2019年1月24日付の共同通信社が、
「住友重機械、新たな検査不正 計288件、一段と拡大も」
という見出し記事を報じていました。
この記事によると、
・住友重機械工業は、1月24日に、同社と子会社3社で計288件の検査不正が新たに見つかったと発表した
・半導体の製造装置などのデータを改ざんしたり、動く歩道を無資格者が検査したりしていた
・検査不正には、スキー場のリフトの一部装置も含まれていた
・調査が進めば、不正件数はさらに拡大する見込み
・昨年も不正が発覚しており、品質軽視とコンプライアンス(法令順守)欠如が鮮明となった
・半導体関連の改ざんは2004年から行われていた。製品の安全性や性能に問題はない
・住友重機械は今回の不正に関与したのは合計13人だったとして、組織的ではないと説明している
とのことです。
早速、住友重機械工業のウェブサイトを確認してみました。
すると、1月24日付で、「当社グループにおける不適切な検査等について」というお知らせが掲載されていました。
http://www.shi.co.jp/info/2018/6kgpsq0000007r70.html
また、PDFファイルで、12ページにおよぶ不適切な検査等に関する経緯、原因、再発防止策、お詫びなどが掲載されていました。
http://www.shi.co.jp/info/2018/6kgpsq0000007r70-att/6kgpsq0000007r7l.pdf
感想としては、不適切な検査等に関する公表なので「立派」というのは変ですが、他社の類似する不祥事(不適切な検査等)において、ウェブサイトに掲載している文面と比較すると、説明がしっかりしている印象があります。
ウェブサイトに記載がありますが、今回新たに不正が見つかったのは、
・住友重機械工業 プラスチック機械事業部
対象製品・サービス:封止プレス
主な用途:半導体組立工程内のオートモールド装置の一部
・住友重機械搬送システム
対象製品・サービス:動く歩道の定期検査
主な用途:通行者の移動
・住友重機械ギヤボックス
対象製品・サービス:大型減速機
主な用途:発電設備、圧縮機等
・住友重機械精機販売
対象製品・サービス:減速機のオーバーホール
主な用途:スキーリフト等の駆動装置、産業用ベルトコンベア等
の計4社です。
説明分が比較的分かりやすい、と思ったのは、4社全体について、
・判明した不適切検査等の概要
・安全性・製品性能の確認状況
・今後の対応方針
・業績に与える影響
・当社における対応状況等について
という構成で説明があり、その上で、
・4社のまとめ(表)
が表にまとめられ、さらに
・各社の詳細
が記述されている構成だから、わかりやすいという印象を受けたのかもしれません。
また、前年に発生した「公表済みの不適切な検査等(一覧表)」も添付してあるので、概略ではありますが、過去の不適切事案についてのその後も公表されていて、「包み隠さず公表」しているイメージがあります。
なお、この公表文をまとめているのは「コーポレート・コミュニケーション部」ですが、しっかりした文章でさすが住友重機械工業、という印象です。
ただ、不適切検査の原因と再発防止、影響の評価については、あくまでも「個人的な印象」ですが、「本当にそれが原因ですか?」、「外部に説明しやすい原因にすり替えたのでは?」といった感じもします。
例えば、住友重機械搬送システムは、「無資格者による定期検査の実施」の原因を「各担当者と協力会社に任せた結果、管理者が当該業務の有資格者含めた社員および協力会社の配置計画に関して、実態を把握しておらず、管理者が確認・承認する仕組みとなっていなかった」としています。
また、「定期検査報告書への異なる検査者氏名と異なる検査結果の記載」した原因は、「実際に自ら検査を実施しなくとも、有資格者である自らが検査結果をチェックすればその検査は有効であるとの誤った解釈をしていた」としています。
前者については、「管理上の問題」と理解できますが、後者については「無資格者が検査しても有資格者が検査をチェックすれば検査結果は有効」との考え方そのものが「有資格者である検査員の認識」として資質が問われる話です。
また、無資格者が有資格を得る上で「経験を積む訓練の場」はあると思いますが、その仕組みが確立しないまま常態化していたとしたら、それは、組織の管理上の問題だと思います。
もちろん、公表された以上の「真の原因」を組織内部では言及していると思いますが、言わずもがなですが「なぜ、無資格者が検査した結果を有資格者がチェックすれば検査自体が有効と有資格者は判断したのか」また「なぜ、無資格者に検査を任せることが常態化していたのか」についての原因を調べなければ、形を変えて、また問題は出てくるでしょう。
ちなみに、認定機関であるJABのウェブサイトで確認すると、少なくとも、今回の4社の中では、住友重機械ギヤボックスが大手外資系認証機関によってISO9001とISO14001が認証されていました。
審査を担当した認証機関の対応にも注目です。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ631号より)
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