「三菱マテリアル子会社のISO認証が取り消しになった」

そうです。

 

201826日のフジテレビによると、

◆製品データの改ざんが発覚した三菱マテリアルの子会社2社のISO9001認証が認証機関に取り消された

◆認証が、取り消されたのは、三菱電線工業の箕島製作所(ゴム製パッキンなど)と三菱伸銅の若松製作所(銅製品など)

◆取り消しの決定は、認証機関であるJQAが特別審査を実施した

JQAによると、取消理由は、「適合性に重大な懸念があると認められたため」と説明している

ということだそうです。

 

少々専門的な話になりますが、組織にお墨付きを与える認証機関に対しては、「マネジメントシステムの審査及び認証を行う機関に対する要求事項」(ISO17021-1)という要求事項があり、その要求事項では、以下のような規定があります。

(以下、要求事項を一部抜粋)

 

9.6.5 認証の一時停止,取消し又は範囲の縮小

9.6.5.1 認証機関は、認証の一時停止、取消し又は範囲の縮小に関する方針及び文書化された手順をもち、それに付随する処置を規定しなければならない。

 

9.6.5.2 認証機関は、例えば次に示す場合には、認証を一時停止しなければならない

- 依頼者の認証されたマネジメントシステムに、その有効性に関する要求事項を含む認証要求事項に対し、常態化した不適合又は深刻な不適合があった

- 被認証組織が、要求された頻度でのサーベイランス又は再認証審査の実施を受け入れない

- 被認証組織が自発的に一時停止を要請した

 

9.6.5.4 もし一時停止の原因となった問題が解決した場合には、認証機関は一時停止した認証を復帰しなければならない。被認証組織が、一時停止の原因となった問題を、認証機関が設定した一定期間内に解決できないときは、認証の取消し又は範囲の縮小をしなければならない

 

9.6.5.5 認証機関は,認証範囲のいずれかの部分に関し,認証要求事項について常態化した不適合又は深刻な不適合があった場合、要求事項に適合しないこれらの部分が除外されるように被認証組織の認証範囲を縮小しなければならない。このような縮小は,認証に使用される規格の要求事項の意図に沿ったものでなければならない。

 

(要求事項の引用ここまで)

 

一般的には、通常の認証審査、あるいは、マスコミ報道や内部や関係者の通報により特別審査を実施し、「認証要求事項について常態化した不適合又は深刻な不適合があった場合」は、認証の「一時停止」や「範囲の縮小」といった処置が認証機関によって実施されます。

検査員資格を持たないものが検査をして、出荷していた日産自動車の場合は、「範囲の縮小」という措置が取られています。

 

しかし、今回の三菱伸銅と三菱電線については、特別審査によって一気に「取消」という措置になっているということは、相当根深く深刻な不適合が、特別審査によって検出されたということでしょう。

 

ひと昔前であれば、マスコミ報道で、品質不正が発覚して、認証機関による特別審査が実施されても、「不正はコンプライアンス上の問題であり、マネジメントシステムととの関りは低い」というような調査結果から、「認証に与える問題はない」とか、せいぜい「一時停止」という対応になっていたように思います。

しかし、これだけ、ISO認証の信頼が失墜するような各社の品質不正が報道されると、

◆長い間審査を認証機関は実施しているのに問題を検出できないとは何なんだ

◆不正があったという事実から認証付与を継続することは困難である

という判断を認証機関はするようになったのではないかと思います。

 

通常の審査は、「不正を暴き出すというより、要求事項の適合性を積極的に見出す」という側面があり、要は、組織が回答した内容や提示した記録について、性善説の視点で評価しているので、「回答内容は嘘をついていた」「審査員に見せるために都合よく記録を作成していた」という「認証審査の信頼感を損なう事実」があったなら、その時は「取消しますよ」というのは、当然の流れなのかもしれません。

 

個人的には、認証機関は「認証の取消」をしただけでなく、「長年の審査で不正が検出できなかった理由と対策」についても、発表して欲しいと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ580号より)

 

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