2018年3月1日のニュースで各メディアが報じていましたが、新幹線「のぞみ」の台車に亀裂が見つかった問題について、台車を製造した川崎重工業の“ずさんな品質管理”が明らかになっていました。
各メディアの報道によると、
◆台車枠と軸バネ座と呼ばれる部品を組み立てる際、接着面を平らにするため表面を削って溶接していた
◆表面を削ることは強度が低下するため社内規定で禁止されているが、そのことを責任者が現場の作業員に十分伝えていなかった
◆完成した台車について、責任者や別の部署が品質をチェックする体制にもなっていなかった
◆「加工不良という認識は職場にないので、職場にとどまっていた。事務所部門に対しても申告はなかった」(川崎重工 小河原誠常務)
◆表面を削ったことで鋼材の厚さが基準を満たしていない146の台車について、順次交換する
ということだそうです。
この状況から、つっこみどころは「満載」です。
・なぜ、社内規定で禁止されている部品の表面を削っていたのか?
・なぜ、社内規定が現場作業員に伝達されていなかったのか?
・なぜ、社内規定と異なる製造方法なのに「加工不良」という認識がなかったのか?
・なぜ、完成品の品質チェックをする体制になっていなかったのか?
・なぜ、JRは、こんなずさんな生産体制の工場に発注していたのか?
などです。
外部監査といえば、品質マネジメントシステムを認証するISO認証制度が有名ですので、JABのウェブサイトで、「川崎重工業」の認証状況をチェックしてみました。
https://www.jab.or.jp/system/iso/search/
品質、環境で併せて10の事業部が認証登録されていましたが、今回車両の台車を作っていたとされる兵庫工場は対象になっていないようでした。
ISOの認証は受けていないようですが「天下の川崎重工さま」です。
「品質チェック体制がない」ということがあり得るでしょうか?
ひと昔前の時代なら、川崎重工クラスの工場ならば、完成品であれば、必ず、「製造した部門とは違う他部門のチェック」が入っていたはずです。
いつの間にか、社内の平和ボケか、検査コスト削減かわかりませんが、「他部門によるチェック」というシステムがなくなったのでしょう。
また、「現場作業員に伝達されていない」は、構内外注業者が、実際の作業を請け負っていた気がします。
そうなると、現場責任者は、川重社員でも、作業自体は、外注ですから、社内規定が教育されていなかった可能性は、なんとなく想像がつきます。
しかし、「川重が外注作業レベルをきちんと評価できない」なんていうことがあるのでしょうか?
相当、日本のモノづくりは「劣化している」としか言いようがありません。
そして、JRです。
JRには、調達基準があるはずです。
ISO認証がないのであれば、自ら工場監査を実施して、指摘するべきだし、購買品の検査を定期的に工場に訪問して自ら実施し、基準を満たしたものか確認するべきです。
航空宇宙・防衛産業では、「JIS Q 9100」規格があり、これは、航空宇宙・防衛産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格で、この中では、この業界に必要な製造や検査体制などが規定されています。
自動車の世界も、「ISO/TS 16949」 という「自動車産業向けの品質マネジメントシステムの技術仕様」があり、これによる認証制度があります。
JRにしっかり調達先を管理する能力がないのであれば、鉄道分野も「鉄道産業向け規格」を作って、認証を受ける、あるいは、システム構築して調達先からの2社監査を受ける仕組みにしなければ、私たちの安全は守られないように思います。
それにしても、川崎重工業のような大手企業がこのレベルです。
急速に日本の製造現場の能力が低下しているのかもしれません。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ583号より)
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