日産自動車の無資格者による完成検査の実施や神戸製鋼所の検査データの改ざんといった「日本の製造業は大丈夫なのか?」というような報道が、ここ最近、相次いでいます。
日本人は、勤勉で、まじめで、誠実といわれ、その民族的な特性があるからこそ、ものづくりにしても、サービスの提供にしても、仕事の質が高く、きめ細かく仕事が管理され、「ジャパン品質」がユーザーや消費者から信頼されてきたことは、間違いなく言うまでもありません。
製品やサービスの不良や不具合が発生しても、きわめて真摯にそれと向き合い原因を追究し、再発防止をありとあらゆる仕事の中で繰り返してきたことで、組織のノウハウが蓄積され、業務の質が格段に向上してきたわけです。
けれども、最近の企業不祥事は、日本人の特長である「まじめで誠実」という部分を揺るがしています。
要は「嘘がある仕事」を平然と、しかも、長期間にわたって、組織ぐるみでやってきているのです。
日産自動車にしろ、神戸製鋼にしろ、まだ、問題の真の原因究明段階なので、何とも言えませんが、報道されている経営トップの会見や現場の声からの印象は「ひどいことをしてしまった」という感覚やそれに対する謝罪の意識は、薄い感じがします。
さて、仕事柄、私がこれらの不祥事で関心があったのは、
◆ISOマネジメントシステム監査(内部監査や第三者における認証審査)はきちんと実施されていたのか
◆第三者認証機関や認定機関の対応
です。
前者においては、第三者審査であれば、少なくとも年1回の監査が実施され、結果として「審査報告書」が作成されます。
審査報告書には、「マネジメントシステムの適合性及び有効性に関する記述」を必ず含めることになっており、通常は、
◆顧客要求事項及び法的及びその他の要求事項を満たすために必要なマネジメントシステムは有効に機能していた
◆内部監査及びマネジメントレビューのプロセスは有効に機能していた
といった文言が、審査報告書には結論として記載されています。
しかし、今回の不祥事では、顧客要求事項はもちろん、法規制違反もしていたと思われる状態ですから、「マネジメントシステムが有効に機能していた」とはとても認められませんし、「経営者によるチェックや内部チェック機能も果たしていない」わけですから「内部監査及びマネジメントレビュープロセスも有効に機能していなかった」ことになります。
今後、第三者審査を担当した認証機関は、これらに関して「審査の信頼性」や「審査の精度向上」という観点より「なぜ、審査の中で、気づけなかったのか?」についての検証が行われていくはずです。
私が懸念しているのは「第三者審査の中ではこれらの不正は見つけることがそもそも不可能だった」という結論を第三者認証機関が出すことです。
仮に、そのような結論を出すとしたら「ISOマネジメント審査の社会に対する価値を一部否定すること」になると思います。
確かに、認証機関は「国家権力に基づく捜査機関」ではありませんので、審査の中で確認できることの限界はあります。
また、審査対象の組織全体が一丸となって「事実を隠そう」とすれば、審査の中で見抜くことは無理でしょう。
ただ、例えば、無資格検査員の件に関しては、業務の現場で、インタビューをすれば、検査者と印鑑の名前が違うことに気づいたかもしれません。
それと、内部監査やマネジメントレビューのあり方も、組織は再考するべきでしょう。
報道では、不正が行われていた期間は長期化しているわけで、内部監査で不正に気づけなかったということは、内部統制が機能していないことになります。内部監査員の質、監査方法などについて、しっかり改善してもらいたいです。
後者の「第三者認証機関や認定機関の対応」も気になります。
感覚的な話で恐縮ですが、聞くところによると、このようなISOマネジメントシステム認証を受けている企業の不祥事が発生しても、以前より、認証機関や認定機関への「問い合わせ」や「苦情」は少ないそうです。
このことは、
◇社会がISOマネジメントシステム監査制度を知らない
◇社会がISOマネジメントシステム監査の信頼性を期待していない
という状況かもしれません。
私は仕事柄、こうした企業不祥事(不正や過失的なミス)が発生すると当該企業のウェブサイトをまずチェックします。
そして、認定機関のウェブサイトで「適合組織情報」を検索し、ISOマネジメントシステム認証を受けている企業であったなら、担当した認証機関のウェブサイトとその認証機関を認定している認定機関のウェブサイトを見に行きます。
たいていは、不祥事を起こした企業のウェブサイトでは、記載内容は不十分であったとしても、不祥事の発生の事実はもちろん、経緯や問題の調査結果、原因、謝罪、賠償といったことが公表されているのでわかります。
しかし、認証機関や認定機関のウェブサイトには、まず、これらに関する情報は、現状どんな状況(調査確認中)なのかを含めて何も出てこないです。
ちなみに、会計監査の世界では、会計監査法人が監査を実施しますが、粉飾決算など企業の不正会計が発覚しても、担当監査法人は、そのことについて、私の知る限り、ウェブサイトで公表をしていない気がします。
消費者目線で捉えた場合、第三者機関は、組織不祥事発生後に、監査の妥当性やそれらに対する見解、調査状況といったことをできるだけタイムリーに公表する仕組みにしなければ、「社会の中で不必要なもの」として価値を失っていくのではないかと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ563号より)
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