監査をしていて難しいなぁ、と感じることがいくつかある。

そのひとつに

「ルールを知らない人にルールに適合していないことをどのように伝えるのか」

という問題がある。

 

 

日常生活のたとえ話でいえば、「路上喫煙禁止区域での喫煙」について、

「ここは路上喫煙禁止区域が条例で決まっているので喫煙を止めなさい」

というのはカンタン。

しかし、「条例で決まっているからダメ」という止めさせ方以外で、「すみません、直ちにやめます」と納得しながら同意させることは難しい。

 

 

企業監査の話でいえば、たとえば、「目標」に関するルール(注:説明上、少し脚色します)には、

◇目標は方針と整合していること

◇目標は達成度が把握可能なこと

◇目標を達成するための手段(活動)を計画すること

◇目標達成の活動の計画には、責任者、スケジュールを明確にすること

◇目標や目標達成の活動計画は進捗を監視すること

◇進捗を監視した結果、未達成の場合は評価し、適宜対策をとること

といったことが決められている。

 

 

被監査側の対応者が「ルールを知っている」場合は、楽だ。

監査した結果、ルールから逸脱している部分があれば、指摘して、「激しく同意」か「ホンネは、めんどくさいなぁとしぶしぶ」なのかは別にして、すぐに不適合箇所について、納得を合意してもらえる。

 

 

しかし、被監査側が「ルールを知らない場合」は、方法論としては、

1)ルールブック(規格書など)をもとに不適合の判断をくだし、説明する

2)たとえ話をしながら、出来ていないと仕事がきちんと管理できないことを理解してもらう

といったパターンが考えられる。

 

 

杓子定規に言えば、

審査を受けるにあたって、「ルールを知らない方とは議論するに値しない」、「ルールを覚えてくるまで審査を受けないでください」などと突き放したいところである(笑)

また、「審査に徹すれば」、上記の1)のように「規格(ルール)ではこのように決まっているから・・・」と淡々と説明し理解を得ればよい。

 

 

ただ、厄介なのは、このケースの場合、被監査側は、不適合であることを真から理解していない。

だから、「審査をパスするために書類を作ればいいんでしょ」となり、結果的に、審査のための書類作りをして、仕事の仕組みはどんどん形骸化する。

 

 

したがって、「ルールを盾に、不適合であることを説明」するよりも、時間をかけてでも、「たとえ話をしながら“なるほど、確かに問題だね”」と不適合であることを納得してもらう手をとる。

 

 

けれども、「審査の場は、嵐が過ぎ去るのを待てばよく、この場を早く乗り切りやり過ごしたい」という雰囲気が漂う職場では、そもそも「指摘されること自体が不愉快」だから、一生懸命、ルールを持ち出さずに理解を求めようとしても、反応がない。

かといって、「ルールでは・・・」と杓子定規に指摘しても、「審査のための書類を作ればいいんでしょ」という双方のコミュニケーションに不穏な空気が流れてしまう。

 

 

ルールを知らなくても「改善に前向きな会社」なら、監査側が伝えるスキルを上げ、努力すればいいのであるが、そうでない組織の監査では、本当に困る。

職務としては「たんたんと監査する」ことでその役割は果たすが、認証制度の健全な成長と導入企業における有効な活用、という観点で捉えると、悩ましいな、と思う。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ414号より)

 

 

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