組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISO認証制度がある。
このISOマネジメントシステム審査について、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「適用範囲の決定」について。
ISO9001の2015年度版では、適用範囲を決定するために、以下のことが要求されています。
1)「外部や内部の課題」「密接に関連する利害関係者の要求事項」「組織の製品及びサービス」を考慮し(ISO 9001:2015 4.3項引用)
2)「ある要求事項が、組織の品質マネジメントシステムの適用範囲でどのプロセスにも適用できないことを決定できるが、製品及びサービスの適合が達成されないという結果を招かない場合に限る」(ISO 9001:2015 A.5項引用)
3)「適用不可能なことを決定した要求事項が、組織の製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力または責任に影響を及ぼさない場合に限り、この国際規格への適合を表明してよい」(ISO 9001:2015 4.3項引用)
一般的には、上記1)については、「現状分析表」とか「組織を取り巻く内部外部の課題一覧表」とか「リスクと機会分析表」「SWOT分析」といった資料を組織は作成し、組織内で検討し、対象範囲を「全社」にするか「一部の組織」にするか、「一部の製品及びサービス」にするか、といったことを決めます。
2015年版改訂の目的の一つに、「ISO規格に基づくマネジメントシステムの構築による弊害防止」、つまり「二重帳簿」と言われるような「実態としての経営管理の仕組み」と「ISOにより構築された経営管理の仕組み」の二重構造にならないことがあります。
日本に限ったことではなく、世界的に、経営管理の仕組み(マネジメントシステム規格=ISO9001やISO14001など)に基づいて、組織のマネジメントシステムを構築すると、
◆もともと組織に自然発生的に存在したマネジメントシステム
と
◆ISO規格に基づいて新たに作られたマネジメントシステム
の二本立てになって、要は、「審査用のマネジメントシステムが形骸化している」事例が多発したそうです。
こうした反省もあり、2015年版では「組織の事業とISOの統合」をテーマに、「適用する範囲が組織に都合よく構築されている」、あるいは、「市場に認証された組織の事業内容が誤解されない」ように、「組織の事業全体を対象に現状分析して適用する範囲を決定してください」(文書化要求あり)ということを要求しています。
しかし、実際のところ、「適用範囲を決定するための現状分析が、限定された範囲で分析・検討されている事例」が多発しています。
組織全体、または、組織の事業全部が適用範囲であれば、問題ないですが、「一部の組織で認証を受けたい」、「一部の事業(製品及びサービス)で認証を受けたい」ということであれば、例えば、「職員は営業窓口だけで、実質的な業品質に影響を与える権限を有していない」とか「売り上げが極端に少なくてISOを適用させる必要性が薄い」といったような理由が「組織で正式に決定され文書化されている必要性」があるでしょう。
案外、組織、コンサルタント、認証審査員は、このあたりを明確にしないで、適用範囲をなんとなく決め、システム構築し、審査している事例が結構多いです。
もう一度、2015年版の意図を理解して効果的なマネジメントシステムを構築、あるいは構築支援、審査をしていただきたいものです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ579号より)
【好評発売中!】
『ちょロジ ニュースで学ぶ7つの思考法』(パブラボ刊)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4434176552/bloglogcom-22/ref=nosim/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)