は東日本大震災後に赤字で電気料金を値上げし、役員報酬を減額した

・しかし、当時会長の森氏が後からカット分の穴埋めを決めていた

・電話の相手は、6月に関電の社外取締役、訴訟対応などを担う監査委員長に就いた友野宏氏(75)

・友野氏は新日鉄住金(現日本製鉄)の社長なども歴任

・2011~13年には、関西経済連合会で森氏が会長、友野氏が副会長を務めたこともある

・弁護士2人は、「取締役責任調査委員会」の委員を務め、森氏はその調査に応じていた

・「取締役責任調査委員会」は、関電が旧経営陣の法的責任を調べるために設置した

・森氏ら5人が後に地裁に提出した申立書では、

「利害関係のない社外の弁護士であると信頼して、不利な事実であろうが包み隠すことなく事情を説明した」と訴えている。

・調査委員会は6月8日、森氏ら5人について取締役としての義務を怠り損害を与えたと認定

・関電は委員のうち弁護士2人を訴訟代理人とし約19億円の損害賠償を求めて提訴した

・森氏は7月13日、友野氏に対し、関電が調査委員を務めた弁護士を訴訟代理人としたことを不当として「訴訟却下を申し入れる」と電話で通告

・弁護士2人について「弁護士会に懲戒を申し立てることを予定しており、そうなれば世間を騒がせることとなる。現段階で交代させる方がよい」と求めた(関電の主張)

・・・

ということだそうです。

 

要は、関電の元会長である森氏は、

・利害関係のない社外の弁護士だと信頼して調査委員会の聞き取りに応じた

・まさかその調査委員会の弁護士が、訴訟代理人となるとは思わなかった

・調査委員会の弁護士が、訴訟代理人として弁護士を担当するのはおかしい

という言い分なのでしょう。

 

森氏の肩を持つつもりはありませんが、この報道であきらかにされている事実を時系列で追うと、

・訴訟代理人の弁護士としてふさわしくないので、弁護士会に懲戒を申し立てた

・社外取締役の友野氏に、世間を騒がせるから訴訟代理人を交代させた方がよいと伝えた

ということですので、この記事のタイトルにある「関電元会長 現経営陣に圧力・・・」というのは、言い過ぎのような感じがします。

 

電話を掛けた相手が「現経営陣=森氏が関電会長時代の部下」であれば、「OBとして元部下に圧力をかけている」ととられかねないですが、友野氏は「社外取締役」であり、森氏は友野氏に、訴訟代理人の懲戒の申立てについて説明しただけで、一般的には「圧力ではない」と思います。

そもそも、森氏と友野氏には、関西経済同友会で同時期に役員を務めた経験はありますが、深い不快利害関係があるわけではありませんので、朝日新聞のこの記事は、少し「世論誘導」していると思います。

 

世間は、一斉に、森会長など当時の経営陣の責任を追及し、今回の「圧力報道」にも「とんでもないことだ」と騒いでいます。私も、「その通り」だとは思いますが、これまでの関電という組織を想像すれば、役員になれば、「高級の報酬が約束されたポスト」という発想なので、森氏に限らず、多かれ少なかれ、このような報酬の補填や事業戦略の失敗等で担当役員が経営責任を問われることになっても、役員報酬の減額という通常の民間会社なら当たり前のことが、されてこない組織だったと思います。したがって、この当時の役員に総額約19億円の損害賠償を求める訴訟は、感情的に「お気の毒」だな、と思います。

 

しかし、日本の大企業、とりわけ、関電のような公共色の強い企業の役員は「サラリーマンとしてのご褒美ポスト」・・・つまり「高額な報酬がもらえるポスト」という発想から、脱しないとダメでしょう。

要は、経営層(取締役)は、誤った経営判断をした場合は、責任を問われる存在であるということを認識する必要があるでしょう。そうでなければ、創業社長でも、オーナー一族でもないサラリーマン取締役が、従業員の何十倍もの報酬をもらえる道理はありません。

 

昔ほどではないですが、「役員ポスト=サラリーマンのご褒美ポスト」のイメージが日本では、まだまだあると思います。

役員(取締役)は、楽隠居できるご身分ではなく、常に現場の声に耳を傾け、経営リスクを察知して対処するべき存在なのです。

つまり、「役員=経営責任を負う人」として、成功すればビックマネーを受け取れ、誤った判断や失敗をすれば損害賠償責任を負う存在である、という認識・理解を日本人は高めていくことが必要だと思います。

 

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