2017年6月30日付の読売新聞によると、
「法科大学院の退潮が止まらない」
という。
記事によると(以下、記事を抜粋編集)
◇2018年度から青山学院大、立教大が学生の募集を停止する
◇2018年度に学生の募集を行う大学院はピーク時のほぼ半数の39校に減少する
◇法科大学院関係者からは「撤退する大学院は今後さらに増える可能性がある」との見解
◇募集停止理由は「現在の学生数では黒字が見込めない」こと
◇青山学院大学法科大学院は、2006~16年に計71人が司法試験に合格した
◇青山学院大学法科大学院の定員は開校当時は60人で現在は18人(入学者は12人)
だという。
私のブログでも、2004年の新司法制度発足当時から、この件については、何度も触れてきていますが、結果論としては、司法制度改革はうまくいかなかった点が多いといえるのでしょう。
分類等せず、思いつくまま列挙すれば、
◆法科大学院からの司法試験合格者は、増えなかった
(法科大学院からの合格者は、計画では7割程度、現状は2割程度)
◆弁護士が就職難
(弁護士を活用する場があまり増えていない)
◆バイパスルートの予備試験合格者の方が法科大学院経由の合格者よりレベルが高い
◆法科大学院に進学するより予備校で勉強して予備試験を受ける選択をする人が増えた
・・・
といった点が挙げられるでしょう。
要は「幅広い学識ある弁護士育成という理想」があまり実現できなかったことでしょう。
私は、法科大学院で授業を受けた経験があるわけではないので、想像の世界ですが、「幅広い学識」は、法科大学院の3年間、あるいは2年間では身に付くものではなく、「その人の性格や価値観、人生観に左右されるもの」だと思います。
ざっくりいえば、旧司法試験では、司法試験合格のために、何年も浪人する人が増え、仮に合格しても「法律バカが弁護士や検察官、裁判官になっても、社会に寄り添った法曹家に成れないので、現制度が生まれた」ということが建前上の理由でしょう。
けれども、仮に、「法律原理主義ではなく社会的背景や価値観の変化といった現実社会にマッチした法曹家育成」を目指すのであれば、それは、例えば、ドラスティックな「試験制度改革」が必要だったと思います。
つまり、法科大学院在学中に、法律知識について、一定の成績を修めた人なら、本試験では「事例演習」や「模擬裁判」、「小論文」といった「実務ベースのみの試験」で、合格者選別するべきでしょう。
現状は、「法科大学院経由の合格者より予備試験経由の合格者が優秀で市場(弁護士事務所など)で必要とされているというのであれば、そもそも「制度設計自体」が間違っていたということです。
要は、「旧制度で大きな問題はかった」といえるわけです。
逆に言えば、「旧制度で問題とされた法曹家」は、そもそも性格や人格的に「法曹家として不適応者」だった少数派だっただけで、司法制度が根本的にダメなわけじゃなかったのかもしれません。
だとすれば、ペーパーテストは優れていても、性格や人格に問題がある人を「最初の試験の段階で振り落とす」か、あるいは弁護士、検察官、裁判官といった職に就いた後に振り分けて「再教育を施すシステム」を設けて、法曹家の適格性を維持する仕組みにすればよかったわけで、「新司法制度」を作る意味はなかったわけです。
そのようにいろいろと考えていくと、
「そもそも、幅広い学識を持った法曹家育成のために新司法制度は必要だったのか」
と思います。
もしかしたら、「法科大学院を作ることで教員など雇用の場の拡大」を一部の人が狙っただけなのかもしれません。
いずれにせよ、潜在的なエンドユーザーである私たちや社会、直接的に合格者を必要とする弁護士法人や事務所、検察庁、裁判所が「どのような法律家が必要なのか」を徹底的に議論して、制度を再構築しなければ、今後も法科大学院は淘汰され法曹家への傍流ルートとなり下がり、旧制度に近い予備試験が法曹家への本流ルートとなることは間違いないでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ548号より)
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