組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「JAB認定辞退」について。
日本国内の認定機関であるJAB(公益財団法人日本適合性認定協会)のウェブサイト(2019.7.12)に約2年分の「マネジメントシステム機関の認定辞退」が掲載されています。
https://www.jab.or.jp/service/management_system/report/list03.html
JABで認定されている(いた)認証機関の認定辞退には、
・機関として認証事業から撤退するため
・機関として認証事業を他の機関に譲渡するため
・機関として認定を受けていたが、採算が取れないので、認定の一部を辞退するため
といったようなケースがあります。
ざっくりした話ですが、すでに認定を保有している認証機関が、分野拡大(例:建設)する場合、登録組織規模にもよりますが、最低でも10社、できれば20社以上、組織がないと認定審査費用をペイできないといわれています。
さらに、認証機関単体の経営でいえば、認証機関の機能として、最低限、経営者、審査計画・登録管理、審査業務管理、事務要員といった役割の人材は必要ですので、最小スタッフを仮に「5人」とすると、給与水準を下げ、各種のコストカットをしても、登録組織が200社はないと、認証機関を運営することは難しいでしょう。
したがって、200社以下で認定された認証機関として維持する場合は、認証部門以外の部門からの拠出がなければ、事業として継続することは困難です。
そのようなわけで、JAB認定のマネジメントシステム認証機関の2000年以降の認定辞退については、公表されると、「あの機関は登録組織も少なかったし、運営母体の財務も弱かったから、やむを得ないよな」と業界関係者なら感じるケースが多かったです。
しかし、近年の認定辞退は、
・JAB以外の認定機関から認定されている認証機関(外資系)の辞退
・辞退理由として、認定機関の統一化による経営資源の集中
というJAB認定辞退が多くなってきたように思います。
参考1:
https://www.bsigroup.com/ja-JP/our-services/certification/announcement/jab-announcement/
参考2:
素直に経営的な面だけを捉えれば、多くの認定機関が相互承認していますから、日本(JAB)、アメリカ(ANAB)、イギリス(UKAS)、オランダ(RvA)・・・と複数の認定機関から、認証機関は認定を取得する意義はありません。
要は、雑な言い方ですが、認証機関からしたら「相互承認されているどこかの認定がひとつあればいい」わけです。
では、なぜ、今まで、認証機関(外資系)は複数の認定を取得してきたのか?
それは、登録組織の要望であったり、国際的なブランドイメージです。
公的な取引上は、IAFで相互承認されている認定機関の登録証なら全世界で通用しますが、個別の取引先が、例えば、UKAS認定機関、JAB認定機関から認証を受けている認証機関の登録証なら信頼できる、と捉えていたため、認証機関としては営業上の理由から、複数の認定を取得していたわけです。
けれども、前述したように、ISO認証自体のブランド価値が下がったのか、認証機関は、複数の認定を保有する営業的なメリットがなくなってきたので、「認定維持に対するリソースの集中」に舵(かじ)を切り始めたようです。
そうなると、認定機関間の「認証機関」(という顧客)の奪い合いです。
JABは、一説には、認証機関が、認定審査に関する個別の事前相談を希望していてもあまり積極的でない、ということもあるのか、あるいは、相互承認している認定機関間でIAF基準という統一基準があるのですが、その運用が極めて杓子定規(独自の運用)という噂もあり、JAB認定から逃げ出しているのではないか、という話もあるようです。
ただ、日本国内にある認証機関が海外認定を受ける場合、本国から認定チームを認証機関に派遣するのはコスト的にも合わないので、国内機関(JAB)に業務を下請けしてもらうケースが近年は一般的です。
仮に、JAB認定を辞退し、海外認定機関の認定に統一する動きが加速すると、JABは、実質的に海外認定機関の協力機関としての活動がメインになってしまうのかもしれません。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ662号より)
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