組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、クライアントや知り合いの経営者からよく質問されるテーマについて、備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「MRのフォロー、是正処置の効果確認」について。
ISO規格要求事項として、マネジメントレビュー(MR)のインプット(考慮事項)として「前回までのマネジメントレビューの結果とった処置の状況」があるので、形式的には、「マネジメントレビュー記録」を拝見すると、多くの組織で、書式としては「前回MRの指摘事項のフォロー」という欄があります。
したがって、「審査的」には、マネジメントレビューで前回MRの指摘事項のフォロー状況が報告されているので「適合」という判断になります。
しかし、現実的には、前年度のMRの記録で記載された経営者の指示事項は、それ以降の経営会議や管理職会議の議事録に、それらについて審議されたことがあまり出てきません。
経営者に「MRで指示した後に、そのことについて議論していないんですか?」と問えば、「話題にしても担当部門から言い訳されているうちになんとなくうやむやになって、また次年度のMRで同じような指示をしている」と話してくれた方がいました。
確かに、経営者からすれば、例えば、教育制度など仕組みの見直しの指示をMRでしても、日常的には、売上や利益率、受注状況、製品歩留まり、苦情件数、原材料価格・・・といったことが関心ごとです。また、担当部門も「仕組みの改善」は、「やらなければならないが目の前の経営指標の達成」に関心が行き後回しになってしまうのでしょう。
次に、是正処置についてですが、ざっくりとポイントを上げれば、
・不適合の処置
・不適合の原因
・不適合の原因に対する再発防止策
・再発防止策の実施
・再発防止策の実施の有効性の確認
となります。
以下に、私が感じる「多くの事例で弱い部分」を挙げます。
・不適合の処置
→不適合に対する単純な「処置」は問題ない事例が多いです。
しかし、「不適合による影響の評価と影響に応じた処置の実施」は、十分でない事例が多い。
・不適合の原因
→原因が現象になっている事例がある。
また、原因についても深掘りが弱く、単に「認識不足」とされている事例も多い。
原因はひとつでないこともあり、複数挙げるべきと思われる事例もある。
・不適合の原因に対する再発防止策、再発防止策の実施
→水平展開が考慮されていない事例が多い。
・再発防止策の実施の有効性の確認
→どのような結果で有効性があると判断するか決められていない事例がある。
また、その予定時期が明確になっていない事例もある。
なお、「是正処置」に関して、少し変化球な話ですが、「是正処置を実施しても完全には解決しないことを組織が許容しているケース」があります。
例えば、ある製品不良について、原因はわかっていて、再発防止を施しても、設備特性上やその業務に従事するスタッフの能力上、1%程度の不適合発生は、やむを得ないと組織が判断しているケースです。
不適合をゼロにできれば、それにこしたことはないですが、極論ですが「ゼロにするためには、その仕事を実施しないことしか再発防止は図れない」という事例も必ずあります。
その場合は、経営判断になりますが、経済合理性を考慮して「1%程度の不適合発生は、やむを得ない(顧客も承知済み)ので、その範囲に収まっていれば是正処置の有効性はあった」として是正処置を完了するケースも現実的にはあるので、内部監査、外部監査を含めて監査を実施する人は注意が必要です。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ694号より)
【好評発売中!】
『ISOの復権 マネジメントシステム認証制度が社会的価値を持つために必要なこと』
(ブイツーソリューション刊)
http://www.v2-solution.com/booklist/978-4-434-26285-2.html
“できるビジネスマンのマネジメント本”(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001