ランニングを趣味としているものとしては、話題にしないわけにはいかないニュースとして2020115日にイギリスのメディアが報じた「世界陸連が検討を始めたと言われる厚底シューズ禁止の動き」です。

 

2020117日付の時事通信社の記事によると、

・ナイキ社の「ヴェイパーフライ」シリーズについて禁止の可能性がある

・陸上選手に不公平なアドバンテージをもたらしている

・世界陸連では、有識者で構成する委員会が、このシューズに関する調査を行ってきた

・委員会では、1月中にもこのシューズの使用禁止を勧告すると見られている

・世界陸連は、規則改定が行われる場合は評議会で承認される必要がある

・ベーシックモデルのソールには、カーボンファイバー製のブレード1枚が搭載されている

・ランナーが踏み出すごとにエネルギーの蓄積と放出が行われる

・ソールにはクッション性もある

といったことが報道されていました。

 

世界陸連の競技規則第143条では、シューズについて、

「使用者に不公平となる助力や利益を与えるようなものであってはならない」

と規定されているそうです。

もともと、世界陸連が委員会を設置して調査するきっかけになったのは、一部の選手からナイキ社のシューズを履いた選手が好記録を出すことで不満が生じたため、と言われています。

 

今回のシューズに限らず、スポーツの世界では、常に道具の進化があります。

私たちの記憶の残っているものでも、長野五輪前の1996年頃にオランダで開発されたスピードスケートのスラップスケート靴、競泳で2008年頃に世界記録連発になったイギリスのスピード社が開発した高速水着のレイザー・レイサーがあります。

前者は、現在では「競技者のスタンダード」となり、後者は2010年に水着素材は、「繊維を織る・編む・紡ぐという工程でのみ加工した素材」という規定ができて使用が禁止されました。

余談ですが、国際水泳連盟は「水着生地」に規定を設けて、「新型水着」を排除しましたが、個人的には、「ポリウレタンやラバーなどのフィルム状の素材を貼り合わせた水着」自体は推進力があるわけではありません。つまり、公平に選手が水着を利用できれば、禁止する必要はなかったのではないかと思います。

 

話しをヴェイパーフライに戻しますが、このシューズは、既製品として手に入れることができるもので、トップランナーだけでなく、市民ランナーも使用できます。

したがって、「誰もが公平に使用できる」という点では問題ありません。

焦点となるのは、厚底ソール内に入っている「カーボンプレート」の存在を「助力」というかどうかです。

しかし、同じ陸上でも、トラック競技ならスパイクシューズがありますし、棒高跳びの棒もグラスファイバーからカーボンファイバーになり記録が伸びました。

私が学生時代に取り組んでいたボウガン射撃(クロスボウ)もかつては、アルミニウム製の矢でしたが、カーボン製が出てきて矢の飛び方が安定して好記録が出るようになりました。

このように、道具を使用する競技は、時代とともに道具が進化するものです。

道具が進化したのに記録が昔と変わらないのであれば問題ですが、トップアスリートの記録は、どんな競技でも向上しており、懐古主義になるのはおかしい話です。

 

私の予想では、世界陸連の動きとイギリスメディアが報じたニュースは、「ナイキ社のひとり勝ち」に対して、揺さぶりをかけるものではないかと思います。

仮に、世界陸連が設置した委員会が「ヴェイパーフライ禁止の勧告」をしたとしても、世界陸連の規則を変更するまでには、至らないと思います。

 

ちなみに、世界陸連規則で禁止された場合、日本で行われる市民マラソンはどうなるのでしょうか。

陸連非公認の大会は問題ないでしょうけれど、陸連公認、あるいは、陸連がコースを公認したレースは数多くあり、大会要項には「日本陸連競技規則に則る」と明記されています。

しかし、これだけ市民ランナーに普及してしまったヴェイパーフライを「禁止」にしたら、「履いているランナーは記録が公認されません」と決めたところで、チェックが事実上できません。

 

個人的な感情としては、もう少し早くナイキがヴェイパーフライを開発してくれたなら、一番タイムが出ていた時期に、ヴェイパーフライを履いて人生マックスのタイムを出してみたかったな、と思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ681号より)

 

※写真は、ズームフライ3

 

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