日本企業が、ISOマネジメントシステムを最初に認証されてから、約30年が経過しました。
今の時代、社会経験がある方なら、「ISO」ということばを聞いたことが全くない、という人はほとんどいないのではないでしょうか。
20歳で働きだしたとして、現在の多くの会社の実質的な定年は「65歳」です。
つまり、ISO取得が日本の企業で始まり「30年」とは、ざっくり言って「50歳以下の人」の多くは、社会人になった時から、ISOという言葉を耳にして、殆どの会社員人生において、自分の組織には、ISOに基づくマネジメントシステムが整備されていたわけです。
ただ、ISOに基づくマネジメントシステムの整備や運用、改善は、いわゆる「ISO事務局」が担っているケースが多く、本来、日常的にISOで整備されたマネジメントシステムによって社内業務を実施しているはずなのですが、「ISOマネジメントシステム認証制度」自体の理解は、「分かっていない」人が殆どでしょう。
「ISO認証制度は、基本的に、BtoBビジネスに不可欠だ」という人もいて、「BtoCビジネス」には、「向いていない」という人も業界にはいます。
確かに、ISO認証制度は、「1個1個のモノの品質や性能を保証」する制度ではなく「顧客要求事項を満たした製品(サービス)を作り出す仕組みの能力を保証」する制度です。
したがって、何千個、何万個の部品や製品を取引する場合、瞬間最大風速的に品質が安定しているだけでは何の意味もなく、閑散期も繁忙期も関係なく、継続的な品質の安定性が求められるので、その証拠として「ISOマネジメントシステムにおける認証」が取引の条件となるわけです。
一方「BtoC」の場合は、毎日、かつ、大量に需要しているわけではないので、
・問題があった場合の対応、対処力
・再発防止の確実さ
といったことよりも、「ブランド力」とか「価格」、「世間の評判」といったことが「購買動機」となるのでしょう。
つまり、「期待する品質を常に維持するための仕事の仕組み」ということについては、ほとんど関心がない、のではないかと思います。
話は少しそれますが、業界の仲間と話していて、認証機関に寄せられる「認証組織に対する苦情」としては、
・不動産業
・建設業
が多いようです。
ニュースでは、昨今であれば、日産自動車、三菱自動車の完成検査不正、KYBや三菱電機、日立化成などの検査データ改ざん、食品産業における異物混入・・・などがすぐに頭に浮かぶ不祥事ですが、こうした企業に関する一般の人からの苦情は意外に多くないようです。
私の感覚からしたら、上記のようなニュースになった企業の認証について、
・なぜ機関が実施した認証審査で不正は見つからなかったのか?
・組織の内部監査は機能していたのか?また認証機関はそれをしっかり検証していたのか?
といった不満や疑問を担当認証機関に「苦情や問い合わせ」として寄せてもいいのではないか、と思いますが、現実的には、ほとんどないそうです。
その一方、例えば、
・自分の住んでいるマンションの大規模改修に関するもの
・自分の住んでいるマンションの更新契約に関するもの
・近隣(土木、建築)工事に関するもの
・・・
といった苦情や問い合わせは、結構あるようです。
少し話題の切り口を変えますが、こうした「不動産会社や建設会社」に関する苦情について、機関では、
・苦情のあった業務は認証対象外業務である
・苦情のあった業務は認証対象外部門の業務である
・近隣トラブルであり、組織に責任はない
・・・
といったように、感覚的には、「認証外である」、「認証機関には関係がない」といった処理をしているケースが多い気がします。
確かに、「業界人」からすると、そのような機関の判断に誤りはありません。
しかし、苦情申し出者にとっては「納得いかない」、「腑に落ちない」と感じているケースも多いようで、その後も、何度も機関に同じ件で問い合わせをしているケースもあります。
ただ、そう何度も問い合わせをすると、機関側は「クレーマー」として認識します。
例えはガラッと変わりますが、日産のゴーン元会長の逮捕の際に問題になった「有価証券報告書の役員報酬」です。
私たち、一般の素人からすれば「なぜ、監査法人は何年も見逃していたのか?」と思います。
しかし、報道では、「役員報酬の記載に関しては監査対象外」との話があります。
「会計監査の世界」では、そうなのかもしれませんが、やはり、私たち一般人からすれば、「なんで、監査対象外なんだ、対象外ならなんのための会計監査なんだ」と思うわけです。
会計監査の世界は、門外漢なので、コメントを控えますが、マネジメントシステム認証の世界について、現状では、機関は、
「監査に瑕疵はない」
「監査対象外なので、これ以上の問い合わせには答えかねる」
との判断になってしまうのは当然です。
ただ、一般人のマネジメントシステム認証に対する期待や信頼性アップのためには、例えば、
・認証範囲(製品、部門)の捉え方(限定はできるだけ認めない)
・苦情や問い合わせに対する公表制度の充実
といったことにも目を向けていく必要があるのではないかと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ623号より)
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