2019年6月24日付の毎日新聞が、
「かんぽ生命が不適切販売 乗り換えで保険料上昇など5800件」
という見出し記事を報じていました。
記事によると、
・かんぽ生命保険は、高齢者らが既存の契約を解約して新しい保険商品に乗り換えた結果、保険料が上がるなどしたケースが約5800件あったと発表した
・顧客からの苦情を受け、2018年11月分を社内調査した結果、判明したがさらに件数が拡大する可能性がある
・金融庁は顧客本位の販売だったかどうか調べている
・かんぽ生命は2017年10月に複数の新しい保険商品の販売を開始した
・その後、契約保険を乗り換える顧客が急増したが、乗り換えを巡る苦情が複数寄せられたため、2018年11月分の新規契約を調査した
・その結果、他の商品も含めた約2万1000件の乗り換え契約のうち約5800件について、同じ種類の保険同士の乗り換えで、保険料増額などにつながっていた
・顧客が現金が必要となり解約して契約を乗り換えたケースもあったが、少なくとも約30件については契約の変更で生じる不利益を十分に理解していなかったという
・かんぽ生命は5800件について「顧客にとって乗り換える経済合理性が乏しい」と判断し、契約者が希望すれば元の契約に戻す対応を始めた
・しかし、2018年11月分以外にも不適切な販売が広がっている可能性がある
・親会社の日本郵政を巡っては、傘下のゆうちょ銀行が6月、高齢者に対し、理解度の確認を怠るなど不適切な手続きで投資信託を販売していたことが発覚し、直営店の9割で内規違反が確認された
・日本郵政の長門正貢社長は6月24日、東京都内で開かれた記者会見で「真摯に反省し、(日本郵政グループが)一丸となってコンプライアンス(法令順守)を徹底していきたい」と話した
(以上、記事から引用)
報道から想像すると、
・かんぽ生命は、新商品販売におけるリスク想定を十分にしていなかった
・乗り換え販売に対する社内のチェックが十分でなかった
・顧客満足より営業成績を上げることを第一(重要)とする社内風土になっていた
といったことが言えると思います。
かんぽ生命が、2017年10月に、新商品を発売することによって、おそらく、担当局員には、営業ノルマが設定されたでしょう。
しかし、問題は、そのノルマの達成方法です。
新規契約でノルマ達成を目指す分には、たぶん、殆ど問題は出なかったでしょう。
普通に考えれば、顔なじみの顧客に、保険の乗り換え営業するのは当然です。
乗り換え営業した場合、かんぽ生命は、そもそも、従来型の商品から乗り換えた場合、保険契約者に不利益が生じることを認識していたかどうかです。
組織として認識していたのに、営業担当局員に「乗り換えでもなんでもいいからとにかくノルマを達成せよ」と号令をかけていたのであれば、「組織ぐるみの不適切営業」です。
まともな、管理者なら、
・従来商品から新商品に乗り換えると不利益が生じる可能性が高いというリスクの認識
・乗り換え受注した場合、しっかりと保険契約者にメリット・デメリットを認識させたかの確認
をして、保険契約者のことを考えているでしょう。
また、新商品を開発した本社サイドに「従来商品からの乗り換えした場合のリスク」について認識があり、新商品販売の注意ポイントとして、販売担当の各局員にそういうリスクを教育していたのか?という点も気になります。
報道では、調査したのは、「2018年11月の新規契約」とのことですが、新商品の販売は2017年10月からであり、契約者が現金が必要になったといった自己都合や合意の上での乗り換えではない「不適切な乗り換え事例」は、もっと件数が拡大するでしょう。
しっかり契約内容を確認していない契約者が悪い、と言ってしまえばそれまでですが、「かんぽ生命」に対する国民の信頼感は高く、それを前提に「だまし討ち」のような契約をさせるマネジメントシステムだったら、世も末です。
かんぽ生命には、単に反省するだけでなく、
・新商品開発時点で認識し、管理すべきこと
・新商品販売において想定されるリスクを洗い出しておくこと
・洗い出したリスクに基づき、販売状況を管理すること
が必要だということを、しっかり理解して、仕組み(マネジメントシステム)を改善して欲しいものです。
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