品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001を日本企業が最初に取得したのは1989年頃と言われています。
私が、「ISO9001」という言葉を初めて耳にしたのは、1990年でした。
当時は電機系メーカーへの就職を目指す理工系大学生にとっては超売り手市場でした。
私にも多くの大手電機メーカーからリクルーターが現れ、王子様気分でした。
しかし、とても熾烈なサラリーマンレースを生き残っていく自信が持てず、政府系外郭団体を中心に就職先を探していました。
私がターゲットにしていた外郭団体は、国の代行機関や指定機関として検査や検定業務を実施している団体。
それらの組織案内を取寄せると「品質管理規格に基づく審査」(当時)とか「ISO9001審査登録業務」といったそれまで聞いたことのない事業が紹介されていて「そういう仕事もあるんだぁ」と認識しました。
結果的に、ほぼ決まっていた大手電機メーカーに断りを入れ、政府系外郭団体に就職し、イメージ通り「機器検査」に関する部署に配属されました。
ただ、就職してみると、「品質管理システム」(当時)の審査業務は、将来性がある仕事に映り、検査部門からISO審査部門に、異動させてもらいました。
昔話はこのぐらいにして、当時、ISO認証に、私が期待したことを書き残しておきます。
ISO9001は、品質マネジメントシステムに対する規格で、製品やサービスが提供されるまでの工程を管理する仕組みを対象とした規格です。つまり、
「一定以上の水準の製品やサービスを継続して提供していくことで顧客満足の維持・向上を目指すことを目的とした規格」
です。
規格では、
・組織における役割と権限を明確にしましょう
・必要な手順を文書化し、証拠を記録しましょう
・問題発生はもちろんのことリスクをより仕組みを改善しましょう
ということがざっくり言えば、求められています。
したがって、ISO9001を取得している組織は、
「広義の品質を高めるためにしっかりルールを構築しています」
という証明になり、信頼感や安心感を担保することができるわけです。
そのような特徴から、
・組織を買収したり、売却するときの価値判断のひとつとなり、認証組織は高く評価される
・消費者や市場、顧客から、認証組織は、選択する際の信頼感、安心感の目安になる
・社会制度としてさまざまな組織の認定や認証制度のベーシックな部分として活用できる
・世の中に知られていない新興組織が、大手と取引する際の信頼の証になる
といったことを期待しました。
当時、私は、政府系外郭団体で、法律に関連する組織や製品の検査、検定、認定審査業務を担当していたので、ある組織が、色々な法規制に関係する場合、さまざまな検査や審査に個別に対応することとなり、担当窓口は大変だから、ISO9001を持っていれば、組織マネジメントの基礎的部分は、検査や審査を免除する仕組みにすることができるのではないか、と考えていました。
また、株式会社の上場基準のひとつにISO9001にもとづくマネジメントシステムの認証を条件にするのもいいと思いました。
しかし、当時から30年近くたちましたが、ISO認証は、当時の期待ほどは社会において、その役割を真に理解されず、活用されていないと思います。
少し前に、設立2年目にISO9001と14001を取得しました、という企業経営者さんにお会いしました。
その会社は現在、設立10数年目ですが、ISO取得の狙いは、
・技術はあるが世間に知られていない
・大手企業に売り込みに行く際にISO認証企業ということで信頼と安心を与えたい
という考えだったそうです。
実際に、認証企業であることから、いくつもの大手企業からの受注にも成功したそうで、「売り上げは現状落ちているけど、認証を止めたら新たな組織や製品の売り込みができなくなるから、認証は止めるつもりはない」とおっしゃっていました。
ただ、このように考える経営者さんは製造業においては、成り立ちますが、サービス業などにおいてはあまり成り立ちません。
マネジメント認証の世界は、現状、縮小均衡まっしぐらの世界です。
業界として社会への戦略的な働き掛けが殆ど進められていないので当然の結果かもしれないですが、残念でなりません。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ657号より)
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