2016720日付の日本経済新聞が、

(以下引用)

「東芝の会計不祥事を巡り、個人株主が19日、東芝に対し会計監査を担当した新日本監査法人の責任を問うため、約115億円の損害賠償請求訴訟を起こすよう求める書面を送付した。

到達後60日以内に東芝が提訴しない場合、株主代表訴訟を東京地裁に起こす方針」

(引用ここまで)

と報じていました。

 

 

この報道を聞いたときに、個人的には、

「株主が会計監査法人を訴える時代がようやく来たか」

と思いました。

 

 

おさらいをしておくと、「株主代表訴訟」とは、

「株主が会社に代わって取締役等を相手に損害賠償を求める訴訟。取締役が違法行為を行ったり、著しい判断ミスで会社に損害を与えたにもかかわらず、会社がその責任を追及しなかった際、6カ月以上株式を保有している株主(株式公開会社の場合)であれば誰でも、その取締役等に対して提訴ができる」

制度である。

(注:取締役等とは、発起人、設立時取締役、設立時監査役、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人、清算人)

 

 

 

いままで、会社に多大な損害を与えた違法行為や経営判断ミスによる株主代表訴訟は、ヤクルトやダスキン、アートネイチャー、アパマンショップHDなどニュースになった事例も多いですが、多くは、取締役に対してで、会計監査法人を被告としての訴訟は、私は聞いたことがありませんでした。

 

 

訴訟手数料が、199310月の商法改正で一律8200円になってから、訴訟が活発化したと言われてはいますが、株主代表訴訟で株主が勝訴しても弁済する損害金は、会社に入り、株主には直接入りませんから、弁護士費用を考えれば、経済的にも余裕がなければ、なかなか株主代表訴訟は起こせないと思います。

 

 

会計監査法人の役割は、計算書類や決算報告書に虚偽が無いかチェックすることだ。

したがって、会計監査結果は、マネジメントシステム監査と違って、監査した機関の会計書類等の適切性を保証するものである。

したがって、「虚偽を見つけることができたのに見つけられなかった」場合は、もっと会計監査法人の責任が問われてよいと思っていた。

 

 

今回の東芝のケースで、株主側の主張は、

「新日本監査法人は利益水増しなどを監査で見つけることができたのに、東芝の役員に説明を求めるなど日本公認会計士協会が定める指針に沿った対応をせず、会計不祥事を見逃した」

としているが、まさにその通りだろう。

(注:請求額の115億円の内訳は、東芝が納付した課徴金約73億円と新日本監査法人に支払った監査報酬約30億円などを合わせたもの)

 

 

乱暴な意見かもしれないが、会計監査だけでなく、監査法人による監査は、「第三者監査」といいつつ、監査法人の選定、監査法人に対する報酬は、組織がすることだから、「本当の意味での第三者といえるか」という点に関しては、このような不祥事が発生するたびに、世間から疑念の声が上がるのは当然だと思う。

余談であるが、舛添元都知事の収支報告書について、「第三者の目で見てもらう」と二人の弁護士が選定され、弁護士による記者会見が行われた際に、記者が「知事が自ら選定した弁護士にチェックをしてもらっても第三者の目と言えるのか?」と質問し、佐々木善三弁護士(マムシの善三)が「第三者とはそんなもの」的回答をしていましたが、「誰かがチェックするためには費用が発生する」ので、監査される側が自らの適切性チェックの費用を自ら選定して支払う仕組みは、ある程度仕方がないのかな、と思う。

 

 

ただ、その代り、「チェックした内容がずさんなものだったら、弁済してもらいますよ」という今回のような訴訟は、監査法人と監査される組織が「ずぶずぶでないこと」をより鮮明、かつ、双方が緊張感をもって対処できるし、世間の信頼も増すと思うので、いい流れだと思う。

 

 

今回の訴訟に対し、東芝の対応および裁判になった場合の行方に注目したい。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ499号より)

 

 

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