組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「FSSC22000 Quality」について。
食品安全マネジメントシステム規格として著名な規格にFSSC22000があります。
https://www.fssc22000.com/?lang=en
FSSC22000は、「食品安全」を目的とした認証規格ですが、FSSC22000を取引の要件としている組織(例:コカ・コーラ)から、「食品安全」だけではなく「品質管理を認証範囲に含めて欲しい」という強い要望があるそうです。
そこで、FSSC22000のステークホルダー委員会(BoS)は2015年2月24日に「FSSC22000 Quality 」というFSSC 22000認証スキームにISO 9001を追加し、「FSSC 22000とISO 9001を組み合わせた認証を提供すること」を決定しています。
これが「FSSC22000 Quality」が誕生した背景です。
確かに、認証取得を取引と要件とする組織にとっては「食品が安全なのは当たり前で、品質も当然継続的に向上させるシステムがある組織と取引を望む」のは当然でしょう。
ただ、少しマニアックな話になりますが、「FSSC22000 Quality」を取得しても、「FSSC22000」と「ISO9001」を取得した表明はできないと思います。
実際、いくつかの認証機関に雑談レベルでお聞きすると、「日本国内の認証機関は、FSSC22000 Qualityの認証サービスは実施しないだろう」とおっしゃっていました。
その一番の理由は、
「FSSC22000 Qualityの認証プロセスを構築する手間がかかる」
ことです。
また、「FSSC22000 Quality」について、認定マークを使用する場合は、認定を取得する必要が出てきます。また、FSSC22000認定を持っている機関が、認定マーク無でFSSC22000 Qualityの認証サービスを開始(つまり認定マーク無の登録証を発行)すると、おそらく認定基準違反となるでしょう。
さらにいえば、「FSSC22000」と「ISO9001」をダブルで取得している組織が「FSSC22000 Quality」に流れると認証機関としての売上も減る、というジレンマも生じます。
その他に、FSSC22000(Ver.5)は、ISO22000:2018の要求事項があるので、当然のごとく「経営システムとマネジメントシステムの統合」が基本概念です。
しかし、FSSC22000は原則、「事業所単位の認証」なので、マネジメントシステム規格全体が「経営システムとマネジメントシステムの統合」という方向性があるのに、逆行している気がします。
例えば、事業所や工場単位でマネジメントシステムを構築すると、どうしても組織として大きな決定(経営事業戦略、販売戦略、経営資源の投入計画等)は、事業所や工場以外の組織(例:本社機能や経営企画部門)が担っているので、事業所単位の認証だと「与えられた資源の中でやるしかないです」ということになって、どうも、その事業所に関係する顧客や利害関係者のニーズを満たす仕組みは構築できないんです。
なかなか悩ましい話です。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ687号より)
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