国際的な品質マネジメントシステム規格(ISO9001)の認証を取得している企業の「認証取消」に関する話題です。
まず、ひとつめは、2018年11月15日付のロイター通信が、報道した以下のニュースです。
(以下、引用)
無資格者による完成検査が行われていた日産自動車の全6工場の国内向け生産体制に対し、組織における品質管理の仕組みが適正であることを認める「ISO規格」が10月末付で取り消されていたことが分かった。
(中略)
規格の対象は製品そのものだけでなく、組織の品質活動や環境活動を管理する仕組みにも及ぶ。日産が取り消されたのは組織の品質管理の仕組みに対する認証。
日本で審査を請け負う日本ガス機器検査協会が調査した結果、規格水準に達していないとして10月31日付で取り消した。
輸出分については海外規定違反が認められていないとして取り消していない。
取り消された6工場は日産の追浜工場と栃木工場、日産九州、日産車体の湘南工場、日産車体傘下のオートワークス京都、日産車体九州。
日産広報は「日本での生産、販売には影響はない」とした上で、認証取り消しは「誠に遺憾。すでに国内向け車両の生産を再開していることもあり、 早急な認証再取得に向けて取り組む」としている。
(引用ここまで)
ふたつめの同様のニュースは、神戸製鋼です。
2017年11月21日付の時事通信によると、
(以下、引用)
神戸製鋼所グループの7工場で、品質管理の国際規格である国際標準化機構(ISO9001)の認証が一時停止されたり、取り消されたりしたことが21日までに分かった。
製品データ不正を受けて、民間認証機関の日本検査キューエイと日本品質保証機構などが調査し、品質管理体制が要件を満たしていないと判断した。
神鋼の真岡製造所と大安製造所、長府製造所内にある2工場に加え、グループ企業の神鋼アルミ線材とコベルコ科研で一時停止。
コベルコマテリアル銅管秦野工場では認証が取り消され、最低でも1年は取得申請ができなくなった。
秦野工場では、継ぎ目無し管と外面被覆銅管に付与されていた日本工業規格(JIS)認証も取り消されている。
取引先が一定の品質を担保する条件としてISOやJISの認証を求めることがあり、一時停止や取り消しは生産・出荷に影響を及ぼす恐れがある。
(引用ここまで)
この2つのニュースは、言わずもがなですが、以前の私のコラムでも触れた「日産自動車系の完成検査の不正」と「神戸製鋼系の検査データの改ざん」について、担当したISO認証機関が「取消や一時停止」の決定をしたというニュースです。
ISO9001の国内大手製造メーカーの認証が一般的になってきたのは、1990年代以降ですから、すでに約25年程度経ちますが、当時は、「ISO9001の認証制度は「製品そのものの認証」ではなく「仕事の仕組みの認証」だから「不祥事=認証取消にならない」」という考えが圧倒でした。
つまり、ISO9001は、「仕事の仕組みの認証」ですから、変な言い方ですが、仮に、「製品不良多発」や「検査ミス多発」、「クレーム多発」の事態が起きていても、そのミスやクレームに対しての原因調査や再発防止策がしっかり実施されて、その後の仕事の仕組みが改善されてバージョンアップされる体制にあれば「認証の有効性は担保されている」という発想でした。
しかし、その後、このマネジメントシステム認証制度(ISO認証)が世の中に浸透していくにつれ、いくら「ISOは仕組みの認証」とはいっても「不祥事の発生=仕事の仕組みが有効に機能していないこと」ではないか、という世間の声が多くなりました。
また、「ヒューマンエラー」は「この規格の運用によってマネジメントできる」が「悪意のある不正はこの規格のマネジメントの対象ではない」といった議論もあり、現在も「喧々諤々の議論」がされています。
ただ、感覚的には、「ISO認証なんてペーパー上の認証で、経営実態を反映した審査となっていない」、「認証費用さえきちんと支払っていれば滅多に取り消されない」というような風評も多くなり、最近では「事故や不祥事発生=その社内的影響の程度により一時停止や取消」という認証機関の決定が増えた気がします。
客観的に考えて、確かにISO9001は「製品品質を中心とした広義の経営品質の仕組み」を保証しているのですから「あれだけ長い期間、無資格検査員やデータ改ざんをしていた」ということは、「仕事の仕組みがあっても有効に機能していない」ということは明白ですから、取消や一時停止という判断は当然で、仮に、そのように判断しなかったら、認証機関を認定する認定機関(JAB)にも世間の注目は集まることになるでしょう。
上記記事で気になるのは、
◆日産自動車の広報が「日本での生産・販売に影響がない」と述べている点
◆認証機関の審査方法の改善内容
です。
前者は、「ISO9001がなくても販売に影響がない=ISO9001の世間の認知度は低い」と広報担当者は見ていることになるのですが、社会が「ISO9001を取り消されるような会社の体制は信用ならない」と認識するようにならなければ、まだまだ「このISO認証制度は社内制度として機能していないな」と思います。
また、後者については、従来なら「審査はサンプリングですから、必ずしも結果に問題ないということを保証しているわけではありません。我々は仕組みの審査をしているのです」という認証機関的言い訳が成立しました。
しかし両社とも「長期間にわたって、しかも、広範囲で不正が実施されていた」のですから、認証機関が「審査はサンプリングです」といったところで「何年も、しかも多くの工場でまったく不正のかけらも気づかなかったのであれば、この審査の有効性ってあるんですか?」となってしまいます。
つまり「不祥事がニュースになる前に認証機関が不正を見つけた事例」が、たまにはなければ、「この認証制度は性善説過ぎて悪意のある不正を見つけるという観点では意味がほとんどない」ものになってしまいます。
ISOマネジメントシステム認証制度の将来を考えた場合、
・エンドユーザー、一般消費者に対する認知度と信頼性向上
・認証審査で不正を見つけられるような審査方法への改善
という観点で、認証機関、認定機関は研究を重ねていく必要があるといえるのでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ569号より)
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