少々古い話ですが、2016125日に、朝日新聞が、

「古代エジプトのファラオ(王)ツタンカーメンの黄金のマスクのあごひげ部分を博物館員が過って破損し、不適切な修復をしていた問題で、エジプト検察当局は、エジプト考古学博物館の当時の館長や修復担当責任者ら8人を職務怠慢の罪で起訴した」

という報道をしていました。

 

 

検察によると、

◇科学的、専門的な修復方法を無視し、人類最古の文明の所産を傷つけた

というのが罪に当たるそうである。

 

 

報道では、(以下、引用編集)

◇博物館員らは2014年8月に、展示ケースの照明調節のためにマスクを取り出した

◇ケースに戻す際にひげを根元から折ってしまった

◇強力な接着剤でひげをくっつけたが、接着剤が多すぎてはみだした

201410月と11月に、接着剤が多い部分を金属の道具で取り除こうとした

◇金属の道具による作業でさらにマスクを傷めた

◇ひげの破損と不適切な修復は、20151月に発覚するまで公表されなかった

◇検察は博物館側に隠蔽の意図があったとしている

◇考古省はドイツ人専門家らを交えた修復委員会を発足させ、201512月にマスクは適切に修復された

(引用編集ここまで)

 

 

ということであるから、経緯を知ると、罰金刑など博物館担当者らが罪に問われるのは仕方がないのかもしれない。

 

 

この記事を知った時に、

◆文化財の修復業務を品質マネジメントシステムの観点で考えるとどうなるのだろう

◆文化財の修復業務は、産業分類的にはどこになるのだろう

◆日本の場合、修復作業はどのような人が実施しているのだろう

という点について興味を持ちました。

 

 

マネジメントシステム的には、まずは「設計・開発」に相当する業務は何か?ということになります。

この業務について調べていくと、「修復方法が1から10まで確立している修復」というのはほとんど無いようです。

つまり、殆どの修復作業では、修復案件ごとに、修復方法の企画・開発や工程を計画するので、修復に適した材料選定、材料開発、設備治具の選定や開発、修復プロセスの計画自体が「設計・開発」となりそうです。

 

 

また、国宝や重要文化財についてはわかりませんが、一般的な文化財については、文化庁が実施しする「文化財(美術工芸品)修理技術者講習会」という業務経験が既にあり、2ヶ年にわたって合計10日間の研修会を経て発行される修了証資格があるようです。

 

 

産業分類ですが、「他の分類に属さない製造業」か「その他専門的サービス」が該当しそうです。

ただ、この業務をビジネスと考えた場合、「複製、復元、修復」という似て非なる業務を請け負うことが一般的なようです。

冒頭のツタンカーメンで例えれば、

・黄金のマスク現物のコピーを作る業務→複製

・黄金のマスク現物が無く、データを基に作る業務→復元

・黄金のマスク現物の一部が破損して元の形に限りなく近く戻す業務→修復

ということになるようです。

 

 

この場合、複製業務は、「他の分類に属さない製造業」のような気がしますが、復元や修復となると、「その他専門的サービス」のような感じもします。

産業分類はこのようになりますが、ただ、製作物の対象が「文化財」ということであれば、専門的な知識や力量は、複製、復元、修復とも同じように捉えてもいいのかな、と思います。

 

 

一品ものの修復作業等は、工芸品というより芸術品に近く、「匠の世界」なので、品質マネジメントシステムが少し馴染みにくい分野ではありますが、「ビジネス」として捉える場合、各業務の位置づけをマネジメントシステムで整理することは、重要なことでしょう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ525号より)

 

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