2019年8月1日の読売新聞が、
「就活サイトが「内定辞退確率」AI予測、企業に販売」
という見出し記事を報じていました。
このニュースは、8月1日夜の各テレビ局のニュースでも報じられていましたが、状況を下記に整理します。
(記事より引用)
・大手就職情報サイト「リクナビ」が「内定辞退確率」をAIで予測し企業に販売していた
・リクナビを運営しているのはリクルートキャリア
・リクナビ側は、サイトに登録した学生には、「登録時の規約で同意を得ていた」と説明
・7月上旬、政府の個人情報保護委員会から、学生への説明が分かりにくいとの指摘を受けた
・個人情報保護委員会の指摘により、7月31日に販売を一時休止した
・リクナビには毎年約80万人の学生が登録している
・学生は企業の採用情報を閲覧したり、サイトを通じて企業に書類を提出したりしている
・2018年から、学生がサイト内でどの企業のページを閲覧したかの記録を収集
・これらのデータをAIに分析させ、学生の「選考や内定を辞退する確率」を5段階で予測
・個人ごとに予測したデータを38社に販売した
(引用ここまで)
私見ですが、このニュースを聞いた時に、「リクナビはアウトでしょう」と感じました。
リクナビ側の主張では、「採用選考に使われることはない」としていますが、有料で38社に販売しており、38社が「採用選考に使われない」ことは、リクナビ側では担保できないはずです。
個人情報保護法では、ご存知のように「個人情報の外部への提供には本人の同意が義務付けられている」ので、その点は「同意する」を押させているので法規上は「セーフ」です。
リクルートキャリアのウェブサイトを確認すると、
https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190801-02/
「合否の判定には当該データを活用しないことを企業に参画同意書として確約いただいています」
との説明があります。
しかし、この「参加同意書」には、罰則規定などがあるのでしょうか。
また「38社の利用状況を定期的に確認している」とありますが、どの程度の深さで実態把握しているのかも不明です。
そもそも、リクナビのデータを購入する企業側の論理手考えれば、「分析データを採用選考に使えないのなら、わざわざデータを有料で購入しない」のではないでしょうか。
気になるのは、リクルートキャリアの「当社サービスに関する、一部の報道につきまして」についての説明が、全体として、
・サービスに違法性はない
・7割以上の企業人事にとって「採用に係るマンパワー」が最大の課題となっている
・メールや電話による内定者フォローを強化している企業もあるが辞退率は増加している
・前年度の応募学生の行動ログなどから企業に対する応募行動についてのアルゴリズムを作成する
・今年度に当該採用企業に応募する学生の行動ログを照合してその結果を企業に提示
・企業は適切なフォローを行うことができる
・学生にとっては、企業とのコミュニケーションを取る機会を増やすことができる
という「自らのサービスの正当性の主張」に終始しているのが気になります。
サービスの提供の背景はよくわかりますが、情報保護委員会からの指摘受けてのお詫び系の表現があまりありません。
ただ、リクルートキャリアに限らず、現状、多くの産業で消費者行動の傾向分析が、個人情報を基に利用されています。
同意する際の確認文書の記述や方法については、データマーケティング系企業にとって今回のニュースは共通の課題なのかもしれません。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ657号より)
注:2019年8月6日付の朝日新聞の報道では、リクナビは、内定辞退率を予測して企業に販売するサービスを廃止するようです。リクナビに限らず、こうした情報分析データを企業に販売しているビジネス形態は他にも多々あるので、他の業種の対応動向にも注目したいと思います。
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