組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「認証範囲としていない製品/サービス」について。
複数のISOマネジメントシステム規格の認証を取得している組織が増えたな、と思います。
よくあるケースは、品質マネジメントシステムと環境マネジメントシステムの2規格パターンです。
品質、環境に加えて、情報セキュリティ(ISO27001)または労働安全衛生(OHSMS)を加えた3規格パターンやその他にも、品質と食品安全、品質とアセットマネジメントといったパターンもあります。
少し話題は変わりますが、品質と環境のISOマネジメントシステム認証を取得している組織で、「認証範囲に含まれていない製品/サービス」を組織が業務として実施しているケースがあります。
例えば、よくあるケースですが、地方にある地場の建設会社(常設サイトは1ヶ所)では、
・土木工事
・建築工事
・産業廃棄物の収集運搬
・不動産賃貸
を業務として実施している会社があります。
この場合、産業廃棄物の収集運搬は、もともとは、建設工事現場における産業廃棄物の搬出・運搬のために許可を取得した会社があります。
例えば、解体工事現場で、元請けがいてその1次下請けで入っている場合、産業廃棄物の排出事業者は、元請けとなり、解体現場から発生した産業廃棄物を中間処理施設に移動させる必要があります。その際に、下請け業者が産業廃棄物の収集運搬の許可を持っていると、元請けは業務を発注しやすい、つまり下請け側からすれば、受注機会が増えるわけです。
この場合は、元請けとの契約業務の範囲は、解体工事と産廃の運搬業務です。
このような会社の場合、一般的には、ISO認証の範囲は、
・土木工事
・建築工事
を対象にしているケースが多いです。
ただ、会社の売上がある業務としては、その他に、不動産賃貸と許可として、産廃の収集運搬業を持っているので、稀に、産廃の収集運搬のみの業務を受注するケースがあります。
つまり、
・産業廃棄物の収集運搬
・不動産の賃貸
については、「組織の製品/サービスではあるが認証範囲に含めていない業務」なのです。
もちろん、ISO認証範囲は、組織が決められますので、産業廃棄物の収集運搬と不動産賃貸は認証範囲とする必要はありません。
しかし、認証機関としては、
・ISOマネジメントシステムを適用範囲している範囲は適切か
・ISO認証範囲はどこまでか
・ISO適用範囲や認証範囲を決定するにあたって利害関係者にニーズを考慮したか
・不動産賃貸や産廃の収集運搬を適用範囲から外しているならその理由は妥当か
・環境側面と環境影響の洗い出しに不動産賃貸や産廃の収集運搬は含まれているか
・組織に適用される法令等は不動産賃貸、産廃の収集運搬も含まれているか
・・・
といった点を確認する必要があります。
案外、認証審査で見落とされがちなのは、認証範囲としていない製品/サービスの環境側面等が特定されていないケースです。
常設サイトが1カ所であれば、共通的に利用している部分があり、環境影響を切り分けることはできないので、洗いだしは全ての業務活動になるはずです。
また、認証範囲は、認証費用などを考慮して組織が決められるとしても、マネジメントシステムの適用範囲としては、例えば、産廃の収集運搬の業務比率が案外高い、利害関係者(例:産廃の排出者)の期待を考慮すれば、単独で発生する産廃の収集運搬にマネジメントシステムを適用していなければ、ちょっと変でしょう。
このような観点については、案外、組織に確認しないで審査が進行しているケースが多いので、関係者は注意が必要になると思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ685号より)
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