俗称「アベノマスク」の調達先について、2020年4月27日に、厚生労働省が、妊婦や介護施設向けなどの約2千万枚(そのうち50万枚が妊婦用)について、これまでに公表された3社(興和、伊藤忠商事、マツオカコーポレーション)以外に、「横井定」、「ユースビオ」の2社が受注していたことを公表しました。
ご存知のように「アベノマスク」(布製の洗って何度も使用できるマスク)は、
・全国約5000世帯
・妊婦や介護施設
・小中高校及び特別支援学校
に配付されます。
私もそうですが、このニュースで気になる点は、
・なぜ、3社以外の2社(横井定、ユースビオ)の公表は遅れたのか
・横井定とユースビオはどのような会社か
ということでしょう。
記者会見で、菅官房長官は、2社の社名を公表した理由について、
「改めて確認を行ったところ、妊婦用に配布されていたことが確認できた」
と回答したそうです。
しかし、この回答は、人を食ったような回答で、答えになっていません。
国民が知りたいのは、2社(横井定とユースビオ)への発注金額がどのぐらいなのか不明ですが、総額466億円に及ぶ公共調達事業にも関わらず、発注先がなぜ、公表されなかったのか?です。
例えば、アベノマスクの調達先が、何百社もあり、調達各社への発注枚数の確認に時間がかかった、というような話であれば、なんとなく公表が遅れた理由もわかりますが、発注先は「5社」しかないのですから、21日に最初の3社が厚労省より公表されており、ここまで公表が遅れた理由として菅官房長官が回答した「改めて確認したところ・・・」というのは、理由として不自然です。
ふつうに考えれば、「横井定」と「ユースビオ」を「21日の時点では公表したくなかった何らかの理由」があったと考えるのが自然でしょう。
21日から27日までの政治日程を振り返ると、「衆議院静岡4区の補欠選挙」がありました。
結果は、すでにご承知の通り、自民党が擁立し、公明党が推薦した前静岡県議の深澤陽一氏(43)が、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党が推薦した無所属の田中賢氏(42)らを破り、初当選を果たしました。
これまで高い支持率をほこってきた自公政権に、新型コロナ対応で「逆風」が吹いていますので、政権与党の立場で言えば「静岡衆院補選」は「絶対に負けられない選挙」で会ったことは間違いありません。
仮に「静岡衆院補選が公表が遅れた理由のひとつ」だとすれば、「横井定」と「ユースビオ」ってどういう会社?という疑問がわきます。
「横井定」は、1950年に個人商店として創業し、1954年に「日本マスク」という商標で、一般向けマスクの販売を始めた名古屋市に所在するマスクの老舗メーカーです。
資本金は1000万円、本社の社員数は30名弱ですが、中国とフィリピンに工場を有しています。
ウェブサイトを確認すると、
「企画から製造まで、お客様のニーズをカタチにするモノづくり」
を標榜しており、マスク製造のOEM生産実績が豊富にあるようです。
https://www.nippon-mask.co.jp/original-mask/
「ユースビオ」は、2017年8月に福島市に設立された従業員5人の会社で、信用会社の情報では、「バイオマス発電向け木製ペレットの商社」だそうです。
最近(2020年?)、ベトナムの縫製技術のある工場でマスクの委託生産を始めたところ、この話を聞きつけた政府から大量生産の依頼が入ったそうです。
つまり、横井定は「海外生産拠点でマスクの生産に実績がある会社」、ユースビオは「ベトナム工場で委託生産を開始し始めたばかりの会社」ということになります。
ユースビオは、「1枚135円で350万枚受注した」とメディアに樋山茂社長が答えていることから、政府の発注金額は、約4.7億円です。
マスクの生産実績が実質的にない会社に、国が約5億円もの発注を行うこと自体が、常識的には「ありえない」話です。
以前のコラムで、私は、
「“アベノマスク”の政府調達基準は国民に明らかにされなければならない」
http://blog.logcom.jp/?day=20200425
「“アベノマスク”を調達した3社の説明責任」
http://blog.logcom.jp/?day=20200426
について書きました。
「なぜ、生産実績がないユースビオが“アベノマスク”を受注できたのだろう」
ということが最大の疑問です。
国は「実績主義」が通例ですから、不思議でなりません。
「ネット民」の「捜索情報」によると、樋山社長は、公明党の支持者だそうです。
公明党への気遣いによる発注、静岡衆院補選で自民が擁立した候補は、公明党推薦候補なので、「影響が出ないよう」、厚労省や官邸が「忖度」したのだとしたら、おかしなことなので、野党は、徹底追及して欲しいと思います。
なお、一部メディアの報道では、ユースビオの樋山社長は、「(自社委託生産分の納入マスクについて)汚れや異物混入など、不良品の報告はゼロ」と強調しているそうです。
マスクの仕様は、調達先統一でしょうから、「汚れなどの苦情が上がった施設や世帯へ配付されたマスクのトレーサビリティ」が取られていなければ、「不良品ゼロ」とは言い切れません。
国あるいは、配達を担当している日本郵便は、「製品のトレーサビリティ」をしっかり追跡できるように管理しているのでしょうか?
また、トレーサビリティができているのなら、各社の「不良件数、不良率」もわかるはずで、これも、国は公表してもらいたいものです。
それにしても、「なぜ、厚労省や調達先は、海外生産に頼った」のでしょうか?
現状、日本国内の縫製工場は、生産が休止しているラインが多いと聞きます。
元々マスクを製造している国内工場は、「生産が追い付かない」状況でしょうけれど、「本業は衣料品」という縫製工場には余裕があるはずで、「国内生産して欲しかったな」と思います。
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