組織の環境マネジメントシステムを監査したり、指導していると、
「環境に関する苦情は特にないんですよね」
という回答をされる事務局は、私の経験では、かなり多い。
この場合、
◇単純に、環境に関する苦情が、本当に存在しない
◇環境に関する苦情の概念が狭い
◇環境に関する苦情が事務局に上がってくるプロセスが機能していない
というケースが主な理由である。
「環境に関する苦情が本当にない」場合は、組織としては、一見、結構な話であるが、
「マネジメントシステムの妥当性や有効性という観点」
で捉えると、環境の苦情に関するマネジメントシステム運用例がない、といえるわけで、いじわるっぽい質問をするならば、
「マネジメントシステムの有効性はどのように評価しましたか?」
と聞いたとすると、組織はどのような考え方を示すのだろう??という点が気になる。
経験上、「環境に関する苦情がない」というケースは、
「環境苦情の概念が職員全体的に狭く、苦情という認識が薄い」
「環境苦情を受け付けて組織として対応するシステムが確立していない」
という事例が多いように思う。
上記の後者に関して、事務局として、
「環境苦情に関するプロセスが有効に機能しているかどうかは、定期的に、ダミーの苦情を入れて、情報が事務局まできちんと上がってくるか検証しています」
という組織は立派だと思うが、一般消費者を顧客とする産業で、かつ、大企業でないと、そこまで、やっていない場合はほとんどであろう。
上記の前者については、先日、ニュースで面白い事例を知った。
それは、静岡マツダが制作したテレビコマーシャルに関する苦情である。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150808-00000017-it_nlab-sci
このニュースの概要は、
◇静岡マツダは2015年8月7日、テレビコマーシャル制作の過程で、撮影車両が一般車両などの安全走行を妨げる走行を行っていたとして謝罪した
◇5月25日に静岡県道127号線(通称:西伊豆スカイライン)で行われた撮影が、「公道での撮影にも関わらず道路封鎖無し、撮影車は対向車に構わず車線をはみ出してくる。大手が公道でこんな事していいの?」などと指摘され発覚した
というもの。
この苦情は、「近隣住民に対する影響」として捉えることができるから、当然、
「環境に関する苦情の一例」
であることは疑う余地がない。
しかし、このような事例が「環境に関する苦情」として組織の要員全体で、認識されているか否か、という観点においては、微妙な組織が多い。
実態として、
「コンプライアンスの観点で、苦情は受付し、近隣住民への謝罪と再発防止策を講じています」
ということならば、マネジメントシステム的には、「結果論としてOK」である。
残った問題点は、
「このような苦情を環境に関する苦情として捉えておらず認識が欠如している」
という点なので、マネジメントプロセスの有効性という観点で、組織は是正処置対応を図っておけば、OKである。
個人的には「ダイレクトに環境に関する苦情」という事例は、ほとんど多くの組織においては、無いと思う。
例えば、上記で挙げた、静岡マツダの例でいえば、
「新型車の燃費は、従来車よりこのぐらい上がりますよ、と説明を受けたが実際にはそんなに上がっていないがどうなっているんだ」
というような苦情とも問い合わせともいえるような顧客の声が上がった場合、単純に「お客さまからの声」としての認識はあっても、「環境に関する苦情や要望、問い合わせ」(要は、環境に関する外部コミュニケーション)という認識はほとんどないだろう。
結果論主義でものごとを捉える人(組織や組織を審査する認証機関)は、
「顧客からの声に対して内容的には適切な対応措置を取っているんだから問題ないじゃん」
と考えるだろう。
しかし、
「自らの仕事の役割と環境との関係や影響の認識」
という観点では、「環境との関係を認識していない」ということになるので、問題はある。
話は少しずれますが、「“環境苦情”と記載された帳票に記録が残されていない」というような点を問題点として組織も認証機関も万が一捉えるようであれば、それは、基本的には、間違いです。
「環境マネジメントシステムを組織に適用する」ということは、このような苦情も「環境に関する苦情である」という認識を持って対応を取ることが重要なのである。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ450号より)
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