2019年11月18日付の西日本新聞が、
「郵便局の過剰ノルマ、死選んだ配達員 自殺の翌日に届いた自腹の購入商品…妻「何でここまで」」
という見出し記事を報じていました。
この記事では、
・9年前の2010年12月、郵便配達員だった男性が勤務局の4階窓から飛び降りて亡くなった
・年賀はがきの販売ノルマ達成や時間内の配達を執拗に求められ、苦しんだ末の自殺だった
・男性の様子が変わったのは埼玉県内の郵便局から、首都圏有数の大規模局に異動した時
・職場では残業を減らすよう求められたが、慣れない道で配達が思うように進まないと悩んでいた
・交通事故などのミスを起こした局員は、数百人の局員の前で謝罪させられた
・毎年、年賀はがき7千~8千枚の販売ノルマが課せられた
・自宅には、自腹で購入した年賀はがきが山積みになっていた
・歳暮や中元、母の日・・・、歳事のたびにゆうパック商品も購入
・男性は「時間内に配達するので精いっぱい。営業なんかできるわけがない」とこぼしていた
・男性の妻と子ども3人は2013年12月、自殺は、精神障害が原因として日本郵便を提訴
・会社側は「業務と死亡に因果関係はない」と争う姿勢を示した
・結果的には、2016年10月、自殺に至ったことに遺憾の意を示した上、解決金を支払う和解が成立
・女性は「社員を追い詰める会社の体質は、全く変わっていない。家族のため、一生懸命働く社員が報われる会社になってほしい」と語った
ということです。
昔話になってしまいますが、私が就職時期に一番考慮したのは、このような「内部営業」をある程度、売上計画に見込んでいる業界・業態の仕事を避けることでした。
大学が理工系学部だったのと、バブル期でしたので、大手メーカーには、ほぼどこでも歓迎される時代でした。
ただ、大量採用時代なので、いわゆる文系学部卒業者を採用する企業でも、理工系学生に目を向けて採用活動をしており、私の同じ大学の同級生や他大学に進学した工学部出身の友達も証券会社、銀行、不動産会社などに就職した者も結構いました。
理系出身者で文系職種に就職した彼ら全てがそうではないですが、当時、友達に就職理由を聞くと「給与水準が高く福利厚生がしっかりしているから」という答えが多かったです。
私が「営業とか大変じゃないの?」と聞くと、「たぶん、理系出身だからシステム系や商品設計部門で営業することはたぶんないよ」と話していました。
しかし、私は、技術者としてのピーク年齢が過ぎれば、きっといつの日か、営業部門に回される、と考えていました。
学生時代に何種類ものアルバイトを経験しましたが、「営業ノルマがあるアルバイト」ほど、精神的にキツいものはありません。
最初にアルバイトで経験したのは、「医療廃棄物の委託契約営業」のアルバイトです。
30年以上前の話ですが、当時、「日給1万円、ただし1日契約2件以上」というような条件でした。
医療機関を営業で回るのですが、実質、10日ほどやって、辞めました。
最低保証のアルバイト代は確かもらいましたが、結果的に、1件も契約が取れませんでした。
「学習教材営業」のアルバイトもやりました。
詳細は割愛しますが、これもめちゃめちゃ大変でした。
結局、当時、家庭教師のアルバイトをしていたご家庭に無理矢理、契約してもらいましたが、その後、なんとなくその家庭教師先との雰囲気が悪くなり、家庭教師と学習教材のアルバイトのいずれも辞めました。
これらの経験で感じたのは、自社製品のデメリットをわかっていても、平気で営業できる精神力のある人ならできるが、普通の人では、営業は身内など関係者に売りつくしたら終了。
結果的に、コツコツこなせば確実に成果が出る仕事の方が、目先の給与水準などより精神的に楽、と学んだわけです。
話題を冒頭紹介した「郵便局員のノルマ」の話に戻しますが、こうした「従業員自体が勤務先企業の収益源と見なされている」業界は、いくつもあります。
一般の人がイメージしやすいのは、保険やアパレル、自動車販売でしょう。
親類や友人、知人がこれらの業界に就職、転職すると、それまで10年近く交流がなかった人でも「ひさびさにお会いしたい」とたいていは連絡を受けます。
最初は、お互いの近況や就職・転職した経緯などを話していますが、次第に「本題」になっていきます(笑)
たぶん、セールストークを研修されているようで、「営業しているわけじゃないけど、話を聞いてくれる?」とか「セールスの練習台になってくれますか?」といいながら、パンフレットを出し始めるのが常です。
結論から言えば、私の場合、たいてい、こうしたひさびさの再会(営業)を受けた後は、その友人や知人と疎遠になります。話はじっくり聞いていますが、どうしてもツッコミを入れてしまい、相手が「この人は買ってくれる要素が1ミリもない」と気づくからでしょう。
保険会社や不動産会社のコンサルティングを経験したことがありますが、「営業マンは(ある程度)使い捨て」という発想が、根底には、まず間違いなく常識としてあります。
ひと通りの営業研修を受けた後、営業活動に出されますが、転職組であれば、昔の仕事仲間、昔の取引先、親類、友達、知人・・・と1周すると壁にぶち当たります。
フルコミッションの給与制度のところは以前より減ったようですが、それでも生活が苦しくなり、脱落(退職)しますが、組織や上司が引き留めをすることはまずありません。
なぜなら、営業領域として伸びしろがないので、引き留めたところで、お荷物になるだけですし、元々「続かないかもな」という想定を採用時点からしているからです。
自殺した男性の妻は、
>女性は「社員を追い詰める会社の体質は、全く変わっていない。
>家族のため、一生懸命働く社員が報われる会社になってほしい」と語った
そうですが、「内部営業による売り上げをある程度見込んでいる業態が世の中に存在する」のはある程度仕方がありません。
問題は、価値観の変化や少子高齢化による経済の冷え込みといった社会環境要因による売り上げの落ち込みを「営業ノルマのアップ(内部営業)」で乗り切ろうとする企業です。
こうした企業は、労働基準監督署が取り締まる対象にしていかなければならないと思います。
また、私たちも、市場原理の資本主義社会において、「営業に向いていない人は企業からカモとしての存在価値しかそもそも期待されていない」業界があることを知って、職場を選ぶことも必要なのだと思います。
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