企業や団体等(組織)が経営活動をする中で、環境マネジメントシステムの取り組みは、欠かせないものとなっている。

環境マネジメントシステムとは、環境方針、目的・目標等を設定し、その達成に向けた取組を実施するための組織の管理体制のことをいいます。

 

 

組織は、組織自らの基準を策定し、環境マネジメントシステムを構築・運用しても良いが、より効果的なシステム運用の実現と利害関係者など社会的な信頼性など評価を受けるためには、国際規格等外部機関が定めた規格に基づいた環境マネジメントシステムを採用し、外部機関からの審査・認証を受けることが必要です。

 

 

ちなみに、少々専門的な話になりますが、企業の環境マネジメントシステム審査を実施する場合、その組織の審査に要する時間(審査工数)は、従業員数や環境影響の大きさ(有効要員数及びその産業分野における典型的な組織の環境側面の性質、数及び重要性)に基づいて決定されています。

 

 

※詳しくは、こちらのサイトで規定されていいます。

http://www.jab.or.jp/files/items/common/File/MS3052015V4.pdf#search='IAF+MD5'

 

 

上記サイトの掲載されている基準では、審査工数に根本的に影響を及ぼす組織の環境側面の性質及び重要度に関するカテゴリーは、5つに分かれている。

その5つとは、(上記サイトから引用)

 

 

◇高い

⇒著しい性質及び重要度の環境側面をもっている(通常、幾つかの環境側面において著しい影響がある製造又は加工業務を行う組織)

産業例:

- 鉱業、採石業

- 石油及びガス採掘業

- 織物及び衣類のなめし業

- 紙再生工程を含む紙製造のうちパルプ製造の部分

- 石油精製業

- 化学薬品及び医薬品

- 一次産品生産 金属

- 非金属加工及びセラミックス及びセメントを含む製品

- 石炭利用の発電

- 土木建設及び取り壊し

- 有害廃棄物及び非有害廃棄物の処理、例えば焼却など

- 排水及び下水処理

 

 

◇中程度

⇒中程度の性質及び重要度の環境側面をもっている(通常、いくらかの環境側面において著しい影響がある製造業務を行う組織)

産業例:

- 漁業、農業、林業

- なめしを除く、織物及び衣類

- 板の製造、木材の処理/注入、及び木製品

- パルプ製造を除く、紙製造及び印刷業。

- 非金属加工及び硝子、粘土、石灰などを含む製品

- 一次産品生産を除く、金属合成加工製品の表面及びその他化学的処理

- 機械工学一般に関する表面及びその他化学的処理

- 電子産業用ベアプリント回路基板生産

- 輸送機器製造-道路、鉄道、航空、船

- 非石炭による発電及び送電

- ガス生産、貯蔵、及び配給

- 河川の管理を含む、水の汲み上げ、浄化、及び配給

- 化石燃料の卸売り、及び小売業

- 食品及びたばこ加工

- 海上、航空路、陸路による輸送及び流通

- 通常一般ビジネスサービスの一部である、不動産代理業、不動産管理、産業清掃、衛生清掃、ドライクリーニング

- リサイクリング、コンポスト化、埋め立て(非有害廃棄物)

- 技術試験及び試験所

- ヘルスケア/病院/獣医

 

 

◇低い

⇒低い程度の性質及び重要度の環境側面をもっている(通常、著しい側面がほとんどない組み立て業務を行う組織)

産業例:

- ホテル/レストラン

- 板製造、木材の処理及び注入を除く、木及び木材製品。

- 印刷、パルプ製造、紙製造を除く、紙製品

- 化学製品の一部であるゴム及びプラスチック原料の製造を除く、ゴム及びプラスチック鋳込み及び成型

- 表面処理及びその他化学的処理及び一次産品生産を除く、熱成型及び冷間成型及び金属合成加工

- 表面処理、及びその他化学的処理を除く、一般的機械工学的組み立て

- 卸売業及び小売業

- ベアプリント回線基板製造を除く、電気及び電子機器組み立て業

 

 

◇限定

⇒限られた程度の性質及び重要度の環境側面をもっている(通常、事務所機能のみの組織)

産業例:

- 企業活動及び管理、本部及び持株会社の管理

- 管理する輸送機はもたない輸送及び流通管理サービス

- 通信

- 不動産代理業、不動産管理、産業清掃、衛生清掃、ドライクリーニングを除く、一般ビジネスサービス

- 教育サービス

 

 

◇特別

⇒審査計画作成段階において追加及び独自の考察を必要とするもの

産業例:

- 核

- 原子力発電

- 有害物質の大量貯蔵

- 行政

- 地方自治体

- 環境に敏感な製品及びサービスをもつ組織、金融機関

 

 

(引用ここまで)

 

 

つまり、例えば、自動車製造メーカーや食品加工メーカーが、環境マネジメントシステムの認証(ISO14001など)をウェブサイトなどで公表している場合、その認証審査を実施した審査登録機関(認証機関)は、上記基準等により「環境側面の複雑さのカテゴリーは中程度」として審査工数を決定して審査を実施しているわけです。

 

 

産業毎(事業セクター)に審査工数が大きかったり小さかったりするのは、ふつうに考えれば当たり前です。

ただ、さらに細かいことを言えば、地球環境や社会環境に与える「環境影響」を考えれば、「製品やサービスの設計や企画、あるいは製品やサービスを製造・提供する工程を設計や企画する機能があるかどうかで環境影響の大きさは変わってくるよなぁ」と思います。

 

 

というのも、例えば、事業セクター例では、通信サービスは、「限定」つまり、かなり環境影響は小さいというカテゴリーになっています。

しかし、ポケモンGO(スマートフォン向けゲームアプリ)によるレアキャラ情報による交通渋滞や交通ルール無視、私有地への不法侵入などのニュースを見ていると、物質的(例:化学的物質)な環境影響を生むプロセスがなくとも、社会環境への影響が大きな事業セクターはあります。

 

 

要は、製品やサービスそのものを設計・企画あるいはその製造・提供プロセスを設計・企画する内容次第で環境影響に大きな差が出てくるわけです。

極論を言えば、化学的物質を大量に取り扱っている工場では、環境マネジメントシステムを構築する初期の段階では、極めて複雑で、極めて重要に管理すべきプロセスや適用法規制もゴマンとあります。

しかし、一度システムを構築してしまえば、プロセスや法規制の見直しはあるとしても、どちらかといえば、「きちんと構築したルールを守っているかどうか」がポイントとなるだけです。

 

 

しかし、製品やサービスを企画する事業は、どのようにそれを企画するか、また企画した製品やサービスの社会における影響は、その都度考えなければなりませんから、物質的には、紙とエンピツとパソコンなどの電気が主たる直接的な環境影響ですが、考慮し、管理すべき間接的な環境は場合によっては、青天井になってしまいます。

 

 

ポケモンGOの話題に限定すれば、私もゲームは嫌いな方ではないですが、これだけ日常的に社会問題となっていることがニュースに取り上げられるようだと、社会や一般消費者は、これらのサービスを企画、提供している企業の管理体制はどうなっているんだ?と関心を持つのは当然で、品質マネジメントや環境マネジメントシステムといったマネジメントシステム認証の世界で考えた場合、上記で引用した審査工数決定要素以外の要素も加味しなくては、きちんとその企業の考え方は聞きだすことができず、自信を持って認証審査結果を世間に公表することもできないよな、と思った次第です。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ508号より)

 

 

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