2016年4月7日の記者会見で、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)は「退任を決意した」と述べ、マスメディアでは「日本コンビニの親 突然の退場」と話題になっている。
鈴木会長の突然の退任理由は、「会社が提案したセブン―イレブン・ジャパンの社長交代人事案が否決される異例の事態となり、混乱の責任を取った」ということらしい。
メディアの情報を整理すると、
◇鈴木会長は、在任が7年と長期にわたる井阪隆一社長(58)の退任と、後任に古屋一樹副社長(66)を充てる人事案提案した
◇取締役会では、上記人事案は否決された
(15名の取締役のうち、反対6票、賛成7票、白票2票の結果となり、会社提案は成立に必要な過半数8票を確保できなかった)
◇鈴木会長は「反対票が社内取締役から出るようだったら、私が信任されてない」、「井阪社長を信任して、それで私がやっていくのは将来に禍根を残す」と、辞任の理由を説明した
◇創業家の伊藤名誉会長も人事案に反対した
という流れのようである。
つまり、従来の日本型の取締役会であれば、会社提案は、99%は「しゃんしゃんしゃん」で可決しました。
しかし、今回は、社外取締役が中心となり、会社提案の人事案に反対を示した。
ただ、この結果から見れば、「企業統治が機能している」と言えるのだろう。
今回、社外取締役が、会社提案の人事案に反対した理由は、
◇井坂社長就任後最高益を続けている社長を交代させる理由がない
◇セブン&アイの大株主である投資ファンド「サード・ポイント」からの書簡に影響された
◇創業家の伊藤名誉会長も人事案に反対している
といった点があるようである。
特に、大株主のサード・ポイントの書簡は、
「最高執行責任者職を解くうわさを耳にし、大きな懸念を持っております」
「鈴木会長が、御子息である鈴木康弘氏を、将来のセブン-イレブン・ジャパン社長に、そして、やがてはセブン&アイ・ホールディングスのトップに就ける道筋を開くという、別のうわさも耳にしています」
という内容のものを取締役に送ったといわれており、これも反対票につながったのだろう。
鈴木会長としての人事案の「ホンネ」がどこにあるのかは、わからない。
しかし、
「経営に関してはまかせる」
「今まで一度も反対されたことはなかった」
とされた伊藤名誉会長にも反対されたことが、退任決断の大きな要素になったと思う。
鈴木会長の肩を持てば、
「最高益を続けている今こそ、攻めの姿勢で新しい発想で経営改革をすべき⇒新社長交代」
という考えはありである。
しかし、「7年間最高益を継続している」「新社長人事案の後任は井坂社長より8歳年上」「鈴木会長の次男を将来社長にする道筋とのうわさ」といった情報から株主や取締役に賛成されなかったこともある意味、しょうがない。
あと、これまで鈴木会長に経営を任せてきた「伊藤名誉会長の気持ち」を勝手に想像してみると、
◇元々の本業のイトーヨーカ堂は、持ち株会社の子会社になった
◇イトーヨーカドーのハトのマークよりセブン&アイのロゴが多く使われるようになった
◇グループの柱が、鈴木会長が主導したセブンイレブンになっていった
◇鈴木会長が世間からカリスマ扱いされるようになり自分の存在が薄くなった
と言った点が、徐々に、鈴木会長との「二人三脚体制」にすきま風が吹いてしまった原因ではないだろうか。
鈴木会長の入社経緯からして、鈴木会長は、入社以来約50数年間、伊藤名誉会長に褒められたい一心で会社経営に取り組んできたと思う。
しかし、鈴木会長がやってきたことへの一抹の寂しさと疑心暗鬼から、今回の「反対」となったのだと思う。
今回の出来事は、上場企業としての企業統治が機能していると捉えられる反面、「伊藤-鈴木体制」で築き上げてきたセブン&アイホールディングスの終焉ともいえるのであろう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ484号より)
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