社会を揺るがす企業不祥事のニュースが後を絶たない。

最近では、三菱自動車が燃費データ、東亜建設工業が工事データを改ざんし、国に虚偽報告した。


これら2社の不祥事は、いずれも、組織内に「失敗できないプレッシャー」が背景にあり、現場が不正行為に手を染めたといわれている。

不祥事の根本的な原因究明や組織改革は、それぞれの組織にゆだねられるところなので、私たち消費者は、今後の動向を注視していく必要があるだろう。


少し切り口を変えて、その企業が提供する製品やサービスに対して、一般消費者をはじめ利害関係者が、品質や環境への取り組みを判断する拠り所のひとつに「ISOマネジメントシステム認証、認定制度」があります。


マネジメントシステム認証制度は、その企業が提供する製品やサービスの良し悪しを評価するものではありませんが、その企業が製品やサービスの品質を日々管理し、改善したり、環境への配慮を日々向上させる努力をし続けることができるかどうかを確かめることにあります。


つまり、これらのマネジメントシステム(品質や環境に関する組織運営の仕組み)が備わっていれば、社会のニーズや意識の変化を正確にとらえて対応することができるので、製品事故など、万が一の事象が発生しても、迅速で的確な対応で消費者や環境への影響を最小限にくい止めることができるのです。


ちなみに、三菱自動車と東亜建設工業は、ISO(品質、環境)の認証を受けています。

マネジメントシステム適合組織が検索できるウェブサイト(2016610日付JABウェブサイト)で検索すると、三菱自動車と東亜建設工業の「品質ISOISO9001)」の登録情報は出てこないので、認証の一時停止が掛かっているようです。


一方、「環境ISOISO14001)」の認証に関しては、2社とも登録情報が確認できます。

三菱自動車を認証している認証機関(JARI-RB)のwebサイトをみると、

(以下引用)

ISO14001:2004「環境マネジメントシステム」の認証登録をしております三菱自動車工業株式会社及び三菱自動車エンジニアリング株式会社の車両燃費試験の測定方法の不正が報道されております。

この件につきまして、事実関係を調査しましたが、環境マネジメントシステム上の不適合と特定できる事実は確認されておりません。」

(引用ここまで)

と発表されています。

(※私が確認した範囲では、東亜建設工業を認証している認証機関のwebサイトには、工事データ改ざん事件に伴う認証情報のお知らせは見当たりません)


ここで少し「あれ?」と思ったのは、いずれの認証機関も、

「品質の認証は一時停止(おそらく)しているものの環境の認証は停止されていない」

ということです。

その理由は「環境マネジメントシステム上の不適合はない」ということのようです。


ただ、ISO14001の規格には、外部とのコミュニケーションについて、組織(企業)は、

「伝達される環境情報が,環境マネジメントシステムにおいて作成される情報と整合し,信頼性があることを確実にする」

という要求事項があります。


また、認証機関に対する要求事項(ISO17021-1)では、

「依頼者の認証されたマネジメントシステムに,その有効性に関する要求事項を含む認証要求事項に対し,常態化した不適合又は深刻な不適合があった」

場合には、認証の一時停止をすることが要求されています。


つまり、組織に対して、「環境情報は信頼性があることを確実にする」ことが要求されており、今回の2社に関しては、おそらく「うっかりしていました」レベルのデータ改ざんではなく、信頼性を揺るがすもので、しかも「長年にわたって改ざんしていた」という報道から考えると「常態化した不適合であり、深刻な不適合」ではないかと思います。


したがって、あくまでも私見ですが、「環境マネジメント上の不適合と特定できる事実はない」という認証機関の判断は、「本当にそういえるのか?」という点で、少なくともwebサイト上の記述からは、よくわかりません。

仮に「問題ない」というのであれば、「認証機関が組織を調査した概要」ぐらいは、公表し「こうだから環境マネジメントシステム上、問題ない」と説明があっても良いのではないかと思います。


ISOマネジメントシステム認証と社会とのかかわりというのは、一般には、まだまだその存在と意義が浸透しているとはいえません。

今後、認証制度が広く認知され、信頼性をより確保するためには、個人的には、このような企業不祥事が発生した場合は、認証継続をするにしても、認証の一時停止をするにしても、「このような調査結果からこうこう判断した」という認証機関の説明責任がもっとあっても良いのではないかと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ493号より)



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