一般的には「マニフェスト」というと、政治家や政党が掲げる政治公約のイメージが強いですが、産業廃棄物を管理する世界では「産業廃棄物管理票」のことをマニフェストと呼んでいます。
マニフェストの役割は、ご存知にように、産業廃棄物の排出事業者から収集運搬業者へ引き渡され、中間処理業者を通じて最終処分場に運ばれ、最終処分されたことが排出者に通知される仕組みです。
要は、業者から業者へ、産業廃棄物とともにマニフェストを渡して行くので、排出事業者は、それぞれの処理終了後に、各業者から処理終了のマニフェストを受け取ることで、委託内容どおりに廃棄物が処理されたかが確認できるわけです。
http://www.shokusan.or.jp/manifest/main/nagare/
ただ、多くの企業に訪問していると、「廃棄物の排出者」という自覚は希薄な会社の方が多いかもしれません。
私なりに、その理由のひとつは、マニフェストの発行実態にあると思います。
本来、マニフェストは、排出事業者が全国にある産業廃棄物協会で購入して、産業廃棄物が発生し、契約を交わした収集運搬業者にマニフェストの必要事項を記入して発行するものです。
しかし、多くの場合は、収集運搬業者が、マニフェストを用意し、必要事項を記入し、複写式の7枚つづりになっている一番上のA票を排出者に渡すからではないかと思っています。
排出事業者自らがマニフェストを購入せず、必要事項を記入しない理由のひとつには、マニフェストの販売単位が大きく通常は余るからではないかと思います。
公益社団法人全国産業廃棄物連合会にウェブサイトによれば、「ひと箱あたり100部で2500円」(希望配付価格)となっているので、産業廃棄物を毎日収集運搬業者に引き取りに来てもらう大きな工場でない限り、「マニフェストが余る」と思われ、だから、収集運搬業者側が宅配便の伝票のように用意するわけです。
「排出事業者に排出者という自覚が薄い」と、収集運搬され中間処分業者に引き渡されたことを確認する意味を持つB2票、中間処理が完了したことを確認するD票、最終処分が完了したことを確認するE票の返送時期に対する関心が薄くなります。
本来は、B2票、D票は、収集運搬業者および中間処理業者が処理終了後10日以内に排出事業者に返送しなければなりませんし、A票の発行からB2票とD票は90日以内、E票は180日以内に返送されてこない場合は、排出事業者は「委託した廃棄物の状況を確認し、適切な措置を講じ、都道府県知事や政令指定都市の市長等に報告する義務」が生じるのですが、この「マニフェストの戻りと日付期限」に関する感覚が薄くなっています。
だから、「B2票、D票、E票が戻ってきた日をA票に記入する」ことになっているのですが、記入はされていないケースが多いし、記入していたとしても「90日、180日以内」という認識も薄く、下手をすると「専門業者だから適切に処理してくれていると信頼しているからそこまでチェックしていません」という認識の企業も多いです。
なお、発行したマニフェストの交付状況は、4月~3月の年度単位で取り纏め、6月30日までに都道府県知事等に提出する義務が排出者にはありますが、これもISO14001やエコアクション21などといった環境マネジメントシステムを企業が導入していない限り、まずやっていません。
ちなみに、上記で書いてきたマニフェストの件は「紙マニフェスト」についてですが、マニフェストには「電子マニフェスト」があります。
排出事業者がマニフェストの交付をすべて電子マニフェストで処理していれば、マニフェストのとりまとめ、つまり、「産業廃棄物管理票の発行状況の都道府県知事等への提出」は必要ありません。
しかし、「電子マニフェスト」の普及は、医療・福祉系を除き、ほとんど普及していないようです。
その理由は、収集運搬業者が電子マニフェストを採用していない場合もありますが、収集運搬業者に渡す「受渡確認票」の存在がある気がします。
せっかく、電子マニフェストに入力することで、紙マニフェストの管理の手間が省けても、紙の「受渡確認票」を発行し、受渡確認票に記載した内容を入力するのは意外と手間で、複写式7枚つづりの方が入力に関しては楽(らく)です。
今の時代「電子化」は本来楽なはずですが、なかなか産廃の場合はそうなっていないのが現状のように思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ536号より)
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