組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISO認証制度がある。

 

 

このISOマネジメントシステム審査について、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

 

今回のテーマは、「適用範囲と認証範囲(EMSにおける営業所の場合)」について。

 

 

「適用範囲と認証範囲」については、組織が第三者機関から認証を受ける場合は、非常に重要なので、類似ケースについて何度か触れていますが、今回も考察してみたいと思います。

 

 

ISO14001(環境マネジメントシステム)における「適用範囲と認証範囲」について、ISO140012015年版説明会後にJABが公表しているQ&Aでは、以下のように述べられています。

 

 

(以下、JABQ&Aより引用)

「適用範囲と認証範囲」

<質問>

組織が適用範囲の一部で認証を取得したいと希望する場合、どのように考えるべきか。

 

 

<回答>

組織がISO 14001 を適用している範囲で認証を取得するのが望ましい形である。

ただし、状況によって限定した範囲で認証を受ける場合もありうる。

例えば、本社と複数の工場に対しISO 14001 が適用されている場合、規格への適合性に影響がないなら、一部の工場のみで認証をとるということもありうるだろう。

しかし、環境負荷の高い工場を認証範囲としないとしたら、そのような認証は利害関係者に対し「期待される成果」を実現しているとはいえないだろう。

(引用ここまで)

 

 

上記の「JAB見解」は、「一般論」を述べていることは自明でしょう。

上記から言えることを列記すると、

◆適用範囲と認証範囲は、必ずしも一致するとは限らない

◆適用範囲と認証範囲は、必ずしも整合させる必要はない

◆認証範囲が適用範囲の一部に限定されていても、規格への適合性に影響がなければ、認証を取得することはあり得る

◆環境負荷の高い部門やサイトが認証範囲から外れていた場合は、利害関係者に対し「期待される成果」を実現しているとは言えない

→つまり、いわゆる「カフェテリア認証」は、規格の意図に反しているといえるだろう

 

 

といったことは「JABの公式見解」から読み取れるでしょう。

 

 

では、ISO14001の認証に関して、「認証を取得したい組織」と「組織を審査する機関」はどのように考えるべきか、以下のケースで考えてみたいと思います。

 

 

【事例】(組織の背景)

・金属加工業

・サイトは、本社、工場2カ所、営業所が5か所

・認証範囲は、本社と工場2カ所

・主要顧客は大手電機メーカー

・組織は、大手電機メーカーの部品供給先という存在

・大手電機メーカーからは環境マネジメントシステムの適用を求められている

・全社従業員は、約500

・そのうち、5か所の営業所の従業員は、合計で30

・組織は、「認証コスト」をできるだけ抑制したいと考えている

→そのため認証範囲から営業所を外している

 

 

このようなケースの場合、認証機関は、

・組織が環境マネジメントシステムが適用されている範囲を確認する

・適用されている範囲は、全社であったが認証範囲は、営業所を除外している

 

 

この場合は、機関は、

・営業所が認証範囲から除外されていることの要否をまず検討する

ことが求められます。

 

 

「環境マネジメントシステムは全社で適用しているが、認証範囲から営業所を除いている」

という場合は、機関は、「認証範囲を限定している理由」を確認する必要があるでしょう。

組織が「経済的な理由」を「除外理由」とした場合は、除外理由として「適当ではない」とかんがえるべきでしょうけれど、機関が「営業所の除外は不適切」とは、ひとくちでは言えないでしょう。

機関の「審査ポリシー」と照らし合わせて、どうするか決めるべきで、そうなると、「適用範囲の一部を認証範囲とする場合のガイドラインを明確にしておく必要」はあるでしょう。

 

 

この場合、「組織が全社で環境マネジメントシステムを適用している」ことは、認証審査の中では、

◇認証範囲から除外されている営業所に環境方針が周知され、目標管理もされている

◇営業所に対しても内部監査が実施されている

◇マネジメントレビューの対象となっている

といったことは、認証範囲の審査の中で、事務局に対する審査の中で確認することができるでしょう。

 

 

営業所の機能が「単なる顧客からの御用聞きで、製品仕様や納期に関する決定権はほとんどない」ということであれば、「環境マネジメントシステムを導入することによる期待される成果」に影響はほとんどない、つまり、組織の「認証範囲限定の本音」は「経済的理由」だったとしても、規格要求事項への適合性にはほとんど影響がないといえ、認証を組織に与えることは可能でしょう。(後編に続く)

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ549号より)

 

【好評発売中!】
『ちょロジ ニュースで学ぶ7
つの思考法』(パブラボ刊)

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4434176552/bloglogcom-22/ref=nosim/

【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】
(パソコンでアクセスしている方)