北海道鶴居村が「ニセアカシア」(和名:ハリエンジュ)を釧路湿原国立公園内の村有地に植樹し、環境省が「生態系を侵す恐れがある」として、鶴居村に原状回復を要請したという報道(201782日北海道新聞)がありました。

 

 

この報道によると、

◆鶴居村は、2017611日に、森林整備の一環としてニセアカシア600本を村有地に植樹した

◆ニセアカシアは、北米原産のマメ科の落葉樹で繁殖力が強く、草地で増えやすい

◆ニセアカシアは、ミツバチが蜂蜜をつくるために蜜を集める「蜜源植物」である

◆植樹した場所は、湿原中心部の天然記念物指定地域の近く

(ヨシ原が広がる湿原の天然記念物指定地域から300メートルほど離れた丘陵地)

◆植樹したニセアカシアは、樹齢23

◆植樹した場所は、潮風が当たる痩せた土地のため、長年木が育たなかった草地

◆植樹した場所には、過去にシラカバやミズナラが植樹したが根付かず枯れた

という経緯のようです。

 

 

ちなみに、ニセアカシアは、1873年に渡来し、街路樹や公園樹、砂防などに使われているので、日本人にはなじみ深い樹木です。

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法律的な観点で調べてみると、釧路湿原国立公園は、「国立公園」ですから、管理は「国定公園や都道府県立自然公園」と違って環境省になります。

管理に関する法律は「自然公園法」になり、釧路国立公園は、エリアによって「特別保護地区、第1種特別地域、第2種特別地域、第3種特別地域、普通地域」に区分されています。

http://www.bes.or.jp/parkmap/files/04-kushiro.pdf

 

 

今回、鶴居村が植樹を行った村有地の地種区分がわかりませんが、地種区分によって、規制基準レベルは異なります。

ただ、いずれにせよ、「国立公園の風致景観の維持のため、土地の形状変更、工作物の設置、木竹の伐採など自然環境を改変する各種行為が制限されている」わけなので、環境省への届け出は必要だったと思います。

 

 

北海道新聞の報道からは、「鶴居村が自然公園法に基づく環境省への届出」を行っていたのか不明ですが、おそらく、自治体が主催している事業ですから、届けはしていたのでしょう。

ポイントとなるのは「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」と「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」の関係でしょう。

 

 

前者の「外来生物法」では「ニセアカシア」は、「特定外来生物」に指定されていません。

しかし、後者の「生態系被害防止外来種リスト」には、ニセアカシアが入っているのです。

では、「生態系被害防止外来種リスト」ですが、これは、「環境省と農林水産省が、平成24 年度から有識者からなる会議を設置してリストアップした外来種リスト」になります。

 

 

そもそも、この「生態系被害防止外来種リスト」は、平成2210月に名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議」で採択された「愛知目標」がおおもとです。

「愛知目標」とは「2020 年までに侵略的外来種とその定着経路を特定し、優先度の高い種を制御・根絶すること」などで、それを受けて、国は、平成249月に「生物多様性国家戦略2012-2020」で「外来生物法における特定外来生物だけでなく我が国の生態系等に被害を及ぼす恐れのある外来種リスト」を作成することを閣議決定したわけです。

 

 

つまり、「ニセアカシア」は「特定外来生物」ではないが「生態系等に被害を及ぼす恐れがある外来種リスト」には入っており「国立公園内の植樹種としては不適切」ということなのです。

 

 

鶴居村は、環境省からの「原状回復要請」に対して「認識不足だった」と反省しています。

確かに「国立公園内の村営地を管理する立場」としては「認識不足」は残念ですね。

マネジメントシステム的に言えば「村営地管理の担当職員に必要な力量が担保されていなかった」ということになり、力量管理に改善があります。

あと、気になるのは「鶴居村が環境省に届出した際にニセアカシアを植樹すること」を届出していたかどうかです。

環境省は、全国に32カ所ある国立公園について、「生態系被害防止外来種リスト」に登録された植物が植樹や植栽されていないかの確認要請をするべきでしょう。

また、併せて「生態系被害防止外来種リスト」に登録される以前にリストアップされた木種が植樹されたケースがないか、あった場合は、今後どうするのか、といったことを環境省は指導監督するべきでしょう。

 

 

それにても、釧路湿原国立公園は、かつては「開拓が困難な不毛の大地とされていましたが、時代とともに価値観が変わり、昭和55年に日本で最初のラムサール条約登録湿地となり、昭和62731日には、国立公園に指定され、貴重な「釧路の観光資源」になりました。

国立公園指定から30周年の年に、ミソがついてしまいましたがニセアカシアの代わりに、鶴居村は何を植樹するのだろう?と気になりますね。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ553号より)

 

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